舐め愛、食べ愛、殺し愛
「ラララ〜」
「やめてくれー!」
「ラララ〜〜ん〜〜」
「手が!手がーー!」
「ふ〜〜ふん〜〜」
「し、死ぬ……」
「ランラン♪」
「……」
「……もう死んじゃったの?」
「死体を片付けなさい、それと」
「二度とあんな不味い飴を作る職人を寄越さないことね」
……金属の鍛造で有名な国、メタル国。
今日、若き女王、メタルクイーンの処刑によって……
飴を作る職人が遂にいなくなった。
匂いがする。
どんな……?
それは、とても激しく……
いやいや、そうじゃなくて……
なんていうか、それは……
飴?砂糖?とりあえず、すごくすんーごく……甘い匂いだったな。
重要なのは、匂いの主人だ。
見た目は少女、どんなにたかく判断したって、せいぜい十五ぐらい……
服もまあまあ平凡で薄着、ものを隠すスペースはない。
つまり、その匂いは少女自身から発生したものだ。
それはどうかしたのか?
その甘すぎる少女のいるところがもっと問題があるんだ。
どこだって?
あの残忍冷酷、自分の欲望のためならなんだってするあのメタルクイーンの城だ。
城にいる……というより……
あのメタルクイーンの前にいるのではないか!
変なことに、周辺に兵士とか使用人とかまったくいないんだ。
城なのに二人しかいない……
変だなぁ……
……ん?!
いやいや、それはないだろ。
っていうか、なにやってんだよ、二人共!
なんでお互いを舐め始めたんだ?!
そういう関係……?
……変だなぁ……
「甘いね、あんた」
「飴だもの、それも最高の……」
「なんで人に……?」
「あなたに会うため……」
「あら、嬉しい……どうやって人に……?」
「神の涙に触れ、命と肉体を……」
「そう……」
「……」
「……」
「「夢が叶ったわ」」
舐め合いながら会話してる……
驚くべきことだろうが、しかし、なんてことだ……
驚くべきのは、これからなんだ……
接吻……?
いや、口と口が確かに触れてるけど……
接吻というか……
そんなロマンチックなもんではない。
正確に書き記すなら……そう、噛み合いと呼ぶべきだ。
お互いの口を噛み砕くように……
もっと正確に書き記すなら、そうだ。
捕食と呼ぶべきだ。
「好きよりも……」
分かれた後、メタルクイーンが咀嚼しながら語り始めた……咀嚼?
「愛って呼ぶべきね、この胸にある高ぶるようなものは」
何を咀嚼してるんだ?
「愛とはきっと……こういうこと」
少女は苦しそうに口を抑えてる……
「あんたを食べるわ」
って、えーーー?!
口を食べている!
「愛……」
苦しながらも、少女は小さな声を上げた。
「わたしを……わたしたち飴を……愛するというのなら……」
「死んで」
……
さあて、どうしたものか。
ひどい……たしかに、こりゃひどい。
外見から見れば、人が人を食べてるもんな。
現実で言えば……?
あまり変わんないな。
ひどすぎる。
次……
次に起きたことは、もっとひどい……ではない。
グロいんだ。
なぜかっていうと……ちぎってるもんな。
女王の右手が。
「愛のために……」
女王の手をちぎって、口のない顔で笑う。
「これも愛……わたしからの愛……」
そんな愛あるか!
手がちぎられた感じはどうなんだろう?
少なくとも、気持ちいいにはならないだろうな。
それどころか。
それどころか……めちゃくちゃ痛い……?
そう決まってるけど……その決まってるが……まるで決まってないように……女王は笑った。
「あんたのが愛じゃないわ」
「このメタルクイーン以外に、愛が分かる者はいない……」
「愛してあげる♪」
ここからだ。
狂った物語の終わりが、やって来る時。
悪魔のような……
鬼のような……
魔王のような……
えげつなく、さりげなく……
やって来る!
終わり……
誰から見ても、多分同じに思うだろう。
これじゃ、終わったな。
少女の頭が、女王に噛み取られたもんな。
終わらざるを得ない。
「あぁーー」
「美味しかったわ、愛しい者よ」
「神の涙……伝わってくる」
「願いが叶うなら……」
「甘いものがほしいわ」
……
それからだ……
神の涙に触れた女王のあまりにも強欲な願いによって……
全ての甘い物と共に……
メタル国は消え去った。
それからだ。
人々は一度たりとも、甘いということばを口にしなかった。