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白の旅人  作者: 小山 了
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6 白の留学生、リィニー

最近雨ばっかりでほんとヤンナルネ。

時刻は夕暮れの兆しが見えた頃、少女が寮の窓から雨のせいで学園から速足で出てくる学生たちを見ていた。部屋には二段ベッド、テーブルそして机、箪笥が二つ。それは一般的な寮の内装。上のベッドは沢山の荷物で埋まっている。しかし、二つの机はどちらも使用者がいるようで、机の上には様々なものが乗っている。そして、二つのそれは逆の様相を呈す。一つは魔導書、錬金用品や羽ペンなど魔導士の学生として相応しいものであった。しかし、もう一方の机は、私物に溢れている。一応整頓はされているようだが、流行りのサージェス王の写し絵、不思議な形のアクセサリーそれに沢山の本が立てかけられているが、そこには『オルヴェルク観光100選』『おすすめ!オルヴェルクデートスポット』など明らかに場違いなものが多い。


少女が一人窓を覗く。年齢は十五、六だろうか背はそれほど高くなく、長く伸ばした白髪が目を引く、 儚く美しい少女である。その白髪は顔に掛からないよう、赤いヘアピンで纏められ、掛けられた眼鏡が知的な雰囲気を醸し出す。服装は飾りが少なく、遊びのない物であったが、彼女の雰囲気に非常に合っている。


数刻待っただろうか、この部屋の扉がノックされる。ドアを開けると、少女と同じく白髪の少年が入ってくる。少年がベッドに腰かける、少女は臣下の礼をする。


「リィニー・デウクス=エンテルト、御身の前に。」


静かで落ち着いた声だ。


「いいよ、いいよ楽にして。今は君の弟として来ているんだ。それに」


少年は困ったような顔をすると、


「それはあまり好きじゃない。」


「…それではその様に。」


そうは言ったものの少女はどう接していいのか悩む。確かに目の前の少年はある意味、自分の弟と言えなくはないが、自分よりも上位の存在だ。それにあまり接する機会がなく、どう言葉をかけたらいいか分らない。


「僕たちは兄妹なんだ、そんなとこにいないで僕の隣に来なよ。」


「…はい。」


私は、人一人分隙間を開けてベッドに腰かける。すると少年が開けた分の隙間を詰め、体を寄せ(体の大きさの関係上)上目遣いで、


「おねぇちゃん?」


「……は、はい?な、なんで…ございましょうか…?」


「学園はどう?楽しい?そういえばディジー先生に学園を案内してもらったよ!それでね……」


少年はいろんな話をします。ここまでの道の事、美味しかった食べ物の事、出会った人の事。私もこの学園の出来事を話してゆきます。


暫く話した後でしょうか、突然この部屋に闖入者が現れます。まぁ、正確には闖入者ではありませんが…


「リィニーちゃん!リィニーちゃん!ねぇ聞いて!今日ね!すっごい美人にあったよ!」


白髪混じりの鮮やかな赤髪に、快活そうな笑顔。肢体はしなやかでありつつ豊満。女としては羨ましくなるほど歳不相応な体つきですが、纏った雰囲気が彼女の印象を年相応の物に戻す。彼女はエリィジェム・ファムディルク=サージェス。

彼女は私と同級生であり、ルームメイトであり、そして学園長の孫。彼女は学園の制服を着てはいますが、規則すれすれの改造したもので、足が大きく露出していて、教師が見れば眉を顰めるでしょうが、彼女は気にしている様子はありません。そして、腰には装飾過多な細剣レイピアを穿いている。


「…来客があるから少し出てて欲しいって伝えた。」


「あはは!ごめんごめ……何?この子可愛い!」


少年を見つけそう云うと、いきなり少年に抱き着く。止める暇は無かった。私が啞然としている間にも彼女は話を進めている。


「ねぇねぇ!キミの名前は?」「ブランくんっていうの?」「どこから来たの?」「エリィおねぇちゃんって呼んで―!」


日頃から、このエリィって人は奇人だ、変人だと思ってはいたが、予想を超えていた。初対面の少年に抱き着き、頬ずりせんばかりに顔を寄せる姿を見ていると、呆れをを超えて、なんかどうでもよくなってしまった。ただ、やはり私の来客に対して好き勝手されるのは気に入らない。


「…その子は私の。あなたは部外者。無関係。」


「えー、いいじゃんいいじゃーん。ね?ブラン君?」


「ぼ、ぼくは構わないけど…」


「それじゃぁ…おやつにしましょうか!」


彼女は先程買ってきたであろうお菓子の袋を掲げ、いい笑顔で云います。



向かい合ったソファの片方にエリィと少年が、向かい側のソファに私が座る。机には浅いかごに入ったクッキー。そして人数分の紅茶がいい香りを放っています。


「ぼくのお姉ちゃんがお世話になってます。あとクッキーありがと。」


少年が星の形をした、チョコのクッキーを口にしながら云う。


「いいの、気にしないで皆で食べるために買ってきたから」


エリィが紅茶にミルクを入れながら答える。


「むぅ…やっぱり、わざとだった。」


私は角砂糖を二つ紅茶の底に沈めながら文句を言う。


「だってぇー、リィニーちゃんに来客だよ?いつもは手紙一つ来ないリィニーちゃんにだよ?気になるじゃん。しっかも、こんなかわいい弟がいる事を隠していたなんて―、もう!」


拗ねたように彼女は言う。実際めんどくさい。


「そういえば、こに部屋はベッドが一つしかないの?」


少年が問いかけてくる。この部屋の二段ベッドの上は既に沢山の物で溢れている。これはエリィが買ってきた服などを置いてくるためだ。クローゼットはもう既に者で溢れかえっている。こんな人でも魔術の腕はこの年で既に一流なのだ。好きな分野の、と注釈が付くが。


「…エリィは私の寝ているところに入り込んでくる。その時に抱き着いたり、体をまさぐってくるのは……ちょっと困る。」


「ふーん、そうなんだ~。じゃあやめるよ?」


エリィはいじめっ子の様な表情で云う。


「…そういうわけじゃ…ない。」


「おねぇちゃんたちって、すっごくなかよしなんだね!」


純粋な笑顔の少年に、私はどんな顔をすればいいのか分からなかった。


そのうち、リィニーとエリィの出会いを書きたいですが、多分R18になるので、別投稿にします。その手の話は書いたことないしね。

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