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白の旅人  作者: 小山 了
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5 北の学園、ヘルドラン

魔術師と魔導士の違いは、導くものがいるかどうかです。魔導士のことを、魔術師とも言えますが逆はないです。

その日は、雨だった。私たちが泊まっている宿の窓から覗く大通りの景色は、昨日と違って人通りは少なく道に並ぶ露店も少ない。空は灰色に曇り、しんしんと落ち行く雨粒は、整然と並べられた石畳を濡らし、道の脇の側溝へ流れてゆく。


宿の者が呼んだ馬車に乗り、目的地へと向かう。道中、主人は馬車の屋根に当たる雨音が気に入ったのか気分がよさそうにしながら、外を眺めている。外の様子はどうであれ、雨を凌げ、かつ平らに慣らされた道を行く馬車の中は揺れが少なく快適だ。


北の学園、『賢き頭』のヘルドラン。その成り立ちには私たちの祖国、クェルム・シーレ王国の王、「サージェス・ディアブレ・アヴォイ=プレミレ」と二百年程前の「魔導聖伐戦争」とゆう教会と魔導士の戦争が大きく関わってくる。それ以前は此処の地はただの平野だったそう。因みにこのオルヴェルクの学園はを含め竜に因んだ学園が四つございます。


東。『貴き翼』のライルドラグム

西。『鋭き爪』のネルドラド

南。『猛き尾』のテルドラオム

そして、

北。『賢き頭』のヘルドラン


それぞれ特色はありますが、十五才までは魔法の基礎や一般的な学問を学びます。それ以降は自分の適性に合った研究や学問に励みます。魔術の適性がある外国の貴族が十五までここで学ばせることも珍しくありません。勿論宗教色の薄い国の人ですけどね。

もしかすると、細剣レイピアの流行りは貴族の武器からきているのかもしれませんね。尚、特定の国の国民以外の十五才以上の学園の研究に参加するには、友好国からの留学生以外は、この国への帰属が必要です。


学園まではそれほど遠くなく、馬車のまま学園の門を通り抜けることが出来た。御者は、再び呼ぶときはこの紙を破るようにと、魔法の込められた紙を私に渡して帰っていった。


来た目的、それとカヴァルという、外壁で会った男の名前を出すと直ぐに応接間に通され、暖かい紅茶が出された。



「お待たせしました。ブランス君の案内をすることになりました、ディジー・ミロイアです。平時は教師をしております。」


そう、中年の女魔導士が挨拶をする。ゆったりとした服装の上からでもわかる中年特有のふくよかな体、顔立ちは温厚そうで鼻に掛けられた小さな丸眼鏡が特徴的だ。どこにでもいそうな感じの人ではあるが、胸元のバッジと腰の短杖がその身分を示している。


「ディジー先生、よろしくね!」


「はい、ブラン君も今日はよろしくね。」


「はーい」


「よろしくお願いします。」


それから、ディジー導師による学校の見学が始まった。建物は学園というよりも城と言っても差し支えないほどの建物で、かなりの広さがある。普通なら薄暗い廊下も、魔法の光が眩しいほどに煌々と輝いている。教室は大きな硝子窓が大きく太陽の光を取り入れている。


導師は、学園を一周する間たくさんの話をして、各場所を紹介していった。さすが教師を言うべきか、説明は分りやすく、かつ子供が興味を失わないように話をしていた。その間、私も主人も導師の話に耳を傾け、時折質問をしていた。



導師は学校の正面にある大きな彫像の前まで歩くと、


「さて、お昼にする前に最後のお話ね。この彫像はこの学園の創始者リリィ・エイビン=サージェスとその夫サージェス王の彫像です。」


広場の中央に大きな石の彫像があった。彫られている二人の男女は、魔導士のローブを着た美男子が左の腕で女性を庇う様に肩に手を当て支え、右の腕で魔導書を高く掲げている。同じくローブを着た美女は男の腰の辺りに右腕をまわして支え、左の腕で杖を高く掲げている。その造形は偏執的なほど精巧だ。髪の毛一本、ローブの皺、体の筋肉の付き方そして服の下の体まで…


「この二人は二百年前の戦争で活躍した英雄で、サージェス王は謎多き人物ですが、『黄金の賢者』とは彼の事だそうです。それに、白い髪の美少年だったそうですよ。」


「ブラン君みたいにね」と彼女がいたずらっぽく笑う。


「そして、創始者リリィは戦争の終結後この地に他の魔導士の英雄達と学園都市を建造したそうです。いまもこの学園の学園長は彼女本人です。」


「この、像すごいね!本物みたい!」


「ええ!五十年ほど前にこの学園の建て替えをした時に、学園の卒業生が記念として作ってくれたんですよ!」


「すごい人がいたんですね。」


「はい。この学園で子供たちは様々な文化や学問、芸術に触れます。その時に自分の才能に気付く子が多いんですよ。ブラン君も少し手続きをすれば留学という形で入学できますよ?」


「うん。ノイアどうする?」


「ブランス様のお望みのままに。」


「じゃあ、お試しで。」


「了解しました。ではそのように。」


「それじゃ、お昼にしましょうか。」



食堂で主人が女生徒に囲まれ、ちょっとした騒ぎになるのは別の話。


創始者リリィ・エイビン=サージェスは一般的にはサージェス王の妻とされていますが、サージェス王の方からは認められておりません。ただ、サージェス王は当時名前のみしか名乗らなかったため彼女は彼の名前をそのまま姓名にしました。ただ、彼女が彼の子を身ごもったのは事実です。

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