未来編
告白は…あと一歩遅かった。
お茶会も夜会もメリッサの話題で持ちきりだった。
メリッサの婚約者は家を捨てて、メリッサを選んだのだ。そして、それをメリッサは受け入れた。
メリッサの婚約者は何が大切かをわかったのだ。
自分はあれだけ時間があったのに…
今告白しても、メリッサは自分の手を取らない。
きっと全てを捨てて選んでくれた婚約者を大切にする。メリッサはそんな女性だ。
ベッドに横たわり、天井を見上げる。
天井の飾りが滲んでいく。
嫌だ…
人生の半分以上メリッサを好きでいた。
そんな気持ちをすぐに切り離すことなんてできない。
でも無理矢理引き剥がされるようだ。
痛くて苦しい。
「ジル!行くわよ!」
ベアトリクスはいきなりジルの部屋の中に入ると、ジルの襟元を掴んで引っ張って行く。
「どこに!?」
「決まってるでしょ?メリッサに告白しにいくの!」
「やだよ。なんでメリッサの幸せに水差しに行かなきゃならんの!」
「それがどうしたよ。あんたはあんたの人生の主役よ。些細なことなどどうだっていいじゃない。」
「些細じゃない!」
「あんたって本当にへたれ!そんなんだから失敗すんのよ!あんたに婚約者がいなくて、ちゃんと告白していたら、メリッサはあんたを選んでいた!現実直視してきて、とっとと片思い分だけでも晴らしてこい!」
ベアトリクスに圧倒される。
これも子どもの頃から変わっていない。
「変わりたい…」
ジルがポツリと呟いた。
「変わってこい。遅くても言えるだけの男にはなってこい。」
ベアトリクスがフンと鼻を鳴らした。
**
「メリッサ…もし俺に婚約者がいなくてメリッサと婚約したいと言っていたら手を取ったか?」
突然の問いにメリッサが固まった。
「何?突然?」
「いいから答えてくれ。」
「…多分前なら手は取っていたかも。ジルって何だかんだで優しいし、信頼を積み重ねて小さな幸せを築いてくれそうな気がするし。」
「…そうか。」
メリッサの言っていた小さな幸せを自分なら叶えてくれると思っていてくれていたのか…もう遅いけど。
嬉しくて、虚しい。
全ては自分次第だったのだ。
この恋は自分が終わらせてしまったのだ。
「メリッサ…好きだよ。」
「ジル?本当に何?突然?」
「…ずっと大好きだった。」
メリッサの顔は見れない。
ごめん、水差して。
でも、好きなんだ。
「…ありがとう。でも、ごめん。」
好きな人の声がする。
残酷な結末だけれども。
「こちらこそごめん。」
「ジル、こっち向いて。」
メリッサの言葉にジルは重い頭を上げた。
「貴方には残酷なことをたくさんしてしまったかもしれない。だけど、ジル、貴方は本当に私の大切な親友よ。 ずっと友達でいてくれてありがとう。」
初めてあった日と同じで、世界で一番可愛い人がいた。
「こちらこそありがとう。メリッサは可愛いよ。一目会った時からずっと可愛いと思ってた。」
メリッサが昔読んでいた物語でいうと自分悪い魔女だ。
魔女が魔法を解くようにジルは素直に思っていたことを伝えた。
王子がとっくに解いたかもしれないけれど。
メリッサの顔が真っ赤になっていく。
これくらいなら許されるんじゃないか?
悪い心が顔を出す。
これだけ長いこと片想いだったんだ。
もう少し素直でいさせてくれ。
**
「まあ、ちゃんと振られてきた?」
「ああ。振られましたとも。」
ベアトリクスとジルはお茶を静かにすする。
「よかったわね。」
ベアトリクスは気のない返事をした。
「諦めたわけじゃないけど。」
「あら、成長したのね。」
「どうも。」
「何度でも砕けておいで。」
「おい!」
「最後までダメだったら私が面倒みるわ。」
ブッ!
ジルがすすっていたお茶を噴き出した。
「はぁ!?」
「一度ペットを飼ったら最後まで面倒を見ないとね。」
メリッサの結婚後、ジルとベアトリクスが婚約した。
それは遠くない未来のお話。
ジルとベアトリクスは生涯変わらず友人のような感じですが、夫婦仲は良いのか7人の子どもに恵まれるという、設定です。
ビッグパピー爆誕です。
ちなみにメリッサとアレンは爵位はないけれどアレンは順調に出世し、その割には小さな屋敷で子ども二人と仲良く暮らします。夢はキッチリ叶えてますね。




