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テニスボール

作者: すこくらげ☆

実のところほとんどテニスのルールも分からないのですが…

スポーツなら勝負が付きものだと思い

そんなところから書いてみました

読んで頂けたら本当に嬉しいです

俺霧島崇はつい先日プロのテニスプレーヤーとして新しい一歩を

踏み出した

学校は進学校だったし…スポーツなど無縁のものだと思っていたけど

ふと友人に誘われてやってみたテニスが…凄く面白くてね

何ていうのか…単に体を動かすだけじゃなく

対戦相手との心理戦になるところとか…とにかく今まで体験したことない

出来事だったんだ

受験勉強も塾通いでもライバルはもちろんいたけど…

それとは全然違う…得体の知れないものと相対している

そんな感じだったんだ


プロは勝たないと意味が無い…この言葉が示す通り

将来はプロのテニスプレーヤーを続けることを目指してる

区切りの無い戦い…自分はどうやら競争することが好きで仕方ないらしい

そんなことを考えつつ…数日後にはまた新しい試合が…


メンタルを整えるのも試合に臨む上で重要なものでね

自分の場合はとにかく体を動かすこと…後は食事に気を配ること

当たり前のような話なんだろうけど…その当たり前を今まで

いかにおろそかにしていたことか…身を持って痛感してるところだ

黄色いテニスボールを眼前に置き…意識を集中する

そうすると…実際の試合運びが目に浮かんでくるようで

これも一種のトレーニングなんだろう…独学だからこそ

分かることもある…そんなことをよく考える

知り合ったプロのプレーヤーは…皆理論づけて練習なり試合に

挑むものらしいけど

自分は違うやり方で進みたいと思ってる

そうしないことには…その人たちを超えることは

ずっと出来ないと思うからだ


そんなことを考えてるうち…試合の日が迫ってきた

この緊張感がまたたまらなく…自分の競争心を煽り…勝たなければと

もしかしたらテニスで無くても良かったのかもしれない

でも頭脳と身体と…これほどまでに限界まで追い詰めるスポーツは

ちょっと見当たらないんじゃないのかな

そんな風にも考えていた


自分と考え方は違うけど…気が合うプレーヤーの人も居てね

冴島君というんだけど

彼はお金を手っ取り早く手に入れたら…即引退を考えてるらしい

目的ではなく手段と考える…しかしそれ故姿勢そのものは真剣そのもの

のようにも見えるし…その逆とも思える…不思議な感じを受けていた

そんな不思議さに惹かれているのか…どちらかと言わずとも無口な自分が

無理矢理に話しかけてるような気もする

つい先日もこんな話をしたんだ

「冴島君…君の目的はテニスを使ってお金を儲けることのようだけど

 目的の額を稼いでしまったら…本当にテニスを辞めちゃうのかい?」

「そうだなぁ…というか俺は目的無くして行動するのが凄く嫌なんだ

 無計画に事を進めることほど危険なことは無いというのが信条でね」

分かるような分からないような話である

実のところ…冴島君とはずっとライバルで居てほしいと思っているので

どうにか説得を…というのが本音のところだ

なので…どうしても話をするときは前のめりになって…説得口調に

なっているようだ

「そのお金をどう使うんだい?」

大きなお世話だ…という態度のようながら…でも嫌がるような素振りもなく

「どうせなら何か事業を始めるとか…思い切ったことをやりたいものだね」

そう答える冴島君は…やはり自分と同じく勝負事が好きらしい

まあ今すぐ離れ離れになることもないので…話もそこそこに

「次の試合はもうすぐなんだ…ちょっと励ましてくれないかな」

「そっか…勝負は時の運!これに尽きるね」

「それって何だかあまり励ましに…」

「何言ってるんだ…運も実力のうちだってね」

「そりゃまあそうだけど…」

どうやっても説得には応じない様子なのと…ライバルと思ってるのは

こちら側だけだという…空回りの感情が

これまた競争心を煽ってしまうから…自分というのもタチが悪い性格だ…

そんなことをよく考えては…眠れないような日もよくあった

そんな自分と折り合いを付けることが…いやもう考えるのはよそう

試合に勝つことだけだ…

霧島は自分のことを一番理解してるのは自分だと…そう信じて疑わなかった


「さて…いよいよか…」

口にする霧島…プロになってから4試合目…今まで勝ち進んできた

訳だけど…そろそろ不安がよぎる頃でもある

「まずはと…」テニスボールをまた眼前に置き…イメージトレーニングのような

ものを行っていると

「おい…それは違う…そっちだ…そう…そこで…」

え??!何か聞こえた気がする…

驚いた霧島であったが…試合を前に意識が高ぶっているのだろう

それに…所詮自分の頭の中で起こってることだ…そう思い直し

試合場へと足を運んでいた


試合場に着くと…観客も今までのことを考えると大勢居る

相手選手のデータは一応目を通したけど…実際目にすると

屈強そうな身体から…これは強烈な試合運びになりそうだ…

今まで感じたことのないような緊張感の中…柔軟運動もそこそこに

審判も指定の位置につき…ゲームスタートだ


軽いラリーから始まった試合は…ボールをうまく誘導して

自分のペースに持っていく…今までのやり方が通用しない…

「これがやはりプロの壁なのか…」

そう考えていると…自分の身が縮んでくるように思えるし

対戦相手が必要以上に大きく見える

「くそっ!」

気合を入れ直そうと…上半身から下半身へと力を込める

しかしその気合も裏腹に…残り1セット取られたら…自分の負けだ…

瞬く間に追い詰められる霧島…やはりプロの世界は…

絶望感が闘争心を打ち砕こうかというその瞬間…

そう…あの声が…

「まてまて霧島…お前いつも以上に力みすぎてないか…そんなんじゃ

 自分の実力を出し切るどころか…」

絶望に支配されようとしていたところだったので

驚きというよりは…何よりの励ましのようにその声が

「しかし…この声を聞くのは初めてじゃないが…」

前々から思っていた疑惑を辿ろうと…いや試合中にそんな…いや

だからこそ…

そんな葛藤がいつもより思考を早めていたのか…

試合前にいつも眼前に願いを込めて祈るボール…あれは…

その考えに集中したいのは山々だったが…次のセットが…

「確かに必要以上に力が入っていたようだ…ここはこのアドバイスを…」

身体の力がスッと抜け…リラックス状態に入る霧島

「よし!」

身体ではなく心に気合を入れ…テニスコートへ

相手のテニスは手強いながらも変わらない…しかし…

「ボールの動きが見える…」

力が抜けた分…動きが俊敏になっているかのようだった

実はそこから先のことは…後になってから分かったことだが 

気が付くと相手を打ち破り…

「勝ったんだ…」嬉しさと驚きが同時に込み上げる

今まで生きてきた中でも…至高とも呼べる体験だった


試合が終わり…ベンチに座り込む霧島

「とりあえず…本当に良かった…でも…そうあのボールは…」

そのボールは…プロになりたいと最初に告白した

冴島からもらったものだった

「冴島君…」どうともつかないもので頭の中を占拠されたような

感覚に陥ってしまう

呆然とする霧島だったが…

「家に帰らなきゃ…」そう呟き…ベンチを後にしようとすると

一通の手紙がそのベンチに置いてあるのに気が付いた

「これは…」すかさず手に取り封を開けると

それは冴島が書いたものだった


「霧島君…俺は本当はプロの世界でずっとやっていこうと決めていたんだ

 ところが…君の天賦の才能をまざまざと見せつけられたとき…

 これは自分には手が届かない世界だ…打ちのめされてしまったよ…

 悔しさのあまり夜も眠れず…ご飯も喉を通らない日が続いたんだ

 しかし…霧島君がもしこの願いを叶えてくれるなら…

 そこから…練習のときも自宅に居るときも…そのボールに自分の無念と希望を

 力の限り込め…自分の願望が全て乗り移ったと感じたそのとき…このボールを…」


手紙を読んでしばらく放心状態になってしまった霧島

「そんなことが…いい加減に見えたのは…」

自分のことを誰よりも理解している…これは競争心なのか…それとも…

ボールを力強く握り締め…でもすぐに力が抜けてしまい

「とりあえず…今日のお礼くらいさせて欲しいよな…でもお前よりかは

 俺のほうが…奢ってやるとか言ったら…」

そう頭で考えてるうち…試合に勝ったことよりも…

「次も頼むぜ…と言いたいところだけど…これを使うのは…」

これで負けても本望かもしれない…手段か目的か…

「案外人の価値観なんて…アテに出来ないものだ…自分も含めてね…」

何度もその言葉を呟き続ける霧島だった


おしまい

ハッピーエンドにしようと3作ここに投稿しましたが

どうにもな展開だったような

話はシンプルに…自分に似つかわしくないような

熱血調にしてみようと

自分もこの主人公に感情移入してたのだと思います

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