第5話 特殊攻撃なんて、なかったんや
いつの間にやら日間73位、皆さん、ブクマありがとうございます。
「やあ!」
両手の剣を思い切り、岩ネズミに向かって振り下ろす。
先ほどまでなら弾かれて終わりだが、JOBを『属性剣使い中級』に変えて、ステータスがさらに上昇したことに加え、スキル、『筋力上昇』のレベルを上げたことで、そのまま振り抜くことが可能となる。
属性付与によってつけた雷のエフェクトと共に、岩ネズミの身体がポリゴンの塊となって爆散し、私は、
「よし、岩ネズミを1分以内に倒すことができるようになった!」
ゲームを開始して、5時間程、双剣の熟練度も150になると言った所で『ツーライン』に戻り、ログアウトすることにした。
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目を覚まして、V.E.をしたまま、自分の部屋を出ると、いい匂いが漂ってくる。お母さんがもう料理を作ってることを察した私は急いで降りて、
「おかえり!お母さん!」
と、声をかける。
こう言ってはなんだが、私のお母さんは少々、その、子供っぽいところがあるため、ちゃんと迎えに行かないと拗ねる。
実際に、私がおかえりと言った瞬間、表情がパァッと明るくなり、
「ただいま、しーちゃん」
と、非常に整った顔を笑顔の形にする。
うーん、こうしてみると、私のお母さんは本当に美人さんだと思う。これで30歳前半だもんなぁ....
と、じっくり顔を見てると、お母さんが「どうしたの?」と、問いかけてくる。なんでもないよと言って、リビングの隣にある、お父さんの書斎に入り、シャーロック・ホームズの本を取り出す。
お父さんがお気に入りだと言って勧めてくれた本だが、いかんせん数が多くて読みきれない。
少しずつ読んでいっている。
本を読んでいると、ご飯が出来て、お母さんが運んでと言ってくる。さて、ご飯を食べたらもう一回、ログインしよう。今日中に熟練度を200までは上げたいな。
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お風呂を上がって、当然V.E.は外して入った、私は歯を磨き、眠る準備を整えてから、ベッドの中に入り、ログインの準備をする。これで、寝落ちしても問題ない。
さて、入るとしよう。
「innocence world、起動」
現実世界の私の意識が闇に落ち、再び、目を開けると、私がログアウトしたところ、『ツーライン』の街中にいた。
とりあえず、街の外に出ようと、街中を歩いていると、隣から声を掛けられる。
「こんにちは、そこのおねーさん」
「あなたは?」
そこにいたのは銀髪の髪をアップにした。ボーイッシュな少女、どうしたんだろう、パーティでも組みたいのかな?
そう思って、疑問の視線を投げかけると、彼女は
「僕はシルバ。よろしくね、おねーさんは?」
ぼ、僕っ子か....随分とキャラが濃いことで....ロールプレイかな?と、失礼なことを考えていると、それが伝わってしまったのか、
「おねーさん、なんか失礼なこと考えてるでしょ?言っとくけど、僕、男だよ?メイル。」
「え....」
しょ、衝撃の真実だ.....私のキャラが薄くなるから、濃いキャラはやめてほしい.....
何を言うべきか、困っていると、彼女、いや彼が名前を促してくる。なので、答えるとシルバは笑いながら、
「よろしくね、シオンさん」
と、握手をしてくるのであった。
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現在、私はシルバと共に岩ネズミを狩っていた。
彼の武器はメイスであるようで私が苦労した岩ネズミを一撃が二撃でどんどん沈めていく。
こうして見ると、私の双剣が外れってのがよくわかるなぁ.....
ていうか、時折メイスが光って威力が段違いの技が出てるのはなんでだろう。
それが気になって、彼に問いかけると
「これ?これは武器熟練度100ごとに覚えられる、特殊技だよ」
え、なにそれ知らない。私の熟練度100超えてるんだけど.....
彼はそんな私のことなど露知らず、さらに説明を続ける。
「それで、MPを消費して打てるんだけど、おっと、ちょうどいいところに敵がいるから見ててね」
そう言って、彼はメイスを両手で肩の高さに構えると、岩ネズミに向かって駆け出し始め、それと同時にメイスの先端にオレンジ色のライトエフェクトが発生する。そして、その走った勢いそのままに、
「はあ!」
裂帛の気合いと共にメイスを振り下ろすと、バックアタックでもないのに、岩ネズミのHPを一撃で吹き飛ばす。
そして、彼はいい笑顔で振り返ると
「ま、こんな感じ」
と、Vサインと共に告げてくる。そんな彼を見た私の一言は、
「そんな技、知らないんだけど!」