第2話 初戦闘!(私とは言ってない)
「まずは装備よね」
そう、これはVRMMO、装備を買って、敵mobを倒していかなければならない。ちなみに初心者の敷居を下げるためにレベル制ではなく、熟練度制、それに熟練度による技の違いはあっても、ステータスはそこまで変わらない、本当にプレイヤースキルを重視するタイプだ。
まあ、それは置いておいて、レンガにより作られた街を、マップを確認しながら歩く。
しかし、このゲームは始まってから3週間とはいえ、まだまだ初心者も増える。つまり、最初の街にも関わらず、人が多い。
「上手く前に進めない〜」
早くも私はめんどくさくなってきていた。
そんなとき、
「ねえ、あなた初心者よね?」
と、黒い髪を腰まで垂らした女性プレイヤーに声をかけられる。
「え、そうですけど、なんですか?」
「やっぱり!ねえだったらさ!2つ目の街に行くまで一緒に組まない!?私も今日始めたばっかりなの!」
と、言いながら自分のメニューを操作し、パーティ申請を出してくる。
まあ、こちらとしたら断る必要もないので、
「じゃあ、お願いします」
と、パーティを組むのであった。彼女の名前は
「んーと?マリー?」
「メアリーよ、よろしくね、シオン」
なんとなくだが、彼女らしくはないような名前であった。まあ、今会ったばかりだけど
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「さて、じゃあ装備も買ったし!行きましょ!」
「うん!」
二人で始まりの街を出て、辺り一帯が草原の『始まりの庭』ステージを歩く。
彼女の買った武器は両手剣、私の買った武器は双剣である。まあ、お互いに初心者のため、オススメの武器とかもわからず、お互いが気に入ったのを買った形だ。それに、
「一つの武器の熟練度が50を超えるとJOBを選べるんでしょ?楽しみだね」
「うん、なんでも、使ってる武器の熟練度とか、それまでに取ったスキルとかで、選べるスキルが決まるらしいから、何が選べるようになってるか楽しみだね」
このゲームは熟練度が10上がるごとにスキルポイントが1入り、熟練度は1000まで上がると、それ以降は意味は無いが、上がり続けるらしい、今のところ1053まで確認してるそうだ。
そして、何かの熟練度が50を超える度にJOBの変更は可能。また、JOBにも熟練度があり、JOBを変更したとしても、引き継ぎは可能だそうで、更に、JOBは控えにあるだけでも様々な恩恵がある、らしい。
と、歩きながら喋っていると、私達の前方にイノシシ型のモンスターが見えるようになる。
見えるようになるといったのは、このゲームには視認可能距離というのが設定されており、その圏内に入らない限りは決して見ることはできないからだ。ちなみに、この視認可能距離は動性のものにしか、適用されず、建物、矢、投擲物などは普通に見える。
さて、獲物は一匹、どっちが先に行くべきかなと、考えると、隣のメアリーが
「ごめん、先に行くね!」
と、言うが早いか、駆け出す。
ザッザッと、まるでリアルのように草を踏みしめる音を鳴らしながら、30mほど走り、彼女とイノシシの距離は残り10mほど、そして、
「やあ!」
走りながら、背中に手を回し、剣を握ると、残りの10mを一気に潰し、走る勢いそのままに一閃、背後から完全なバックアタックを決める。
赤いダメージエフェクトを撒き散らしながら、振り抜かれた剣はイノシシを倒しきるには不十分だったらしく、怒りの形相でイノシシは振り返るが、メアリーは振り抜いた剣をそのまま切り上げ、イノシシをもう一度切る。
すると、イノシシは倒れることすら叶わず、その肢体を無数のポリゴンへと四散させた。
その様を見ていた私は、メアリーが勝ったということよりも、ほんとにVRで戦っていることに感動を覚え、
「ふぁ、ふぁんたすてぃっく!」
よくわからない、賛辞の言葉を述べていた。