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2 引っ越しうどん

新婚さん、てことはこの人結婚してるのか。


どう見ても高校生くらいにしか見えないけど、既婚者なのか。



人を見かけで判断することの無意味さを改めて痛感するな…




「聡くん!高校生男子でしょ、知ってる。わー、初々しい愛らしい!」


「え、あの…。え?」


「亮子ちゃんからねー、話きいてたの。ごめんね?泊まり込みで仕事しててさぁ、帰ってこれなかったんだよね~」




随分あっけらかんとした話し方だな。


てか、泊まり込みって。ブラックなのか。



心の中ではっきり返答しながら、表向きは相変わらずキョドキョドするだけである。




「もしかして挨拶何回かきてくれた?野垂れ死に事案発生しかけてたし。ごめんねぇ」


ごめん、と言いながらケラケラ笑う。その姿がなぜだかとても似合う人だ。




「い、いえ。無事でよかったです、本当…」


照れてしまい、首を触ろうとすると手に持っていた引っ越しうどんが邪魔をした。

そうだ、こいつがいた。



「これ、引っ越しそばです。よろしければ」


「えー!そば、お蕎麦!」


「そば…?あ、すみません間違えました。うどんですそれ」



緊張してたみたいで、言い間違えてしまった。



山田さんは目をまん丸にした後、大げさに見えるくらい笑いだす。




どうやら彼女のツボをついてしまったらしい。




「は、笑った笑った…。聡くん面白いね。そばもうどんも両方だいすき、ありがとう」




今日も使命を果たせないかと思ったが、引っ越しうどんは無事に山田さんの手元に渡った。



彼女と一緒にドアに入っていくうどんを、羨ましく感じた自分にこの時はまだ気づいていなかった。






「あ、聡!!」




甲高い声に思わず身体に電流が流れたような動きをする。



「り、っちゃん」



そんなに近くにいるならもう少し声のトーンを抑えてよかったのでは…。


今日は山田さんも家にいることだし。




「お昼もうすぐなのに来ないからママが呼んできてって!向かうところだった?」




お昼…



そうだ。お昼に向かうついでに山田さんに挨拶しようとしたんだった。


今日は日曜日だからいるかもしれないと思って…。それで、




「ちょっとー?今日の聡なんだか変だよ?ぼけっとしてる、頭悪く見える」


「言い方他にあるだろーよ」




あの後、ひとしきり笑った後山田さんはうどんを抱きしめて家に入っていった。


ぼくはそれを眺めたまましばらく動けなくなっていたんだ。




「ごはん、食べるよね」


「もちろん。お邪魔させていただきます」


「邪魔じゃないよ、私もママも!ほら行こっ!」



りっちゃんはぼくの手をとって強引に引っ張っていった。そこでやっとぼくの意識も山田さんから解放された。

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