1 お隣さんは何時も不在
ピンポーン
ピンポンピンポンー
「今日も留守、か…」
東京の大学を狙っているぼくは、高校から都内で一人暮らしをすることになった。
一週間。一週間経ったが、未だに隣の人に挨拶ができていない。
というか一週間ずっと留守なのだ。
母から「お隣さんに渡すように」と言われた「引っ越しうどん」は今日も使命を果たせない。
男の一人暮らしというとみんな心配するけどぼくに関しては何不自由なく過ごしている。
このマンションの管理人がぼくの母の姉である亮子さん(伯母さんというと怒られる)で、食事の面倒をみてもらっているおかげだ。
ついでに従妹の家庭教師もやっているが、これは自分の勉強にもなるので苦ではない。
田舎育ちだが度々東京にきていたぼくは気づいていた。
地元にいては伸びない、と。
しかし、向こうにいたころは毎日のように隣に住んでた同い年の昭と、その妹である和美と挨拶を交わしていたからか、こうも近所付き合いが稀薄だと心寂しくもなるものだ。
「まさか野垂れ死にしてないよな」
「誰が?」
「お隣の…え?」
声のするほうに目をやると、そこには華奢な女性がこちらを見つめていた。
年代は近くみえるが、手に煙草を持っている。甘い煙のにおいが微かに香る。
「お隣ってわたし?山田みどり?」
「あ、ええと、山田さん、でしたか。初めまして…青木聡です」
いろいろなことに頭が追い付かず、しどろもどろに挨拶をする。
少女が煙草を吸っている?いやいやお隣さんは確か社会人。お隣さんの苗字は山田さん。そして、たしか、
新婚さんだ。