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第七十六話:いざ、古代遺跡へ

「じゃーん! ここが古代遺跡にゃ! ちっちゃい頃はよく遊び場にしてたにゃ!」

「なるほど……確かにかなり古くからここにあるようですね」


 ニャッフルの案内によって古代遺跡の入り口に到着すると、アオイはその入り口に触れ、言葉を紡ぐ。

 入り口には木のツタがびっしりと張り巡らされ、長い間放置されていたことがよくわかる。

 そこでアオイはある疑問を浮かべ、ニャッフルへと向き直った。


「そういえばニャッフルちゃん。この入り口はどうやって開くんで―――」

「おわ!? 地震にゃ!?」


 アオイが入り口に触れた瞬間、地鳴りのような地震が発生し、その地面を揺らす。

 それと同時に、ゆっくりとした動作で遺跡の入り口が開かれた。


「どーやら、俺達は歓迎されてるみたいだぜ、アオイ」

「……はい。そのようですね」


 開かれた入り口を見た祐樹は、笑いながらアオイへと言葉を紡ぐ。

 アオイは真剣な表情で入り口を見つめ、返事を返した。


「よぉし、じゃあ早速出発しようぜ! 陣形はいつもの通りでいいんだろ?」


 フレイは槍を取り出すと、ぐるんと一度回転させてその肩に担ぐ。

 祐樹はフレイの言葉を受けると、返事を返した。


「ああ。いつも通り、アオイ、ニャッフル、フレイ、レオナの順で問題ないぜ」


 こうして一行はモンスター討伐時と同じ陣形をとり、遺跡の中へと入っていく。

 長い眠りについていた遺跡は、久しぶりの来客を歓迎するように、その入り口に日の光を浴びていた。







「うー、なんかジメジメして嫌な感じの所だにゃ」


 ニャッフルは戦闘用の陣形で遺跡の奥に進みながら、両手をもじもじとさせる。

 アオイはそんなニャッフルの言葉を聞くと、こくりと頷いて同意した。


「確かに……どこか邪悪さというか、そんな雰囲気すら感じます。魔王城ももしかしたら、こんな場所なのでしょうか、師匠」

「それは……」


 祐樹はアオイの言葉を受け、まさか「そうだよ!」と軽く答えるわけにもいかず、言葉に詰まる。

 確かに遺跡の入り口自体は日の光を浴びて穏やかそのものだったが、奥に進むにつれ、湿気と邪気のようなものが体に纏わりついてくるのを感じる。

 出現するモンスターも、遺跡の奥に進むにつれて徐々にその戦闘力を上げているようだ。


「ニャッフル! アオイのカバー! フレイは雑魚を頼む!」

「がってんにゃ!」

「まかしときな!」


 モンスターが出現すると途端に緊張度は増し、皆祐樹の指示の元戦闘を続ける。

 そうして遺跡の地下へ地下へ進んでいくと、かなりの広さの大広間に出た。


「ここは……なんでしょう? 中央に闘技場のようなものがあるようですが……」


 先頭を進んでいるアオイは、不審そうに中央の闘技場を見つめる。

 闘技場の周囲には最低限の灯りが灯っているだけで、闘技場のその奥まで目視することはできない。

 天井はどこか邪悪な紋章の刻まれた何本もの柱に支えられ、かなりの高さをほこっていた。


「いよいよ……だな。アオイ、あいつがお前の相手だ」

「えっ?」


 闘技場の奥から、ガシャリ、ガシャリと鉄の擦れる音が聞こえる。

 その音の感覚は明らかに歩みによるもので、何者かが近づいてきているのは明らかだった。


「!? 何かいます。皆さん、注意を!」


 アオイは剣を構え、後方にいるメンバーへと注意喚起する。

 祐樹はボリボリと頭を搔くと、そんなアオイへと言葉を紡いだ。


「大丈夫だよ、アオイ。あいつの狙いは、お前一人だ」

「!? 師匠。それはどういう―――」

『ワレ、ノ……』

「!?」


 突然響いてきた声に驚き、その方角に顔を向けるアオイ。

 その視線の先には、一人の騎士が立っていた。


『ワレノネムリヲサマタゲルモノ、ダレカ……』


 立っている騎士は全身が漆黒の鎧に守られ、その体躯はメンバーの中で体の一番大きなフレイよりもさらに一回りも二回りも大きい。

 その背中には大剣がくくりつけられており、邪悪なオーラを纏うその姿からは、威圧感すらも感じた。


「あいつの持っている剣……あれが、伝説の剣だ。アオイ、今からお前は、あいつと一対一で決闘をして、それを手に入れなきゃなんねえ」

「そんにゃ!? だ、だって、あいつめっちゃ強そうだにゃ! 一人だなんてムチャだにゃ!」


 ニャッフルは動物的直感で相手の強さを察したのか、祐樹へと噛み付くように言葉をぶつける。

 しかしそんなニャッフルを、アオイは右手でそっと制した。


「いえ……どうやら、師匠の言う通りのようです」

『ワレト、タタカエ。サスレバミチ、ヒラカレン』


 黒い騎士はくぐもった声で、ゆっくりと言葉を紡ぐ。

 その声は闇の奥から響いてくるように不気味で、背筋を冷たい何かが走っていくのをアオイは感じた。


「大丈夫だ……アオイ。自分を信じろ」

「! はい、師匠! 行ってまいります!」


 アオイは祐樹の言葉を受けると、勇ましく笑い、闘技場へと一歩踏み出す。

 そして闘技場の上に乗った瞬間、青白いバリアのようなものが闘技場全体を覆った。


「にゃ!? 何にゃこれ!? 中に入れないにゃ!」


 ニャッフルは闘技場の中に入ろうと一歩踏み出すが、バチンという音と共に弾かれ、外に押し出されてしまう。

 結果的に闘技場の上では、黒騎士とアオイが一対一で対峙していた。


「ちょっと……本当に大丈夫なの? アオイは結局アンタから一本取ったとはいえ、相手、相当強いんでしょう?」

「ああ、強いぜ。ボスモンスターの中では群を抜いているだろうな」


 祐樹は腕を組みながら、真剣な表情でアオイの背中を見つめる。

 レオナはそんな祐樹の言葉を聞くと、動揺した様子で言葉を続けた。


「そんな!? だったら一対一なんて無茶じゃない! 今からでもこのバリアを壊して、参戦しないと!」


 レオナは急いで杖を掲げ、闘技場へと狙いを定める。

 祐樹はそっと杖に手を触れると、ゆっくりとした動作で下に下ろした。


「やめとけ。大魔法でも壊れねえよ、このバリアは。何せこれは、勇者一人だけに与えられる試練なんだ」

「勇者一人だけ……ね。なるほど、だから一対一の決闘ってわけだ」


 フレイは槍を肩に担ぎ、小さくため息を吐きながら言葉を紡ぐ。

 祐樹は「ま、そゆこと。俺達は見守るしかねえよ」と、言葉を続けた。


「で、でも、応援はできるにゃ! アオイー! がんばるにゃー!」

「ふふっ……ありがとう、ニャッフルちゃん」


 ぴょんぴょん飛びはねながら応援するニャッフルに対し、笑顔を浮かべて片手を振るアオイ。

 しかし黒い騎士はそんなアオイの様子に構うことなく、言葉を続けた。


『ワガナハ、“ダークナイト”。キコウノナヲ、キイテオコウ』


 ダークナイトは背中の大剣を体の正面に突き立てると、アオイに対して言葉を紡ぐ。

 その言葉を受けたアオイは、剣を構え、返事を返した。

「私の名は、アオイ=フィルソード。あなたを……倒す者です」



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