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第七十二話:ニャッフルの修行!

「いや、すまん。正確には俺と戦うのはアオイとニャッフルの二人だ。修行の一環としてな」


 祐樹はおどけた様子で、驚いている一行へと説明する。

 ニャッフルは興奮した様子で、祐樹へと質問した。


「戦うってどういうことにゃ!? 殺しあうのにゃ!?」

「発想がこええよ! いや、ただの組み手だって!」


 突飛な考えをぶつけてきたニャッフルに対し、ツッコミを入れる祐樹。

 しかし今度はアオイが、不安そうな表情で質問してきた。


「あの、師匠。レオナさんとフレイさんは修行しないのでしょうか? 私とニャッフルちゃん、そんなに戦力的に不安でしょうか……」


 アオイは少し落ち込んだ様子で、言葉を紡ぐ。

 祐樹は慌てて両手をわたわたと動かし、返事を返した。


「いやいやいや! そういうことじゃねーって! その二人にもパワーアップしてもらうぞ、うん!」

『言えねー。“その二人は修行イベント無いんだよ”とは。しかしまあ、パワーアップは本当だし、嘘はついてねえよな?』


 祐樹はアオイに説明しつつも、どうやってレオナとフレイをパワーアップさせようか考える。

 アオイは祐樹の言葉を受けると「そうですか……よかった」と胸を撫で下ろした。


「さて、じゃあまずはニャッフルの修行からな。この先の岩石地帯に行くぞー」

「「「「おー」」」」


 祐樹の先導によって、岩石地帯へと出発する一行。

 祐樹以外のメンバーは明らかにされない修行内容に疑問を持ちながらも、祐樹の後ろを付いていった。






「さて、到着だな。ところでニャッフル。この辺りの岩の名前、知っているか?」


 祐樹は岩石地帯に到着すると、手ごろな岩を手で持ち上げ、ニャッフルへと質問する。

 ニャッフルはえっへんと胸を張りながら、返事を返した。


「もちろん知ってるにゃ! “れんげきいわ”にゃ!」

「そう、“連撃岩”だ。じゃあ、その名前の由来は?」

「えっ!? あ、えーっと……わかんにゃいにゃ」


 えっへんと胸を張っていたニャッフルは、尻尾をだらんと垂れ下げ、落ち込んだ様子で言葉を紡ぐ。

 それを見た祐樹は、慌てて言葉を続けた。


「ああ、悪い。クイズ大会をしたいわけじゃねーんだ。つまりこの岩は、“六連撃以上の打撃を加えないと砕けない”って特性を持っている。だから連撃岩と呼ばれるのさ」


 古来からこの岩場は、拳闘士の修行場として使われてきた。

 そしてこの岩場の岩を砕くことが出来て初めて、拳闘士としてマスターレベルに到達したと認められるのだ。


「へー、そうなのかにゃ。実はニャッフル、一度もここの岩を砕けたことがないのにゃ……」

「そりゃ、そうだろうな。高速の六連撃なんて、簡単にできるもんじゃない」


 祐樹は少し落ち込んでしまったニャッフルの頭をぽん、と撫で、言葉を紡ぐ。

 ニャッフルは「ニャッフル、いつかここの岩を壊してみたいのにゃ」と呟いた。


「そっか……じゃあ、俺が手本を見せるから、よく見てろよ!」


 祐樹は岩を地面に置き、そこから数歩後ずさる。

 そしてそのまま、下からえぐるような蹴りを岩に叩き込んだ。

 当然、岩は空中に浮遊する。


「今ので一撃! そして!」

「にゃ!?」


 祐樹は岩が浮遊したのに合わせて飛び上がり、そのまま岩に連撃を加えていく。

 ニャッフルはポカンとしながら、その様子を見ていた。


「しー! ごー! ろく! いっちょ上がり!」


 祐樹は空中で岩に六連撃を与え、岩はその体を四散させる。

 ニャッフルはその様子を、両目を見開いたままじっくりと見つめていた。


「す、すごいにゃユウキ! 岩が砕けたにゃ!」

「よし、じゃあニャッフル。さっそく組み手、始めるぞ!」

「いきなりにゃ!? ま、まあいいけどにゃ……」


 祐樹はあえてニャッフルと同じ構えをし、戦闘態勢をとる。

 ニャッフルは突然の出来事に動揺しながらも、同じく戦闘態勢をとった。


「ちょっと待ってください師匠。私達はその間どうすれば?」


 アオイは慌てて右手を上げ、祐樹へと質問する。

 祐樹は「いけね、忘れてた」と頭を搔き、返事を返した。


「ああ、悪い。お前らは周辺からモンスターが襲ってこないように、俺たちを守ってくれ。組み手に集中したいからな」

「なるほど! 了解しました、師匠!」

「おう! 任せときな!」

「ま、仕方ないわね」


 祐樹の指示に対し、三様の返事を返す三人。

 この辺り一体のモンスターは決して弱くないが、彼女たちもレベルが低いわけではない。護衛くらいは問題なくこなせるだろう。


「よし、じゃあ来い! ニャッフル!」

「がってんにゃ!」


 ニャッフルは一瞬にして祐樹との距離と詰め、正拳突きを行う。

 祐樹はその動きを完全に見切り、最低限の動きでそれを避けた。


『違うな……奥義は空中技だ。そのためにはまず、俺が空中に吹っ飛ばされなきゃならない。今のこいつのレベルなら、きっと出来るはずだ』


 祐樹はニャッフルの攻撃を軽々と避けながら、どうやって技を教えようかと考える。

 そして、自らの顎の部分に一瞬の隙を作った。


「!? 隙ありにゃ!」

「むぐっ!?」


 ニャッフルはその隙を見逃さず、その顎を蹴り上げる。

 結果的に、祐樹の体は空中へと浮遊した。


「よし、ニャッフル! そっから五連撃! やってみろ!」

「!? がってんにゃ!」


 ニャッフルは跳躍し、空中に浮いている祐樹へと近づく。

 そしてそのまま、連続攻撃を叩き込んだ。


「さん! し!」

「まだまだ! あと二発! 蹴りのコンビネーションだ!」


 祐樹はニャッフルの攻撃を受けながら、攻撃の指示を出す。

 ニャッフルは力を振り絞り、それに答えた。


「にゃああああああああ! そりゃあ!」

「ぶぐぉっ!?」


 ニャッフルは空中で見事六連撃を放ち、最後の一発で祐樹を後ろへと吹き飛ばす。

 吹き飛ばされた祐樹は、猛スピードで岩に激突した。


「つつ……よし、ニャッフル! できたじゃねーか!」

「や……やったにゃ! ニャッフルにできたにゃ!」


 ニャッフルはぴょんぴょんと飛び跳ね、喜びを全身で表現する。

 祐樹はそんなニャッフルの姿を見ながら、嬉しそうに微笑んだ。


「よし、ニャッフル! ほれ、連撃岩だ!」


 祐樹は足元にあった大岩を掴み、ニャッフルの方へと放り投げる。

 ニャッフルは瞬時に、空中を飛びながら自分に向かってくるその岩に反応した。


「!? はあああああ……せやあ!」


 ニャッフルは岩が地面に落ちると同時に、先ほど祐樹に習った技をその岩に叩き込む。

 すると大岩はその体を四散させ、パラパラと砕けた破片だけが残った。


「や、やった! ニャッフルにも砕けたにゃー!」


 ニャッフルはやー! と両手を上げ、満面の笑顔で喜ぶ。

 祐樹はその笑顔を見ると、同じように笑った。


「ははっ。ニャッフル、それが拳闘士の奥義“豪・裂衝連撃”だ。習得おめでとう」

「ありがとにゃ! ユウキ! ニャッフルはやったにゃー!」


 ニャッフルはぴょんぴょんと飛び跳ねながら、そこら辺の岩を奥義で砕き始める。

 やがて祐樹に制止されるまで、ニャッフルの破壊は止まらなかった。


『うん。思った通り、スキルレベルが高い奴が指導すれば、指導された側のスキルレベルも飛躍的に上がるシステムは生きてるみてーだな。この分なら……』

「アオイ! 次はお前の番だ!」

「!? は、はい! 師匠!」


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