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第六十九話:ニャッフルの故郷へ

『なあ、この間のゴブリンといい、最近魔物の数が増えてないか?』

『ああ、確かにな。あの噂もあながち嘘じゃないのかもしれない……』

『噂って?』

『お前知らないのか? 魔王が―――』

「……どうやらいよいよ、魔物の動きが活発化してきたようですね。そのせいで魔王誕生の噂も、徐々に広がってきています」


 トライロードのギルドに来ていた一行の耳に、魔物の活発化、そして魔王誕生の噂が届く。

 アオイはその表情を引き締め、祐樹へと声をかけた。


「ああ、そうだな。いい加減国民も気付き始めた……ってとこか」


 祐樹は腕を組みながら、真剣な表情でアオイに応える。

 アオイはさらに、言葉を続けた。


「ということは師匠。移動手段もできた今、いよいよ魔王城に乗り込むんですね!?」

「チョップ」

「いたひ!?」


 鼻息荒く言葉を紡いだアオイに対し、チョップを叩き込む祐樹。

 アオイは涙目になりながら頭を摩り、言葉を続けた。


「い、痛いです師匠。何するんですか」

「声がでけーっつの。それにアオイ。今の俺たちの実力で、魔王に勝てると思うか?」


 祐樹は腕を組むと、再び真剣な表情で言葉を返す。

 アオイは祐樹の言葉を受けると、真剣な表情で考え込んだ。


「ううん、確かに、それはなんとも言えません。敵の素性もわかりませんし……」

「ふむ。とはいえこれは負けられない戦いだ。準備は充分にしておきたい。そこでだ」


 祐樹は組んでいた腕から一本人差し指を立てると、アオイの視線をそれに集める。

 そしてそのまま、言葉を続けた。


「一ヶ月。この期間は修行期間として、魔王討伐はその後にする。いいな?」

「は、はい。師匠! わかりました!」


 祐樹の真剣な表情に気押されたアオイは、思わず直立不動の姿勢で返事を返す。

 しかし今度は、レオナが口を挟んだ。


「ちょっと、そんな悠長なこと言ってて大丈夫なの? 一ヶ月も放置するなんて……」

「だーいじょうぶだよ。ここのギルドの連中の強さは見ただろ? 冒険者側の実力だって捨てたもんじゃない。一ヶ月くらい持ちこたえられるさ」


 祐樹は一転して砕けた態度で、レオナへと返事を返す。

 レオナは片手で頭を抱え「どっからその自信がくるんだか……」と呟いた。


「それはそうと、次はどこへ向かうんだ? アタシに任せてくれりゃどこでも連れてってやるぜ?」


 フレイはどんと胸を叩き、悪戯な笑顔を見せる。

 祐樹はそんなフレイに笑顔を見せると、返事を返した。


「頼もしいな。次の目的地は……実は、ニャッフルの故郷だ」

「にゃ!? にゃんでにゃ!? ニャッフルの故郷なんか何もないにゃ!」


 祐樹の言葉に驚いたニャッフルは、尻尾をピンッと立たせて言葉を返す。

 祐樹はニャッフルの言葉を受けながら、攻略本の内容を思い出していた。


『ところがそうでもねえんだよなぁ。ここぞとばかりに戦力強化のイベントが目白押しなんだよ、お前の故郷は。まあドラゴンじゃなきゃ行けない島って時点で、終盤に行く場所なのは明白だしな』


 祐樹はニヤリと笑うと、ポンとニャッフルの肩を掴む。

 ニャッフルは嫌な予感を感じ取り、その手から逃れようと体をよじった。


「ちょ、何にゃユウキその笑顔は! こわいにゃ! やめるにゃ!」

「大丈夫だ、ニャッフル。ちょっと我慢すればすぐに済む」


 祐樹はニャッフルの肩を掴んだその手を放さず、そしてそのまま、もう片方の手でロープをしっかりと掴んだ。








「にゃああああああ!? こわいにゃあああああ!」


 ニャッフルはドラゴンと化したフレイの足に括り付けられ、ぶら下げられた形で空中を進む。

 トライロードの上空では、ニャッフルの断末魔が響いていた。


「あ、あのー師匠。さすがにニャッフルちゃんが可愛そうなのでは……」


 アオイはぶら下げられているニャッフルを見つめ、額に大粒の汗を流しながら祐樹へと言葉を紡ぐ。

 祐樹は小さくため息を吐きながら、返事を返した。


「確かにかわいそうだが……ニャッフルは家出同然で故郷を飛び出してきてんだぞ? ああでもしないと絶対付いてこないだろが」

「まあ、故郷に到着する前に失神しそうだけどね」


 レオナは冷静な目でニャッフルを見つめながら、言葉を紡ぐ。

 そしてレオナの予想通り、ニャッフルは数分と立たずに失神し、静かになるのであった。



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