表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/111

第五十七話:フランの秘密

「ここがカジノ……ですか。はじめて来ました」

「にゃー……なんだか派手なところだにゃー……」

「そうね。なんか無駄に派手って感じだけど」


 カジノに入った一行だったが、ニャッフルとアオイはポカンと口を開け、豪華な装飾に目を奪われる。

 沢山のテーブルの上では様々なゲームが歓声と共に行われ、下は赤いじゅうたん、上は豪華なシャンデリアと、まさに豪華絢爛な場所である。

 共に田舎育ちである三人にとっては、まさにカルチャーショックの塊とも言えた。


「まあまあ、とにかくゲームを始めようぜ。やるゲームは、あれだ! “モンスターウォーカー!”」


 祐樹は急に生き生きとした表情に変わり、テーブルの一つを指差す。

 三人は同時にそのテーブルを見て、アオイは手を上げながら祐樹へと質問した。


「あのー、師匠。あれはどういったゲームなのでしょうか?」

「よくぞ聞いたアオイ! あれはな、ダイスを振って、出た目の数だけコマを進めていくんだ。で、ディーラーより先にゴールした方が勝ち。簡単だろ?」


 アオイの質問を受けた祐樹は、嬉々としてゲームの説明を始める。

 それを聞いていたレオナは一点の疑問を持ち、祐樹へと質問した。


「……で、どれくらいあれをやれば億単位のお金が手に入るわけ?」

「おふ。痛いとこ突くなレオナ」


 あまりに単純なルールに疑問を抱いたレオナは、胸の下で腕を組みながら祐樹へと質問する。

 祐樹はたじろぎながらも、やがて質問に答えた。


「えーっと。3000回くらい……かな? えへへ」

「さんぜんかい!? 日が暮れちまうにゃ!」


 祐樹の衝撃の一言に、ツッコミを入れるニャッフル。

 しかし祐樹は、そんなニャッフルに力強く返答した。


「仕方ねーだろが! 他のゲームはリスクが高いから、結局これやるのが一番稼げるんだよ! 俺なんか本編よりカジノにいた時間のが長いくらいだ!」

「??? 師匠。一体何の話をされているのですか?」


 唐突にゲームをプレイしていた頃の話をした祐樹に対し、疑問符を浮かべて質問するアオイ。

 祐樹はしまったと片手を口に当て、やがて言葉を続けた。


「と、とにかくだ。これをやりまくるぞ! それしかない!」

「あのねぇ。そんな悠長なこと言ってて大丈夫なわけ? 期限に間に合わなかったらあの娘売られちゃうのよ」


 レオナは相変わらず腕を組みながら、祐樹へと言葉をぶつける。

 祐樹はキリッとした表情で、レオナへと返事を返した。


「大丈夫だ。俺の計算上はギリギリ間に合う」

「どこから来るのよその自信は……」


 キリッとした表情で言葉を返す祐樹に、片手で頭を抱えるレオナ。

 先ほどの言葉を聞く限り、3000回という回数は消して少なくない。本当にギリギリの戦いになってしまうだろう。

 そしてそんな一行のやりとりを聞いていたフランは、不思議そうに首を傾げ、声をかけた。


「あのー、さっきから皆さん、何を言ってますの?」

「ああ、フラン。悪い。お前には関係ない―――はっ!」

「!? な、何よ突然、びっくりしたわね」


 フランに穏やかに答えていた祐樹は、突然何かを思い出したように、頭を跳ね上げる。

 するとそのまま、頭の中をフル回転させた。


『落ち着け。落ち着け俺。攻略本の内容を思い出せ。確か198ページの隅の方に、何か書いてあったはずだ。あれは確か―――』

「!? そ、そうか! フラン! ちょっとお願いがあるんだが、いいかな!?」

「ふぇ!? は、はひ! わかりましたわ!」


 突然フランへと近づいた祐樹は、真剣な表情で言葉を紡ぐ。

 フランは突然近くなった祐樹の顔に驚き、その頬を赤く染めながら答えを返した。


「お前普段、右手でダイスを振ってるだろ? 出したい目を思い浮かべながら、左手でダイスを二つ振ってみてくれ」

「??? えっと……じゃあ、6のダブルを出しますわ。……えいっ」


 祐樹は空いているテーブルへと移動すると、備え付けのダイスをフランへと振らせる。

 ニャッフルたち三人は、そのダイス目を静かに見守った。


「!? ろ、ろくにゃ! 本当にろくのダブルが出たにゃ!」


 テーブルの上を転がったダイスは、6のダブルを示している。

 ニャッフルはしっぽをピンッと立て、興奮した様子で声を発した。


「ほ、ほんとうですわ! じゃ、じゃあ次は1のダブルを……えいっ」

「ま、また宣言通り!? ユウキ、これどうなってるの!?」


 再び宣言通り1のダブルを出したフランを見て、祐樹へと質問するレオナ。

 祐樹はふっふっふと笑いながら、ドヤ顔でその質問に答えた。


「実はフランの家系には、ある特殊能力が備わっている。それがこのダイスを自在に操る能力だ。フランの親父も、実はこの能力で巨万の富を得ていたのさ」


 まあ、攻略本の隅っこに書いてあるプチ情報なんだけどな、とは言わず、そこまでで言葉を区切る祐樹。

 レオナはそんな祐樹の言葉を受けると、ぽかんと口を開けて驚いた。


「よぉし、これで二人一組でやるゲームでも勝てる! 全財産賭けるぞアオイ、財布出せ!」

「ええええ!? 大丈夫なんですか師匠!?」


 突然素っ頓狂なことを言い出す祐樹に対し、驚きながら返事を返すアオイ。

 祐樹はそんなアオイに、親指を立てながら自信満々に答えた。


「大丈夫だ! 俺幸運値もマックスだから!」

「すみません師匠! 意味がわかりません!」


 アオイは祐樹の言葉の意味がわからず、ただ混乱する。

 しかしやがて財布を渡すと、祐樹はフランの手を引いて走り出した。


「よぉし、行くぞフラン! 今日は長い夜になりそうだぜええええ!」

「ふぇ!? は、はひ! わかりましたわ!」


 フランは祐樹に手を掴まれ、真っ赤になりながらゲームの行われているテーブルへと駆け出していく。

 残された三人はお互いに目を合わせると、同時にこくりと頷いた。

 なおその後、祐樹が二人に尻を蹴られたのは、言うまでもない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ