表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/111

第五十六話:依頼の受領

「さて、シーサンセットのギルドに着いたわけだが……こりゃ予想以上だな」

「うひゃー……壁が依頼書で埋め尽くされてるにゃ」


 シーサンセットのギルドに到着した祐樹は、予想以上の惨状(?)に驚き、大粒の汗を額に流す。

 同じくニャッフルも目の前の光景に驚き、ポカンと口を開けていた。


「はあっはあっ。やっと追いついた……ほわ!? なんですかこれ!?」

「依頼書のラッシュね。しかも同一人物の」


 二人を追いかけてきたアオイは息を切らせながら二人に話しかけるが、同時にギルドの光景に驚き声を出す。

 レオナは冷静に胸の下で腕を組みながら、祐樹と同じように額に大粒の汗を流した。


「また依頼を出すとは言ってたが……フランの奴、出しすぎだろ。どんだけ困ってんだよ」

「いえ、どうやらそれほど困ってはいないようです。日付順に依頼書を追っていくとわかります」

「???」


 アオイは苦笑いを浮かべながら、祐樹へと話し掛ける。

 祐樹は言われた通り、依頼書を日付順に追ってみた。


『今日は飼い猫が逃げ出しましたわ! 一緒に探してくださいまし!(ユウキ様限定)』

『今日はなんだかアイスが食べたい気分ですわ! ご一緒してくださる方募集!(ユウキ様限定)』

「ほぼ日記じゃねーか! あいつギルドを何だと思ってんだ!」


 しかも、記載してある報酬のほとんどが内容にしては法外な値段である。

 もちろんそれでも、億単位の金額には到底届かないのだが。


「あ、祐樹! 丁度良い依頼があったにゃ!」

「マジか!? あ、本当だ!」


 ニャッフルの声に反応した祐樹は、すぐにニャッフルの隣へと移動する。

 その視線の先には、一枚の依頼書があった。


『一緒にカジノで遊んでくださる方を募集しますわ!(ユウキ様限定)』


 祐樹はその依頼書を剥がすと、やがてまじまじと見つめた。


「ここまでおあつらえ向きの依頼を出してくれるとは……ラッキーだな」

「にゃ」


 祐樹の言葉に釣られ、こくこくと頷くニャッフル。

 一方祐樹は苦笑いを浮かべながら、その依頼書を見つめていた。

 そして突然、ギルドの扉が勢い良く開かれる。


「おーっほっほっほ! ユウキ様! ようやく来てくださったのですね! わたくし感激ですわ!」

「あーあー……相変わらず派手な奴だなぁ」


 フランは扉を開けると、祐樹との間に赤いじゅうたんを敷き、バラを撒き散らしながら近づいてくる。

 やがて祐樹の前に立つと、胸の下で腕を組み、言葉を紡いだ。


「しかもその依頼を請けて下さるなんて、さすがユウキ様ですわ! その依頼、丁度今日出したところですのよ!」

「あ、ほんとだにゃ。日付が今日になってるにゃ」


 ニャッフルは今気付いたようで、能天気に依頼書の日付欄を見つめる。

 祐樹はそんなニャッフルの様子に構うことなく、フランへと言葉を紡いだ。


「フラン。この依頼を出すって事は、カジノへの入場許可証を持ってるんだよな? 俺たちも一緒に入れてもらっていいか?」


 祐樹はニャッフルの持っている依頼書を見ると、腕を組みながらフランへとお願いする。

 フランは高笑いをした後、それに答えた。


「もちろんですわ! それが依頼の内容ですもの!」

「そうか、ありがとう。本当助かったよ」

「―――っ!?」


 祐樹は穏やかな笑みを浮かべ、フランを見つめながら嬉しそうに言葉を紡ぐ。

 フランはその顔を見ると、みるみるうちに顔を赤くしていった。


「い、いいいいえ、わたくしはただ、依頼を出しただけですわ!」

「???」


 急に顔を赤くしてそっぽを向いてしまったフランの様子に、頭に疑問符を浮かべる祐樹。

 そしてその尻を、レオナが思い切り蹴った。


「いたひ!? だからなんでお前は急に蹴るんだよ!?」

「さあ? とにかくカジノに行くんでしょ。ならさっさと行きましょ」


 攻め立てる祐樹に対し、悪びれる様子もなく答えるレオナ。

 祐樹は涙目で尻を摩っているが、その尻に第二撃が打ち込まれる。


「にゃ!」

「いてえ! 何これ流行ってんの!?」


 祐樹の尻に突然蹴りを入れてきたニャッフルに対し、再び涙目で抗議する祐樹。

 ニャッフルは口笛を吹きながらそっぽを向いて、「自分で考えるといいにゃ~」と反論した。


「し、師匠……」

「あ、アオイ!? お前はまさかしないよな!?」


 近づいてきたアオイに対し、警戒して尻を防御する祐樹。

 アオイはゆっくりと祐樹に近づくと、人差し指でほっぺをつついてみせた。


「え、えい」

「ほむ!? なんなの一体!? 僕全然わからない!」


 祐樹はついにキャラ崩壊し、三人へと抗議する。

 しかしレオナとニャッフルはそっぽを向き、アオイは額に大粒の汗を流しながら、「え、えへへ。すみません、師匠」と苦笑いを浮かべていた。


「さて、では参りましょうユウキ様! カジノがわたくし達を待っていますわ!」

「おわ、フラン!? いきなり引っ張んなよ!」


 フランは真っ赤な顔ながらも、唐突に腕を組み、そのままぐいぐいとカジノの方角へと祐樹を引っ張っていく。

 祐樹は驚きながら声を上げるが、その腕に引っ張られて歩き始めた。


「あの馬鹿……全然わかってないわね」

「よくわかんにゃいけど、なんか尻を蹴りたい気分にゃ」

「あ、し、師匠! 待ってください!」


 三人はそれぞれの台詞を口にして、フランと祐樹を追いかける。

 こうして一行はついにカジノへの入場許可を手に入れ、カジノの中へと一歩を踏み出した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ