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第五十四話:再びシーサンセットへ

「あの、司会者さん。一つ提案があるのですが」

『はい? なんでしょう』


 アオイは片手を上げ、司会者へと提案する。

 司会者は営業スマイルをもって、それに答えた。


「一週間後、またこの競売を開いてください。その時には、1億ボルドを準備することを約束します」

『!? な、なんと、ゲスティル氏に対抗馬出現だー! 金額は1億ボルド! これはとんでもないことになってまいりました!』

「ぶふぅ! おいそこの男! 勝手な事を言うな! そんなこと認められるか!」


 ゲスティルは怒りをあらわにし、アオイを指差して言葉をぶつける。

 アオイは祐樹に言われた通り、涼しい顔をしながら冷静に言葉を返した。


「元々この競売は、一週間単位で行われるはずです。司会者さん、問題ないですよね?」


 アオイはなるべくゲスティルから視界を外しながら、司会者へと同意を求める。

 司会者はしばし腕を組んで考え、やがて答えた。


『おっしゃる通り! この競売期間は一週間を予定しています! よって、この青年の申し出は認められます!』

「なにいいい!? ぶふぅ! くそ!」


 ゲスティルは司会者の言葉を聞くと、悔しそうに奥歯を噛み締める。

 もしあの男に買われたのなら、龍族の娘がどうなるか、想像もしたくないところである。


「し、師匠! 言われた通りにしたら、本当に通りました! 凄いです! 師匠!」

「わ、わかった。わかったから落ち着けって」


 アオイは走って祐樹たちの元に戻ると、その両肩を掴んで前後に揺さぶる。

 祐樹はガクガクと震えながら、両手を盾のようにしながらアオイへと返事を返した。


「それはいいけど……1億なんて大金、一体どうするのよ?」

「手持ちのお金じゃ、全然足りないにゃ」

「あ……」


 ニャッフルとレオナの言葉を受けたアオイは、ようやく状況に気付き、ぽかんと口を開ける。

 そしてそのまま、祐樹へと向き直った。


「し、しししし師匠! どうしましょう! 私たちお金持ってません! モンスターを倒しますか!?」

「どんなキルマシーンになる気だよ!? それに討伐任務じゃ、一週間徹夜しても1億なんか稼げねえよ」


 祐樹は腕を組み、冷静に言葉を返す。

 アオイはその言葉を受けると、顔から血の気が引き、消え入るような声で返事を返した。


「そ、そんな。それじゃ一体、どうしたら……」

「大丈夫だ、アオイ。俺達はこれから、シーサンセットに再び向かう」


 祐樹はニカッと笑いながら、シーサンセットのある方角を親指で指差す。

 レオナはその発言を受けると、頭に疑問符を浮かべて言葉を返した。


「シーサンセット? あのリゾート地で何をするのにゃ?」

「ふっふっふ。ニャッフル、君は忘れているぜ。あの観光地には素敵な施設があったじゃないか」

「???」


 ニャッフルは祐樹の言葉を受けると、頭に疑問符を浮かべて首を傾げる。

 アオイも祐樹の真意がわからず、同じように首を傾げた。


「!? ユウキ、あんたまさか……」

「レオナは思い出したか。……そう! あの街には、素敵な素敵な“カジノ”があったじゃないか!」


 祐樹はバッと両手を広げ、大げさな動作で言葉を紡ぐ。

 アオイとニャッフルの二人は同時に、言葉を返した。


「「カジノ(にゃ)!?」」

「そう、カジノだ。あそこで一攫千金を狙えば、1億なんざあっという間だぜ」


 祐樹はニヤリと笑いながら、何かを企むような表情で再び腕を組む。

 レオナは「そんな事だと思った……」と、片手で頭を抱えた。


「で、ですが師匠。カジノといっても、勝算はあるのですか!?」

「カジノって何にゃ?」

「うん、まずはアオイの質問から答えような」


 動揺しながら質問するアオイと、口元ににくきゅうを当て、不思議そうに首を傾げるニャッフル。

 祐樹はまず、アオイへと体を向けた。


「勝算はある。心配すんな。1億なんてはした金、すぐゲットしてやるよ」

「す、凄い自信です! さすが師匠! わかりました!」


 アオイはキラキラとした瞳で祐樹を見つめ、尊敬の眼差しのまま言葉を返す。

 その言葉を受けた祐樹は、満足そうに頷き、やがてニャッフルへと体を向けた。


「いいか? ニャッフル。カジノってのは、ボルドがざっくざっく手に入る素敵なところだ」

「ボルドがざっくざっくにゃ!? それは凄いにゃ!」

「わぁぁ! ニャッフルちゃんの目がボルドになってます!」


 祐樹の言葉を受けたニャッフルは、その両目をボルドのマークにして、ワクワクとした様子で返事を返す。

 その姿を見た祐樹は片手を上げ、トライロードの出口へと歩き始めた。


「よーし、じゃあ早速、シーサンセットに引き返すぞ!」

「おー! ボルドざっくざっくにゃ!」

「あ! ふ、二人とも、置いてかないでください!」


 祐樹とニャッフルは、早足でトライロードの出口へと歩き出していく。

 アオイは慌てて、その後ろを追いかけた。


「あーあ……もう、どうなることやら……」


 レオナは相変わらず片手で頭を抱えながら、祐樹たちの後ろを追いかける。

 こうして勇者様一行は、商業都市トライロードを後にし、一路シーサンセットへと向かった。



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