第四十七話:デートデートデート3
学園都市マジェスティックの宿屋のベッドに座る一越祐樹は、対面のベッドに座るレオナへと質問する。
その表情は真剣そのものだった。
「レオナ……聞き間違いか? もう一度言ってほしいんだが」
祐樹は真剣な表情のまま、レオナへと言葉を紡ぐ。
レオナは苛立った表情をしながら、言葉を返した。
「だーかーら。あたしがデートしてあげるって言ってるの。何度も言わせないで」
「あー、はいはい。デートね。デートデート……はぁああああああああああああああ!?」
ただのゲーマーだった俺が異世界では無敵だった件
「待て、落ち着け俺。惑わされるな。きっとこれは幻覚だ」
「幻覚じゃないわよ! 失礼ね! あたしはただ、デートしてあげるって言ってるだけでしょ!?」
「おだまりぃ! ただでさえ豆腐メンタルの俺に、女子がそんなこと言うんじゃねー! 心臓爆発すんだろが!」
「どんな奇病!? さっきからあんたおかしいわよ!」
レオナは怒りながら、祐樹へと言葉を紡ぐ。
祐樹は心を落ち着かせ、頭をフル回転させた。
『落ち着け。マジェスティックでのイベントの中には仲間とのデートイベントもあったはずだ。それは問題ない。ただ……相手が俺だってのが問題だ。確かあれ、勇者とレオナのイベントだろ』
祐樹は言葉を落ち着け、再びレオナへと向き直る。
そしてゆっくりとした口調で言葉を紡いだ。
「あー、レオナさん? アオイと行ってくればいいんじゃないかな?」
「どういうこと!? それじゃデートにならないでしょ!」
レオナは祐樹の言葉を受けると、眉間に皺を寄せて言葉を返す。
祐樹は「正論吐くなよ……」と呟き、頭を抱えた。
「とにかく、出かけるわよ! ほら!」
レオナは座っていたベッドから降りると、すたすたと祐樹に近づき、右手を伸ばす。
祐樹はしぶしぶといった様子で、その手を取って立ち上がった。
「あー、もう、わかったよ。デート? ってやつをすればいいんだろ?」
「!? さっ、最初からそう言えばいいの、よ」
「???」
レオナは改めて祐樹の口からデートという単語を聞くと、頬を赤らめて視線を逸らす。
祐樹はそんなレオナの様子に疑問符を浮かべながらも、二人は連れ立って宿屋から街へと繰り出した。
「えーっと、それでレオナさん。どこ行くんスかね」
祐樹はポリポリと頬を搔き、レオナへと質問する。
正直言って突然の事態に戸惑い、当然目的地など祐樹が思いついているはずもなかった。
「はぁ? デートコースって男が考えるもんじゃないの?」
「事前に決まってればね!? この数秒でデートコースを組み立てろと!?」
レオナの発言に対し、鋭いツッコミを入れる祐樹。
レオナは言葉を受け取ると「そ、それもそうね」と納得した様子で頷いた。
「ま、いいや。この先に上手いスイーツ屋があるから、とりあえずそこ行こうぜ」
祐樹は親指を立てると、進行方向に向けて指差し、言葉を紡ぐ。
レオナはスイーツという単語を聞くと一瞬目を輝かせ、返答した。
「へえ! あんたにしちゃ良い提案じゃない。それでいいわ」
「ええええ……なんでこんな上から目線なのこの人」
レオナの態度が腑に落ちない祐樹は、納得できない様子でぽつりと呟く。
こうして二人は、学園都市一番人気のスイーツカフェへと向かった。
向かった……のだが。
「見事にカップルだらけ……だな」
「そ、そ、そうね」
到着してみると、席のほとんどを学生カップル達が埋め尽くし、空気もなんだかピンク色になっているような気さえする。
レオナは何故か緊張した様子で、祐樹へと言葉を紡いだ。
「じゃ、じゃあ、あたし席とっておくから、あんたパフェ買ってきてよ。一つでいいからね」
「??? お、おう、わかった」
何故か緊張した様子のレオナを不思議に思いながら、祐樹はスイーツ店へと歩いていく。
やがてレオナは空いている席に座ると、バクバクと動く自らの心臓に手を当て、真っ赤になって下を向いた。
『どうしようどうしようどうしよう。誘っちゃった誘っちゃった誘っちゃった』
レオナの頭の中は、実はずっとこの二つの単語がぐるぐると回っている。
平静を装ってはいるが、内心はパニック状態だった。
「おーいレオナ。パフェ買ってきたぞー……って、机に突っ伏して何してんだ?」
「へぁ!? な、なんでもない!」
「???」
動揺した様子のレオナに対し、パフェを持ちながら頭に疑問符を浮かべ、首を傾げる祐樹。
しかしレオナはそんな祐樹の様子に構わず、言葉を続けた。
「そ、それよりほら、あんたも座りなさいよ!」
「お、おう。そりゃ座るけどさ……」
レオナは何故か紅潮した顔でビッと対面の席を指差し、祐樹へと命令する。
祐樹は訝しげな視線をレオナに送りながらも、対面の席に座った。
「じゃ、じゃあ、えっと、あ、あーん……」