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第四十四話:戦いの幕開け

『さあ! 演習試合もいよいよ大詰め! ギャレットVSレオナの戦いだぁー!』


 学園都市マジェスティックにある学園の演習場に、実践演習のアナウンスらしき声が響く。

 実践演習場の中心では、ギャレットとレオナが一定の距離をとって対峙していた。


「はははっ。本当に僕と戦う気かい? レオナ。悪い事は言わない、今からでも棄権することだね」

「―――っ!」


 レオナはギャレットの言葉を受けると、下唇を噛んで悔しそうに俯く。

 悔しい。悔しいが、ギャレットの言う通りだった。


『何よ、ユウキの奴、結局あれからあたし、呪文の暗記しかしてない……そんなんでギャレットに敵うわけ無いじゃない』


 レオナはここ数日行ってきた祐樹との特訓(勉強)の内容を思い出し、さらに悔しそうに奥歯を噛み締める。

 ギャレット達と演習試合の約束をしたその日から、祐樹とレオナの秘密特訓は始まった。

 しかし行ったことといえば魔法の練習などではなく、ただ呪文を丸暗記しただけだった。

 これでは、レオナが不安になるのも無理はない。何せ相手は学園で成績ダントツトップのギャレットなのだ。


「おっと、棄権はできないか。何せ僕に負けたらユウキ? とかいう男は裸でこの街を一周しなければいけないんだからね。あはははは!」

「―――くっ!」


 ギャレットの言葉を受け、さらに悔しそうに下唇を噛み締めるレオナ。

 その両手は強く握られ、ワナワナと震えていた。

 そして、そんなレオナの様子を観客席から見守る、視線が一つ。

 ユウキは鼻歌を歌いながら、そんなレオナの様子を見守っていた。


「あーあー、言われてる言われてる。ま、そりゃそうだわな」

「師匠! 本当に大丈夫なのですか!? 相手の人、強いのですよね!?」


 祐樹の横に座っているアオイは、不安そうに祐樹へと声をかける。

 祐樹は気だるそうに椅子に座りながら、アオイに返事を返した。


「あー、だいじょぶだいじょぶ。あいつ物覚えいいから。呪文沢山覚えたぜ」


 祐樹はぐっと親指を立て、ニカッと笑ってみせる。

 アオイは腑に落ちない様子で、言葉を返した。


「覚えたって……魔法は呪文を覚えたからってすぐ使えるものではないはずです……」


 アオイは少し言い辛そうにしながら、祐樹へと言葉を紡ぐ。

 祐樹は笑いながら、そんなアオイへと返答した。


「あっはっは! ま、応援しながら見てようぜ。ほら、ニャッフルみたいに」

「いくにゃー! れおにゃ! そんなやつぶっとばすにゃー!」


 ニャッフルからの声援に対し、「誰がれおにゃよ!」と返事を返しているレオナ。

 その様子を見たアオイは毒気を抜かれたように、椅子に深く座った。


「は、はい。師匠がそうおっしゃるなら……」

「うんうん。ま、心配すんなって。結果はすぐ出るからよ」

「???」


 自信満々で腕を組んでレオナを見守る祐樹の横顔を、頭に疑問符を浮かべながら見つめるアオイ。

 しかし祐樹の視線は変わらず、不安そうに立つレオナを見つめ続けていた。


『さて、いよいよ演習開始です! レディ……ゴー!』


 アナウンスの声と共に、会場内を歓声が包む。

 その中には、レオナへの野次も少なからず混じっていた。


『レオナー! 悪いこと言わねえから棄権しとけー!』

『ギャレットー! ちゃんと手加減してやれよ! レオナちゃん怪我しちまうぞー!』

『ぎゃははははは!』


 そんな野次を受けたレオナは、ついに顔を赤くして、プルプルと震え始める。

 怒りと恥ずかしさで、どうにかなりそうだった。


「おやおや、スタートの合図出ちゃったね。じゃ、始めようか」

「っ!?」


 ギャレットはゆっくりと腰元に挿していたスティックを取り出すと、レオナの方に先端を向ける。

 そしてそのまま、呪文詠唱を始めた。


「炎の神フレイダルよ、今、眼前の敵にその一撃を。”ファイアボール”」


 ギャレットの杖の先端から、複数の炎の玉が生成され、レオナに向かって飛ばされていく。

 その距離は、どんどん縮まっていった。


「そんな、ファイアボールはDランク魔法とはいえ、あんな複数を同時に!?」


 アオイはギャレットの魔法の腕に驚き、感嘆の声を上げる。

 祐樹は椅子についていた肘置きに頭を預けながら、小さく拍手した。


「おーおー、敵さんやるねえ。ありゃたいしたもんだな。就職先は国王直属の魔法使いってとこかな?」

「魔法使い最高の栄誉じゃないですか! レオナさん本当に大丈夫なんですか!?」


 祐樹の言葉に動揺し、声を荒げるアオイ。

 しかし祐樹は動揺せず、「ま、見てなって」と繰り返すだけだった。

 そして、レオナは―――


『あいつ……あいつの言う通りにして、本当に勝てるの? ―――ああもう、どうにでもなれ!』


 レオナは背中に背負っていた杖を取り出すと、ギャレットに向かって突き出す。

 そしてそのまま、驚異的な早口で呪文詠唱を始めた。


「炎の神フレイダルよ、今、眼前の敵にその一撃を。”ファイアボール”」


 レオナのその言葉を受けた瞬間、杖の先端で浮遊していたリングはその回転を早め、その先端の更に先の空間に、巨大な火球を生成する。

 ギャレットのファイアボールを拳大とするなら、レオナのそれは三倍、いや、三十倍はあろうかという巨大火球だった。


「何いいいい!? レオナが、攻撃魔法を!?」


 驚くギャレットだったが、火球は待ってはくれない。

 レオナの火球はギャレットの火球を全て容易く飲み込み、ギャレットに向かって迫ってきていた。


「くっ! くそっ!」


 ギャレットは寸前のところで身をかわし、火球を避ける。

 避けられた火球は魔術障壁の張られた演習場の壁に激突し、その姿を消滅させた。



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