第四十話:レオナの覚醒?
『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!』
ゴーレムの位置を把握していた祐樹はすぐにアオイとレオナを連れて、ニャッフルと合流する。
ニャッフルはゴーレムの両拳から繰り出される攻撃をギリギリで避けながら、涙目で祐樹へと助けを求めた。
「ああもう、仕方ねえ! アオイ、ニャッフル、レオナ! いつもの陣形取るぞ!」
祐樹の声に反応し、アオイを先頭に、ニャッフル、レオナ、祐樹の順に陣形を取る。
しかしゴーレムはそんな祐樹たちの様子に構うことなく、今度はアオイへとその拳を振り下ろした。
「アオイ! 受け流しは無理だ! とりあえず避けろ!」
「は、はい! くっ……!」
アオイは振り下ろされた拳をギリギリのところでかわし、土ぼこりがアオイの顔にかかる。
拳を振り下ろした状態のゴーレムに対し、祐樹は次の命令をニャッフルに伝えた。
「あいつは間接部分がもろい! ニャッフル! 振り下ろしたあいつの間接部分に新技だ!」
「がってんにゃ!」
ニャッフルは祐樹の言葉を聞くと、振り下ろされた拳を器用に駆け上がっていく。
そして間接部分に狙いを定めると、大声で叫んだ。
「にゃああああ……烈波・連檄蹴!」
ニャッフルは蹴りのコンビネーションをゴーレムの間接部分に思い切り叩きつける。
すると間接部分は脆く崩れ去り、振り下ろされた拳は腕の部分と切り離された。
「今だ! アオイ、反対側の間接に新技!」
「は、はい! 師匠!」
アオイは祐樹の言葉を聞くと、まるで剣を担ぐようにして構え、呼吸を整える。
そしてそのまま、大声で叫んだ。
「はああああ……豪波・裂衝斬!」
アオイは両手で握った剣を振り下ろし、その衝撃波はやがて斬撃の形になると、ゴーレムの間接部分へと直撃する。
するとニャッフルの例と同じように、拳と腕の部分が切り離された。
『グオオオオオオオオオオオオオオオオオ!』
ゴーレムは苦しそうに呻き、両腕をめちゃくちゃに振り回す。
その瞬間、大きな隙が生まれた。
「!? 今だ、ゴーレムの額部分にニャッフルとアオイで攻撃しろ!」
動揺したゴーレムの姿を見て取った祐樹は、ニャッフルとアオイに命令する。
その言葉を受けた二人は、コクリと頷き、飛び上がった。
「「はああああああ……裂衝撃・双刃!」」
『グオオオオオオオオオオオオオオオオオ!』
ゴーレムは二人の合体技を額に受けると、額の部分がボロリと崩れ、赤いコアのようなものが丸裸になる。
それを見た祐樹はニヤリと笑うと、レオナへと声を荒げた。
「今だ、レオナ! あのコアを思い切りぶっ叩け!」
「やっぱりね! どうせそんな役回りだと思ったわよ!」
レオナはヒーラーとしての誇りを捨て、ゴーレムへと駆け出す。
今のゴーレムに反撃する力は無く、ただその場に座っているのみだ。
「ああもう、くらええええええええええ!」
レオナは思い切り振りかぶると、ゴーレムのコアを思い切り杖で叩く。
するとコアは粉々に砕け、ゴーレムは断末魔と共に、バラバラに砕け散った。
「や、やった……」
「やりましたね! レオナさん!」
息を切らせて振り下ろした杖を握り締めるレオナと、ぐっと親指を立てて見せるアオイ。
ニャッフルはそんな二人の様子を見ると、同じように飛び上がって喜んだ。
「やったやった! やったにゃいたふ!?」
「やったにゃじゃねえ! 先行すんなっていつも言ってんだろが!」
祐樹は喜んでいるニャッフルに軽くチョップを打ち込み、怒号を飛ばす。
ニャッフルは「ご、ごめんなさいにゃ」と呟き、小さくなった。
「まあ、ともかく、これで事件は解決。無事ビッグブリッジを渡れそうだな」
祐樹は腕を組むと、うんうんと何か納得したように頷く。
しかし、そんな祐樹の服の裾を、レオナがくいくいと引っ張った。
「ね、ねえ、ちょ、ちょっと……」
動揺した様子のレオナの背後では、レオナの愛用していた杖が宙に浮き、輝きを放っている。
それを見た祐樹は、落ち着いた様子で、言葉を紡いだ。
「あらま……来るべき時が来たみてーだな」
宙に浮いていた杖は、やがてさらに輝きを増し、その場に居た全員の目をくらませる。
それは持ち主であるレオナとて例外ではなく、咄嗟に目を瞑った。
「きゃっ!? ……え!?」
「こ、これは……」
「きれいだにゃ~……」
宙に浮いている杖を見たレオナ、アオイ、ニャッフルの三人は、それぞれの感想を口にする。
祐樹はすたすたとその杖に近づくと、ニヤリと笑い、レオナへと向き直った。
「おめでとう、レオナ。お前は今、この杖に認められたんだ」
「…………は?」
祐樹の言葉の意味がわからず、固まるレオナ。
それは他の二人も例外ではなく、ロックフォードの鉱山入り口では、妙な空気が一行を包んでいた。