第三十九話:ゴーレムとの遭遇
「ついたにゃー! ここがロックフォードかにゃ?」
「ああ、そうだよ。予想通り寂れてんなぁ……」
ロックフォードへと到着した一行を迎えたのは、寂れた街の姿。
茶色い山の中心をくりぬいたような街の構造は山を掘り進めてきた歴代の掘り士達の誇りを感じさせるものがあるが、街全体に活力はない。
その理由は、思ったよりも早く判明した。
「あの、師匠。なんだか街全体に元気がないみたいですが……何かあったんでしょうか?」
アオイはおずおずと右手を上げ、祐樹へと質問する。
祐樹は「良い質問だ」と答え、さらに言葉を続けた。
「そうだな……アオイ、そこにいるドワーフに話しかけてみ」
祐樹はキョロキョロと辺りを見回し、スコップを背負った明らかに掘り士の風体をしたドワーフを指差すと、アオイへと言葉を紡ぐ。
アオイは「は、はい、わかりました」と返事を返すと、そのドワーフへと駆け寄った。
「あの、もし。この街の方ですよね。何かあったのですか?」
「んん? おめさん、旅の方け。何かあったもなにも、ゴーレムが鉱山の入り口さ塞いじまって、仕事になんねんだ。それでみんな元気がねえんだべ」
ドワーフは独特の訛りを交えた口調で、アオイの質問に答える。
それを横で聞いていた一行も、アオイと同時に一瞬にして状況を理解した。
そして、口火を切るように祐樹が口を開く。
「まあ、そゆことだ。主要産業である採掘ができなきゃ、街は成り立たない。そりゃ住人の元気も無くなるってわけさ」
祐樹は肩をすくめると、アオイへと言葉を紡ぐ。
アオイはどこか決心を秘めた瞳になると、祐樹へと向き直った。
「師匠! そのゴーレム、私たちで倒しましょう! この街の人々を救わなければ!」
アオイは祐樹の両手をいつのまにか握ると、近距離で言葉を紡ぐ。
一瞬香る花の香りに動揺した祐樹は、どもりながら言葉を返した。
「お、お、おう。元々そのために来たんだしな」
「さすが師匠! ゴーレムに物怖じしないその勇気、驚嘆に値します!」
アオイはキラキラとした瞳を祐樹に向け、言葉を紡ぐ。
祐樹は「お、おう」と返事を返しながら、そっと距離を取った。
「ちょっと、ユウキ」
「いたひ!? だからなんで尻を蹴るんだよお前は!」
祐樹は蹴られた尻を自分で摩りながら、レオナへと言葉をぶつける。
レオナはそんな祐樹の言葉に動揺する様子も無く、淡々と言葉を続けた。
「さっきからニャッフル、いないんだけど」
「……え?」
レオナの言葉を受けた祐樹は、さっきまでニャッフルが立っていた場所を見つめるが、そこにニャッフルの姿はない。
そこにはただ、空白の空間が存在しているのみだ。
「なんか、“ゴーレムなんか、ニャッフルパンチで一発にゃ!”とか言って走り出してたけど……大丈夫?」
「大丈夫じゃないよ!? なんで止めないのあなた!?」
祐樹は若干キャラが壊れながら、レオナへと詰め寄る。
急に距離を詰められたレオナは祐樹から顔を背けると、言葉を返した。
「し、仕方ないじゃない。止める暇もなく走り出したんだから……あんた、私の鈍足知ってるでしょ?」
「…………そっすね」
確かに、ニャッフルが本気で走り出したら、祐樹以外に止める事は不可能だろう。
それは他でもない、祐樹が一番理解していた。
「にしてもまたか、あの、バカ猫おおおおおおおおおおおおおおおおお!」
祐樹の雄たけびが、ロックフォードの街の中に響く。
そして、一方ニャッフルは―――
『グルルルルルルルル……』
「にゃ、にゃ~……ここまで大きいとは、聞いてなかったにゃ~……」
思いっきりゴーレムと、遭遇していた。
「ニャッフルうううううう! てめあれほど先行すんなって言ったろうがぁぁぁああ!」
「あっユウキ! 助けてにゃー!」




