表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/111

第三十六話:護衛任務

「あなたたちがこのフランシス=シャルル=ド=レスポワール=プレネンシスの依頼を受けた光栄な者達ですのね!? わたくし、感動ですわ!」


 おーっほっほっほ! と相変わらずの高笑いをしながら、言葉を紡ぐフラン(以下略)。

 ニャッフルはそんなフランを見ると、率直な意見を述べた。


「ふにゃー……おねーさんすごいにゃ。キラッキラしてるにゃ」


 ニャッフルはすんすんと鼻を鳴らして香水の匂いを嗅ぎながら、フランへと言葉を紡ぐ。

 フランはニャッフルの存在に気付くと、速攻で抱きしめた。


「まあ、かわいい! セバスチャン! わたくしこの子をペットにしますわ! 今決めました!」

「承知致しました、お嬢様」


 フランの声に反応し、いつのまにかタキシードに身を包んだ白髪初老の男性が、うやうやしく頭を下げる。

 祐樹はがっくりと落としていた肩を上げると、フランからニャッフルを取り上げた。


「スタァァァップ! うちの仲間を勝手にペットにしないでくれる!? アオイ! ちょっとニャッフル持ってろ!」


 祐樹の言葉に反応し、「あ、はい!」と返事を返し、ニャッフルを抱きかかえるアオイ。

 ニャッフルは状況の変化に付いて来れていないのか、ぽかんと口を開けていた。


「まあ、ダメですの? では、条件を与えましょう。わたくしの名前を全て言えれば、勘弁して差し上げますわ」


 フランは「まあ一度聞いただけでは無理でしょうけど」と言葉を続け、再び高笑いをする。

 祐樹はため息を吐きながら、間髪入れず言葉を返した。


「フランシス=シャルル=ド=レスポワール=プレネンシスだろ」

「即答!? あ、あなた、何者ですの!?」


 まさか答えられると思っていなかったフランは、ぽかんと口を開けて驚く。

 祐樹は再びため息を落とすと、言葉を続けた。


「全モンスターのステータス覚えてんだぞ? 名前くらい余裕だっつの」


 祐樹は腕を組むと、フランと真っ向から対峙し、言葉を紡ぐ。

 フランは悔しそうに頬を膨らませると、言葉を続けた。


「むぅぅ……まあ、いいですわ! 記憶力の良い男として、覚えておいて差し上げます! 感謝なさって! さあ!」


 フランは当然のようにくるりと一回転すると、意味不明なポーズをとってみせる。

 どうやら自分に対して感謝しろという意味らしい。


「あー、はいはい。ありがとうござーい」

「てきとう!? こ、こんな無礼初めてですわ!」


 フランはてきとうな感謝をする祐樹に対し、頬をぷくーっと膨らませる。

 しかしそんなフランに、執事がなにやら耳打ちすると、表情を変え、さらに言葉を続けた。


「そうですわ! あなた達はわたくしの護衛任務を受けた。そうでしたわね!?」

「ああ、そうだよ。不本意ながらな」


 祐樹は既に疲れた様子で、フランへと返事を返す。

 フランはそんな祐樹の様子など気にもせず、「うんうん、そう喜ばずとも良いですわ。当然ですもの」と言葉を紡いだ。

 そんなフランの様子を見ていたレオナは、不思議そうに首を傾げ、言葉を返した。


「ねえ。護衛任務って事は、あなた誰かに狙われてるの?」

「あ、馬鹿! レオナ! その質問は―――」

「よくぞ聞いてくれましたわ! 今回の依頼の内容、それを説明しますわね!」


 フランは再び一回転して別のポーズを決めると、レオナへと言葉を返す。

 祐樹はまだ依頼放棄するチャンスを伺っていただけに、あちゃーと頭を抱えた。


「わたくし、一度でいいからモンスターというものに出会ってみたいんですの! それも、超強い者に限りますわ!」

「……は?」


 フランの言葉を受けたレオナは、訝しげな視線を送り、首を傾げる。

 祐樹はそんな二人の様子を気にもせず、片手を目の上に当て、あちゃーと天井を仰いだ。


「と、いうわけで、早速モンスターの住処に乗り込みますわよ! 付いて来なさい、皆の者!」


 フランは踵を返すと、そのまま早足でギルドを飛び出していく。

 祐樹はそんなフランの様子を見ると、全員へ声をかけた。


「!? やばい、あいつが先行したら速攻で死ぬぞ! みんな、追いかけよう!」

「あ、は、はい! 師匠!」

「なんだかわかんないけど、わかったにゃ!」

「あーもう、何がなんだか……」


 祐樹の言葉に反応した三人は、三様の反応を返しつつ、祐樹の後ろを追いかけた。





「と、いうわけで、到着ですわね! ここがモンスターの巣窟ですわ!」


 フランはシーサンセット近くの古代遺跡の入り口で、腰に両手を当てて言葉を紡ぐ。

 追いかけてきた祐樹たちは、それぞれ息を切らせながら言葉を返した。


「ぜえっぜえっ……そ、それはいいけど、あんた本気? モンスターは危険なのよ?」


 レオナは両手で膝に手を当て、屈んだ状態で言葉を紡ぐ。

 フランはそんなレオナに対し、頭に疑問符を浮かべて返事を返した。


「あら、このわたくしに会えるんですのよ? モンスターさんも光栄なのではなくって?」

「うわあ、だめにゃこの人。だめな人にゃ」

「ニャッフルにまで言われるとは……あのお嬢さん、ある意味恐るべし」


 祐樹はニャッフルにまで見放されるフランの姿を見て、率直な意見を述べる。

 アオイはあわあわとしながら、フランへと声をかけた。


「み、皆さん、依頼人さんに失礼ですよ! でも、モンスターは本当に危険なんです。できればこのまま、街に戻りませんか?」


 アオイは一歩前に出ると、フランと対峙し、意見を述べる。

 フランはアオイの言葉を受けると、アオイの姿をじろじろと観察し始めた。


「んー……」

「あ、あの、何か?」


 急にじろじろと見られたアオイは、動揺した様子でフランへと返事を返す。

 フランはアオイの言葉を受けると、返事を返した。


「決めましたわ! あなた騎士っぽいですし、わたくしの護衛隊長に任命しますわ!」

「全然聞いてない!? いえですから、危険なので帰りましょう!」


 アオイは全く話を聞いていない様子のフランに対し、さらに言葉を続ける。

 フランは無表情でアオイへと対峙し、言葉を返した。


「嫌ですわ」

「四文字!?」


 簡潔に断られたアオイは、ガーンという効果音と共に、地面に四つんばいにガクリと倒れる。

 祐樹は仕方なく、フランとアオイの間に割って入った。


「まあまあ、アオイの言う通りだぜ。どうせこの遺跡に入って、一番奥まで行こうってんだろ?」


 祐樹は遺跡の入り口の前に立つと、親指で入り口を指差し、フランへと言葉を紡ぐ。

 その言葉を受けたフランは、嬉しそうに顔を綻ばせた。


「まあ! 察しが良いですわね! さすがは記憶力の良い男ですわ!」

「記憶力関係なくね!? いやだから、それをやめようって言ってんの!」

「やだ」

「二文字―!?」


 アオイよりも簡潔に片付けられた祐樹は、アオイと同じように四つんばいになる。

 どうやらどんな説得も、フランには無駄のようである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ