第三十二話:水着のお披露目
「と、いうわけで、水着になったのはいいが……遅いな、あいつら」
祐樹は借りた水着を着用すると、ビーチで他のメンバーを待つ。
しかし待てど暮らせど、メンバーはやってこなかった。
「ユウキー! ごめんにゃ。遅くなったにゃ!」
「ニャッフル! 遅かったな!」
駆け寄ってきたニャッフルは既に水着に着替えており、フリフリのついた胸元が可愛らしいピンク色のビキニで、ちょっと子どもっぽさはあるものの、ニャッフルには逆に良く似合っていた。
そして祐樹もその子どもらしさにほっと胸を撫で下ろし、笑顔で片手を挙げて声を返した。
「ニャッフル! あんた先に行くなって言ってんでしょ!?」
「お!? おお……」
ニャッフルの後を追ってきたであろうレオナは、同じくビキニの水着を着用しており、褐色の肌に赤い色が良く合っている。
胸は正直言って大きくないものの、スレンダーで全体のバランスは良く、祐樹を動揺させるには充分すぎるスタイルの良さだった。
「お、お、おう。遅かったな」
「ちょっと、なんであたしは露骨に目を逸らすわけ?」
明らかに視線を逸らしながら片手を挙げる祐樹に対し、訝しげな視線を向けるレオナ。
その視界の中に入ろうとサイドステップを踏むが、祐樹はその度に視線を逸らす。
やがてレオナは諦めたようにため息を吐くと、言葉を紡いだ。
「なんだかわかんないけどあんた、水着の女の子が苦手なの? そんなんじゃ持たないわよ」
「え、な、何がだよ……」
祐樹は視線を逸らしながら、レオナへと言葉を返す。
レオナは再びため息を落とし、「ま、すぐわかるわ」と言葉を紡いだ。
「あ、あの、師匠。着替えてきたのですが……私、変では無いでしょうか?」
「ぶおおおおおおお!?」
今祐樹の視界の前には、水着を着用したアオイがいる。
普段は重厚な鎧に守られている白い肌に、同じく白いビキニの水着が良く映える。胸は申し分なく大きく、その姿はまるで、女神を思わせるように美しい。
三者三様の美しさではあるが、三人はビーチの視線を独り占めしていた。
「ぶお!? や、やはり変ですか。すぐに着替えてきます!」
「い、いや待てアオイ! 変じゃない! 変じゃないから! むしろ俺が変だから!」
「???」
意味不明な言葉を紡ぐ祐樹に対し、胸元に手を当て、不思議そうに首を傾げるアオイ。
そしてそんな祐樹の尻を、レオナが思い切り蹴飛ばした。
「いたひ!? いきなり何するですか!?」
「とにかく、落ち着きなさいよ。目立ちすぎよあんた」
レオナは周囲からの視線に気を配り、祐樹へと言葉を紡ぐ。
視線のほとんどはアオイ達に向けられたものなのだが、ともかく祐樹は、尻をさすりながら言葉を返した。
「わ、悪い。ちょっと精神がどうかしてた。とりあえず、座る場所を確保しようぜ」
祐樹はどうにか冷静さを取り戻すと、レオナへと言葉を返す。
しかしその瞬間、いつのまにか遠くへと行っていたニャッフルから声をかけられた。
「おーい! こっちのパラソルが空いてるにゃ! ここに集まるにゃ!」
「すでに場所確保!? 素早いなニャッフル!」
突然の出来事に祐樹は動揺し、言葉をニャッフルへと返す。
ニャッフルはそれを褒め言葉と受け取り、えっへんと胸を張っていた。
それにしても―――
『アオイのやつ、マジでけしからんな。ううぐ……』
祐樹はチラチラとアオイの胸元を見ると、顔を赤く染めていく。
正直言って思春期の青少年には刺激が強すぎる代物だった。
「??? あの、師匠。やはりどこか変でしょうか?」
「ふぇ!? い、いいいいや、変じゃねえよ! よく似合ってる!」
祐樹はアオイの言葉に動揺しながらも、かろうじて言葉を返した。
アオイはその言葉を受けると、嬉しそうに笑顔を浮かべた。
「そうですか! よかったぁ……」
「は、ははは……」
祐樹はボリボリと頭を搔き、アオイへと向き直る。
どうやらなんとか、アオイの水着姿にも慣れてきたようだ。
そしてそんな祐樹の尻に、再びレオナの蹴りがヒットする。
「いたひ!?」
「ほら、さっさと行くわよ。熱射病になりたいの?」
「だからなんでいちいち蹴るんだよお前は!? 何なの!? 肉体言語なの!?」
祐樹はいちいち蹴ってくるレオナに対し、文句を返す。
レオナはフンと鼻息荒くしながら、どこか怒ったようにパラソルへと歩みを進めた。
「いてて……くそ、まあいいや。とりあえず行くぞ、アオイ」
「あ、はい! 師匠!」
何故か怪獣のように怒りながら歩いていくレオナの後ろを、不思議そうに追いかける祐樹。
そんな祐樹の後を、アオイは楽しそうに追いかけた。