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第二十九話:対マザーオーク戦

「…………ぴっ」


 祐樹はオークの巨大なその姿を見ると、思わず変な声を出す。

 しかしオークはそんな祐樹達に構うことなく、再び雄叫びを上げた。


『ブヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!』

「アオイ! ニャッフル! レオナ! 隊列組み直して! ハリー!」


 祐樹は後方に下がると、急いで三人へと指示を出す。

 三人はそれぞれ返事を返し、隊列を組み直した。


『ブヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!』

「斧の縦切りだアオイ! 回避して、その隙にニャッフルが攻撃!」

「「はい!(にゃ)」」


 アオイとニャッフルは祐樹の指示通りに動き、オークへとダメージを与える。

 それ以降は同じように祐樹が指示を繰り返し、アオイとニャッフルがオークへとダメージを与えていった。


「あ、じゃああたしは、攻撃力アップの魔法を使うわね」

「レオナはそこで待機しててください! お願いだから!」

「何よ! あたしだって戦えるわよ!」

「戦えないわよ!? 回復できないヒーラーって、戦えないわよ!?」


 声を荒げるレオナに対し、何故かオネエ口調で返事を返す祐樹。

 レオナはしばし考えると、核心を突かれたのに気付いたのか、「ちっ……わかったわよ」と返事を返した。


「ユウキ! こいつ、手強いにゃ! ダメージは入ってるけど、時間がかかりすぎるにゃ!」


 ニャッフルは戦いながら、オークにダメージの色が薄いことに気付き、祐樹へと報告する。

 祐樹はその言葉を受けると、何かを考えるように、曲げた人差し指を顎の下に当てた。


「ちっ! すぐ倒すにはまだ、レベルが足りなかったか……はっ!」

「どうかしたかにゃ?」


 突然何かに気付いたように顔を上げる祐樹に対し、頭に疑問符を浮かべて首を傾げるニャッフル。

 祐樹は「ふっふっふ」と呟くと、やがて言葉を返した。


「わかった。わかってしまったよニャッフルくん。レオナの活用法が!」

「ほんとかにゃ!? それは助かるにゃ!」


 ニャッフルはぱぁぁと明るい笑顔になり、祐樹へと言葉を返す。

 祐樹は満足そうにその笑顔を見ると、やがて言葉を続けた。


「うむ。この金田一祐樹の助、わかってしまったよ。レオナ! オークにヒールをかけてくれ!」

「!? な、なるほどだにゃ!」


 ニャッフルはぽんと両手を合わせ、祐樹の言葉の真意を理解する。

 確かにヒールと逆効果を及ぼすレオナの魔法を、敵に放つのは理に適っている。

 祐樹は自信満々で、レオナへと指示を出した。


「わかったわ! じゃあちょっと、時間稼いで!」

「がってんにゃ!」


 レオナの言葉を受けたニャッフルは、アオイと共にオークと交戦し、時間を稼ぐ。

 そして数十秒後、レオナから再び、声がかかった。


「準備できたわ! 二人とも、下がって!」


 レオナは杖の先端をオークの方角へと向け、アオイとニャッフルへと言葉を紡ぐ。

 二人はその言葉を受けると、無言のまま後退した。


「はぁぁぁ……ヒール!」


 レオナは杖を掲げ、オークに対してヒールをかける。

 その瞬間、オークの体力は全回復し、元気よく雄叫びを上げた。


『ブヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!』

「し、師匠、一体何が!? オークめっちゃ元気です!」

「お、おおおお、落ち着けアオイ! 口調が混乱してるぞ!」


 祐樹はガクガクと震える膝を抑え、かろうじてアオイへと返事を返す。

 祐樹も十分困惑していた。


「ああもうやだぁ! 何なのこのヒーラー! 斬新にもほどがあるよ!」


 祐樹は言葉を乱し、バタバタとその場で駄々をこねる。

 アオイとニャッフルはそんな祐樹を、額に大粒の汗を流して見つめた。


「し、師匠。駄々をこねても仕方ないですよ」

「にゃ」


 アオイの言葉に同調し、こくこくと頷くニャッフル。

 祐樹はそんな二人を、涙目で見上げた。


「君ら本当大人ね!? 俺自分が嫌いになりそうだよ! 元から嫌いだけども!」


 祐樹は気を取り直して立ち上がると、ことのほか冷静なアオイとニャッフルに対して言葉を紡ぐ。

 レオナは意外と素直に「ごめんなさい!」と頭を下げていた。

 そして祐樹の脳は再び、高速回転を始める。


『どうする。どうするどうするどうするよ。このままじゃジリ貧だし、かといってレオナはファンタジスタだし、ていうかレオナのレベルも是非上げておきたいし……』


 しかし、頭を回転させる祐樹に構わず、オークは大きく斧を振り上げる。

 その斧は、祐樹の頭へと勢いよく振り下された。


『ブヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!』

「!? 師匠、危ない!」

「うーん……」


 アオイの叫びに反応せず、相変わらず考え事をする祐樹。

 オークは勝利を確信し、高笑いを始めた。


『ブヒブヒ、ブヒヒヒヒヒヒヒイ!』


 オークは口の端を醜く吊り上げ、勝利を確信して、笑う。

 しかし次の瞬間その顎に、祐樹の拳がめり込んでいた。


「つうかさっきから、ブヒブヒうるせえなこの野郎がぁ!」

『ブヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!?』


 オークは祐樹のアッパーカットを受けると、そのまま洞窟の天井に突き刺さり、やがて動かなくなった。

 まさに、完全勝利である。……祐樹の。


「あ!? やっべえ! マザーオーク倒しちゃった!」


 祐樹は我に帰ると、突き刺さったマザーオークを見つめ、頭を抱える。

 祐樹の「貴重な経験値があああああああ!」という叫びをよそに、レオナはマイペースに、洞窟の奥へと進んでいった。


「あ、薬草あったわ! みんな、本当にありがとう!」


 レオナはいつのまにか薬草を大量収拾すると、ぺこりと頭を下げる。

 アオイはそんなレオナに対し、慌てて言葉を紡いだ。


「あ、いえいえ! お礼なら是非師匠に! ねえ師匠!?」

「どうする? このままじゃマジでパーティ入りだぞ。いやしかしもはや回避不可能だし、いやでも……」

「ユウキ、全然聞いてないにゃ」


 ニャッフルは一人の世界にトリップする祐樹を見つめ、言葉を紡ぐ。

 アオイはそんな祐樹の肩を、がっしりと掴んで前後に揺さぶった。


「師匠! お気を確かに! オークはもう倒しましたよ!?」

「お、おおおお、おちつけ、アオイ。揺さぶるな」


 祐樹は前後に激しく揺れながら、アオイへと言葉を紡ぐ。

 アオイはハッと我に帰ると、その両手を祐樹の肩から手放した。


「も、申し訳ありません、師匠。失礼しました」

「ああ、いや、大丈夫よ。むしろ失礼しちゃったのは俺の方だし」

「???」


 アオイは祐樹の言葉の意味がわからず、頭に疑問符を浮かべる。

 祐樹はやがて腕を組むと、うーんと考え始めた。


「あーあ……これでもう、仲間確定かぁ。これからどうすっかなぁ」

「「「???」」」


 意味不明な言葉を紡ぐ祐樹に対し、三人はそれぞれの頭の上に、疑問符を浮かべる。

 こうして薬草収集作戦は、勇者ご一行の成功に終わったのだった。


「うーん……これからどうしよ」


 一人の悩める、青年を除いて。


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