第十六話:ギルドへ報告に行こう
「聞いてますか師匠!? 私達、でっかいスライムを倒したんです!」
「こんな、こぉーんなでっかいやつだったにゃ!」
森からの帰り道、アオイは必死で自分たちの成果を伝えようと、言葉を紡ぐ。
ニャッフルも同じく、大げさなボディランゲージを交えながら、必死で言葉を紡いでいた。
「おう。信じるよ。強いんだな、二人とも」
「えっ!? は、はい……」
「そ、そうにゃ。強いんだにゃ」
てっきり疑ってくると思っていた二人は、ポカンとした様子で、祐樹の言葉に返事を返す。
祐樹はその様子がおかしくて、思わず少し笑った。
「あっ!? 師匠、やっぱり信じてませんね!?」
「ほんとかにゃユウキ!? 嘘じゃないにゃ!」
「ご、ごめん! わかってる! わかってるって!」
そんな問答を繰り返しながら、王都へと帰っていく三人。
祐樹が二人の言葉を信じていることに二人が納得してくれたのは、ギルドの前に到着した頃だった……
「いやー、ドキドキするにゃー。一体いくら貰えるのかにゃあ?」
ギルドに入ったニャッフルは、胸を両手で押さえ、嬉しそうに歩く。
そのしっぽはぴこぴこと跳ねるように動き、本当に嬉しそうだ。
「ふふっ。そうですね。私も楽しみです。ね、師匠?」
「おう! そうだな!」
実は祐樹はすでに暗算していて、貰える金額もわかっているのだが、二人の勝利があまりに嬉しくて、満面の笑顔で言葉を返す。
その笑顔を見たアオイは、一瞬ポカンと、口を開けた。
「ん? アオイ、どうかしたか?」
「ひあ!? い、いえ、なんでもないでしゅ!」
「???」
アオイのおかしい様子に、頭に疑問符を浮かべる祐樹。
アオイは頬を赤く染め、祐樹から顔を背けた。
そして三人は、ギルドの受付へとたどり着く。
「ああ……お前らか。お手柄だったな。今回の報酬だ」
ギルドの受付は相変わらず無愛想な様子で、札束をどんとカウンターに置く。
その瞬間、ギルド内では、ざわめきが起こった。
「ひー……ふー……おっしゃ、計算通り! 二人とも、賞金28万ボルドもらえたぞ!」
祐樹は札束の枚数を数えると、二人に向かって報告する。
二人はしばしポカンとするが、やがてお互いの両手を合わせてぴょんぴょんと飛び跳ねた。
「や、やったやった! 28万ボルドって、28万ボルドですよ!? やりましたねニャッフルちゃん!」
「おうにゃ! やってやったにゃ! 28万といえば、ご飯がえーっと……よくわかんないけど沢山食べれるにゃ!」
一般的な定食屋の定食が500ボルド。普通の宿屋に宿泊するのに一部屋1000ボルドのため、28万ボルドがいかに高額かがわかる。
もっとも終盤になれば、もっともっと高額になっていくのだが、それはまだ先の話だろう。
「これだけあれば、二人の装備も充実させられるな……よぉし、早速買い物だ!」
「「おー!」」
祐樹は札束を天に掲げ、嬉しそうに言葉を紡ぐ。
二人はそんな祐樹の言葉に対し、合わさった呼吸で返事を返した。
『しっかし、いきなり氷の究極魔法が使えたとは……マジでどうなってんだ? 俺のステータス』
祐樹は喜びながらも、自らの実力に疑問を感じ、頭の片隅で考える。
しかし、今はとにかく、仲間とこの喜びを分かち合おう。
そう思った祐樹は、札束を乱雑にポケットに突っ込むと、ギルドの扉へと歩いていった。
―――こうして、初めてのギルドの仕事は、ひとまず成功に終わった。
しかしこの物語は、まだ始まったばかり。
三人の冒険は、これからまだまだ続いていくのだ。