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第十二話:いざ、初任務へ

「……と、いうわけで、ここが冒険者ギルドだな」


 祐樹は冒険者ギルドの前まで二人を連れていくと、右手で冒険者ギルドの看板を指し示す。

 二人はおおーっと拍手して、祐樹を称えた。


「さすが師匠! 師匠についていったら、ここまで最短ルートで来られた気がします!」

「ユウキ、すごいにゃっ!」


 二人の賞賛に対し、頬を赤く染め、“いやいや~”と頭を掻く祐樹。

 さすがは元ぼっちゲーマー。褒められ慣れていなさでは、右に出る者はいない。


「じゃあ、さっそく中に入り……ハッ!」

「??? どうしました、師匠?」


 早速ギルドの扉を開けようとする祐樹だったが、ここで一つのミニイベントが存在していたことを思い出す。

 確か攻略本では、早い段階でギルドに入ってしまうと、柄の悪い冒険者に絡まれ、雑魚戦闘が始まる、とあった。しかも物語の本筋とは全く関係なく、消化する必要もないイベントだ。


「……うん、やっぱりちょっと待とうか」

「突然の心変わり!? 一体何を待つのにゃ!?」


 祐樹の豹変した態度に驚き、思わずツッコミを入れるニャッフル。

 しかし祐樹の意思は頑なで、真剣な表情で二人を見つめた。


「いいから、ここは俺を信じて少し待ってくれ。あと五分くらい……かな」


 祐樹は脳をフル回転させ、攻略本の内容を思い出す。

 確か、宿屋を出てから数十分程度時間が経ってから行くと、既にそのイベントは他の冒険者が犠牲……もといおとりとなって、既に終了した後でギルドの依頼を受領できたはずだ。


「は、はあ。わかりました。師匠がそうおっしゃるなら……」

「よくわからん奴だにゃ~。さっさと入りたいのにゃ」


 アオイは胸元に手を当て、不思議そうにしながらも、祐樹の言葉に従う。

 ニャッフルは少し退屈そうに頭の後ろで手を組み、足をぶらぶらさせた。

 そして、次の瞬間……


『ぎゃあああああああああああああああ!!』

「きゃあっ!?」


 ギルドの窓から、一人の冒険者が吹っ飛ばされて飛び出してくる。

 当然ガラスは割れて散乱し、その冒険者も怪我を負っているようだ。


「……よし、終わったな。じゃあ入ろうか」


 祐樹は横目でその冒険者を確認すると、そのままドアノブへと手を伸ばす。

 しかしその手を、モフモフとした手が掴んだ。


「いやちょっと待つにゃ! ここ本当にギルドにゃ!? 闘技場じゃないのかにゃ!?」

「大丈夫だ、問題ない。ただの冒険者ギルドさ。ちょっと血の気が余ってる人が暴れちゃったんじゃないかな?」

「余りすぎだにゃ!」


 祐樹の言葉に対し、的確なツッコミを入れるニャッフル。

 やがて祐樹は一つのアイディアを思いつくと、倒れている冒険者へと近づいていった。


「ごめんな。ここに回復薬置いておきますね」


 祐樹はポケットから回復薬の入った小瓶を取り出すと、倒れている冒険者の横に置く。

 近くで見ると良くわかるが、冒険者の傷は意外と軽傷で、これなら回復薬一つで事足りるだろう。


「あ、ああ、すまない。ありがとう???」


 冒険者は不思議そうにその小瓶を受け取ると、祐樹へと返事を返す。

 祐樹は“いえいえ、こちらこそありがとう”と返事を返すと、今度は即座に冒険者ギルドへと入った。


「あ!? ちょ、ちょっと待つにゃ! ニャッフルも行くのにゃ!」

「わ、私も行きます!」


 祐樹の後に続いて、ニャッフルとアオイもギルドの中へと駆け出していく。

 そうして三人は、生まれて初めての冒険者ギルドに足を踏み入れた。




 冒険者ギルドの中には、穏やかそうな魔術師から強面の傭兵まで、ありとあらゆる種類の冒険者がひしめき合っていた。

 そんな中、祐樹は迷わず、冒険者ギルドの受付へと歩いていく。


「えっと……この三人で依頼を受けたいんだけど、いいのあるかな?」


 祐樹に話しかけられた中年の受付人は、祐樹たち三人を見つめると、無言で手元の冊子を取り出す。

 そこには“初めての冒険者ギルドマニュアル”と書いてあった。


「依頼を受けたいなら、まずそれを読みな」

「あ、はい」


 祐樹は言われるがまま、そのマニュアルを一部受け取る。

 正直こんなマニュアルの内容などとっくに頭に入っているのだが、ストーリーの性質上避けて通れないので仕方がない。いわゆるチュートリアルというやつである。


「じゃあ、えっと、二人でこの冊子読んでおいてもらえるかな? 俺はここでぼーっとしてるから」

「いや、どういう役割分担にゃ!? ユウキは読まないのかにゃ!?」


 ニャッフルはショックを受けた様子で、祐樹へと言葉を紡ぐ。

 祐樹はちょっと面倒くさそうな表情で、言葉を返した。


「あー、うん。俺はギルドの経験あるから、お二人でどうぞ」

「そ、そうかにゃ。それじゃ、二人で読むにゃ、アオイ」


 ニャッフルは祐樹から冊子を受け取ると、背後に立っていたアオイへと話しかける。

 そのまま二人は壁に寄り掛かると、仲良く二人で冊子を読み始めた。


『ああ……周回する度にこのイベント発生するから、マジで面倒くさかったんだよなぁ。マジで何度スキップ機能が欲しいと思った事か』


 祐樹は現世での思い出を振り返り、しみじみと腕を組んで頷く。

 やがて二人は、同時に両手を天に突き上げた。


「「読んだ―!(にゃ)」」

「お、読み終わったか。どう、内容わかった?」


 祐樹は二人に近づくと、そのまま言葉を紡ぐ。

 アオイは少し嬉しそうに、祐樹へと返事を返した。


「はいっ! ええと、ギルドには依頼者から依頼を受ける“依頼受領”と、指名手配モンスターを倒す“討伐任務”の二種類があるそうです。討伐任務の方は特にギルドに申請は必要なく、そのモンスターを倒したら報告して、報酬を貰えば良いみたいですね」


 アオイはマニュアルに書いてあった内容を、簡潔に祐樹へと説明する。

 祐樹は満足そうに頷くと、ニッコリと微笑んだ。


「うっし、その通りだ! 完璧だぜ、アオイ!」


 祐樹は親指をぐっと立て、アオイへと言葉を紡ぐ。

 アオイはそんな祐樹の言葉を受けると、満面の笑顔となって言葉を返した。


「は、はい、師匠! ありがとうございます!」


 頭を下げるアオイだったが、その横のニャッフルは少し不満そうに、祐樹へと言葉を紡いだ。


「にゃー! ニャッフルだって理解したにゃ! ニャッフルも褒めるにゃ!」


 ニャッフルは両手をばたばたと動かし、祐樹へとアピールする。

 祐樹は無言のまま手を伸ばすと、そのままニャッフルの頭をナデナデした。


「うんうん。ニャッフルもよくやったな」

「おふ……やはりテクニシャンヌ……」


 ニャッフルは目を細め、嬉しそうに喉を鳴らす。

 その様子を見ていたアオイは、一度ごくりと喉を鳴らすと、真っ赤になった顔で、祐樹へと言葉を紡いだ。


「あ、あ、あの、師匠。出来れば私にも、ナデナデ―――」

「マニュアルは読み終わったか? じゃあ、これがお前らの初任務だ」


 アオイの言葉を遮るように、ギルドの受付が言葉を紡ぎ、任務内容の書かれた紙を祐樹へと突き出す。

 祐樹は「あ、ああ」と返事を返しながら、その紙を受け取った。


「えー、何々、町周辺のスライム20体討伐……か。楽勝だな」


 祐樹はその紙に書かれた内容を読み上げると、小さくため息を落とす。

 もっとも、その依頼を受けることになるのも、事前に知っていたわけだが、退屈な任務であることに変わりはなかった。


「にゃっ! 初任務にゃ! はりきっていくにゃ!」

「だぁぁ! いきなり乗っかるなっての!」


 ニャッフルは祐樹の背中に乗っかると、その紙を覗き込み、満面の笑顔で、やー! と拳を天に突き上げる。

 祐樹はニャッフルを引っぺがすと、ギルドを出ようと一歩を踏み出した。


「じゃ、行くかアオイ……アオイ?」

「ふぇ!? な、なんでもないですじゃ!」

「???」


 祐樹の言葉を受けたアオイは、真っ赤な顔のまま、ぶんぶんと顔を横に振る。

 祐樹は頭に疑問符を浮かべ、不思議そうに首を傾げた。


「とにかく行くにゃ! やー! とつげきー!」

「あ!? こら勝手に行くな! 追うぞ、アオイ!」

「あ、は、はい! 師匠!」


 ドドドドと走り去るニャッフルを、追いかける祐樹とアオイ。

 そうしてそのまま、王都の外へと飛び出していった。


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