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第十一話:冒険者ギルドへ行こう

「えーっと……つまりニャッフルちゃんは、大物になるために里を出て、私たちの旅に同行したいと、そういうことですか?」


 ここは、王都の宿屋の一室。一連の酒場騒動から一夜明け、朝日が街を照らし出した頃、現状を整理するため、三人は一つの部屋に集まっていた。

 そんな中、ニャッフルの事情を説明されたアオイはその情報を整理し、祐樹へと言葉を紡いだ。


「ああ、その通りだ」

「にゃ」


 祐樹の言葉に呼応するように、ベッドの上であぐらをかいているニャッフルは、こくこくと頷く。

 アオイは何かを耐えるような複雑な表情で、更に言葉を続けた。


「つまり、旅の仲間が増えるということなのですね……しかし、大丈夫でしょうか。これは魔王討伐の旅、とても危険な旅になります」


 アオイは真剣な表情で、祐樹へと言葉を紡ぐ。

 確かにアオイの言うとおり、危険な旅であることに間違いはない。言っていることは全て正しい。


「ああ、まあ、大丈夫だろう。こいつはこいつで、結構強いんだぜ?」

「にゃ」


 ニャッフルは祐樹の言葉に呼応し、再びこくこくと頷く。

 その言葉を受けた祐樹は、さらに言葉を続けた。


「ニャッフル。いちいちにゃって言わなくていいから。俺の語尾みてーになってるじゃねーか。あと、アオイ……」

「はい? なんですか師匠」


 名前を呼ばれたアオイは、不思議そうに小首を傾げながら、祐樹へと言葉を返す。

 祐樹は小さくため息を吐きながら、言葉を続けた。


「そんなにニャッフルをモフりたいなら、モフってもいいぞ? ……あー、つまり、触って良いぞ」

「えっ!? そ、そそそそ、そんな、そんなことないですじゃ!」


 アオイは慌てた様子で、祐樹の言葉に反論する。

 しかし、結果は噛み噛みだった。


「いや、そのわきわきした両手が全てを物語ってるから。無理しなくていいから」


 実はアオイは話を始めた頃からずっとそわそわし始め、ニャッフルの耳としっぽをチラチラ見ると、両手をわきわきさせていた。

 そんなアオイの感情など、誰の目にも明らかである。


「いいんですか師匠!? ありがとうございます!」


 アオイは満面の笑顔となり、祐樹へと言葉を紡ぐ。

 ニャッフルはその言葉を聴くと、即座に反応した。


「にゃっ!? こらユウキ! 勝手に許可を出すにゃ!」


 ニャッフルはしっぽをピンっと立てると、祐樹へと声を荒げる。

 しかし祐樹は取り乱した様子も無く、言葉を返した。


「でも、別に触ってもいいんだろ?」

「…………まあ、別に構わないにゃ」


 ニャッフルは己の心中を読まれた事が納得いかない様子ながらも、祐樹へと返事を返す。

 それを聞いたアオイは、早速ニャッフルへと飛びついた。


「やったぁ! 私、実家でも猫が飼えなくて、実はずっと飼ってみたかったんです!」

「ほーそうか。そりゃよかったなぁ」


 アオイはニャッフルに飛びつくと、その顔を胸の谷間に埋め、頭を万遍なくナデナデする。

 祐樹は微笑ましく笑いながら、アオイへと返事を返した。


「ふにゃ……そんな無造作に触るにゃ。でも、良い匂いにゃ……」


 撫でられているニャッフルも満更でもないのか、気持ちよさそうに喉を鳴らしている。

 どうやらアオイも猫好きなだけあって、猫のツボを心得ているようだ。


「ふむ。親睦は深まったみたいだし、そろそろ次の目的地に行かないとな」


 祐樹は腕を組むと、ふやけた笑いをしながらニャッフルを撫でているアオイへと言葉を紡ぐ。

 しばらくその言葉に気付かないアオイだったが、やがて真剣な表情になると、ニャッフルを抱きしめたまま、言葉を続けた。


「次の目的地……ですか。えっと、それは具体的にどこでしょう?」


 アオイは頭の上に疑問符を浮かべ、首を傾げながら祐樹へと言葉を紡ぐ。

 祐樹は間髪入れず、ツッコミを入れた。


「バカン! 王様から“冒険者ギルド”に行くように言われてるでしょうが!」

「あっ!? そ、そうでした!」


 アオイはニャッフルを離すと、正座した状態で祐樹の方へと向き直り、言葉を返す。

 冒険者ギルドとはその名の通り、冒険者の為に作られたギルドである。

一般的には、商人や旅人からの依頼をギルドが管理し、それを請け負った冒険者が依頼を達成して報酬を貰う。というシステムだ。

 兵士などが存在する王都だが、まだまだ治安が完全に良いとは言えず、街の外にはモンスターの脅威もある。

 そういった状況下で起こるトラブルを一手に引き受けているのが、冒険者ギルドなのだ。


「すみません師匠。あまりの毛並みに我を忘れました」

「許す! それは激しく同意!」


 祐樹はアオイの言葉に同意し、うんうんと頷く。

 ニャッフルの毛並みはかなり良く、猫好きなら我を忘れてしまうのも仕方ない。祐樹は怒ることも忘れ、一瞬にして納得した。


「……あれ? でもそういえば、何故師匠がその事をご存じなのでしょう?」


 アオイは一抹の違和感を覚えると、不思議そうに首を傾げる。

 祐樹は心臓が跳ねあがり、咄嗟に言葉を返した。


「えっ!? それは、えーっと…………師匠としての勘だ! 冒険するにも路銀は必要なんだから、冒険者ギルドに行くのは必然だろ?」

「なるほど! さすがは師匠です!」


 アオイはふんすと鼻息を荒くしながら、ぐっと右手を握り締め、祐樹の目をじっと見つめる。

 その綺麗な蒼い瞳に一瞬魅入られる祐樹だったが、やがて視線を逸らすと、立ち上がった。


「そ、それより、そうと決まればさっさと向かおうぜ。冒険者ギルドへ」

「はいっ! 師匠!」

「おーっ! がんばるにゃ!」


 両手をぐっと握りしめ、同じように立ち上がるアオイと、ぴょーんと飛び跳ねて着地しつつ、右手を突き上げるニャッフル。

 こうして三人は宿屋での精算を済ませ、冒険者ギルドへと向かった。


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