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最終話:ゼロから始まる物語

「ん……ここ、は?」


 祐樹はハッと顔を上げ、目の前の光景を確かめる。

 そこには見慣れたテレビが鎮座し、その画面では、裏ボスを倒した時にしか流れないというスタッフロールが、上から下へと流れていた。


「は、はは。帰ってきたんだな、俺……」


 祐樹はコントローラーを持ちながら、ゆっくりと肩の力を抜く。

 そうして目を瞑ると……旅の思い出が、次々と蘇ってきた。



『どこだこりゃあああああああああああああああああああああああああああああ!?』



『師匠と呼ばせて下さい!! 師匠!!』



『にゃーっはっはっはっは! 正義の味方! 獣人族の若き雌豹! このニャッフル=パンチャー様がいれば、もう安心にゃ!』



『悪いな……こいつら今日、頑張ったんだ。だから寝かせてやってくんねーか』



『ば、ばかにゃ! ばかユウキ! おまえはばかにゃ!』



『えっ!? い、いえいえ、めっそうもない! こんなネックレス、私には似合いません!』



『あっこらニャッフル! 一人で先行するんじゃねえ! 追うぞ、アオイ!』



『ちゃんとした自己紹介がまだだったわね。あたしの名前はレオナ=ウィンロード。見た通りダークエルフで、“ヒーラー”をやっているわ』



『おーっほっほっほっ! どうやら、このわたくしの依頼を受けた者が出たようですわね!』



『はにゃー……大陸を繋ぐ橋かにゃ。おっきいんだろうにゃあ』



『杖に認められたって……どういうことよ? 確かに、杖の形状は変化してるみたいだけど……』



『だーかーら。あたしがデートしてあげるって言ってるの。何度も言わせないで』



『よぉし、これで二人一組でやるゲームでも勝てる! 全財産賭けるぞアオイ、財布出せ!』



『アタシか? アタシはフレイ=ストライカーってんだ。よろしくな!』



『アタシと、一日デートしてくんねーか?』



『だっ、だから、スイーツだよ! 甘いもん食いに行こうぜって言ってんの!』



『ああ。お前らにはここで……俺と戦ってもらう』



『王都が、モンスターの大群に襲われているんです。今はまだ持ちこたえていますが、いつまでもつか……』



『それに、お前は一人じゃねえ。俺たちだって、一緒に戦うんだ。距離が離れてたって、その事実は変わらねえよ』



『……さすがに、やるねえ。ウィザードナイト。お前には結構苦労させられたっけな』



『『豪波裂衝斬・双刃!』』



『今はこれが……精一杯。ここから先は……師匠の心配を全部、私がやっつけちゃった時です』



『やったにゃ! やったにゃ! ついに魔王を倒したにゃああああ!』



『シナリオの狂いに気付いた時から、こうなる予感がしてたぜ。グラディスの裏ボス…………ルシファー!』



『馬鹿な……そんな、そんな馬鹿なぁあああああああああああああ!』



『ししょおおおおおおおおおおおおおおおおおお!』



 祐樹の持つコントローラに、数滴の涙が零れる。

 祐樹はその事態に驚き、笑いながら言葉を紡いだ。


「あ、あれ? なんで俺、泣いてんだろ……」


 祐樹はぐしぐしと右腕で涙を拭い、鼻水をすする。

 しかし涙は留まることを知らず、祐樹の瞳から溢れ続けた。


「っぐ。んだよ、これっ。とまんね……!」


 祐樹はもう顔をぐしゃぐしゃにして、ポロポロと涙を流す。

 これまでの旅の思い出、そして別れが、祐樹の涙を誘い続けていた。

 するとそんな祐樹に……横から綺麗なハンカチが、差し出される。


「はい、師匠。これで涙を拭いてください」

「ああ、ありがとうアオイ。……ん?」

「???」


 祐樹は差し出されたハンカチで涙を拭くと、隣で不思議そうに首を傾げているアオイへと視線を移す。

 そのまま部屋の全体を眺めると、次々と仲間達の姿が現れた。


「にゃー! この本面白いにゃ! 絵と文が一緒に書いてあるにゃ!」

「へえ、興味深いわね……」

「なんか腹減ったなー! ユウキぃ、飯おごってくれ、飯!」

「な、なんですの!? ここはどこですの!? ユウキ様!?」

「ええええええええええええ!? なんで君らここにいんのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」


 祐樹は思わず立ち上がり、コントローラを地面に落とす。

 アオイはそんなコントローラを拾うと、不思議そうに眺めていた。


「あ、いえ、実はあの後、また白い渦が現れまして……」

「吸い込まれてみたらここにいたってわけ……にしても散らかってるわね、掃除したら?」


 アオイとレオナは、何故か落ち着いた様子で言葉を紡ぐ。

 やがてニャッフル達も、それぞれ言葉を紡ぎ始めた。


「まあとにかく、これからもよろしくにゃ、ユウキ!」

「あっはっは! ま、なんとかならぁな!」

「ユウキ様! わたくしはどこまでもついていきますわ!」

「あ、あは、あはははは……ふぉっ!?」


 引きつった笑顔を浮かべる祐樹の頬に、突然柔らかい感触が触れる。

 その方角を見ると、アオイが顔を真っ赤にして、自らの口元を手で覆っていた。


「あ、あの、宴会の時の約束……です。師匠の心配事はもう、無くなりました、よね?」

「な、あ……」


 顔を真っ赤にしながら首を傾げるアオイに、自らも真っ赤になる祐樹。

 そんな祐樹の尻に、レオナの蹴りがヒットした。


「痛ったい!? くると思ったよもう!」


 祐樹はもう慣れてしまったのか、レオナへと怒号を飛ばす。

 そして大きく深呼吸すると、全員に対して言葉を紡いだ。


「あー、みんな、悪いんだけど……これだけ言わせてくれ」

「「「「「???」」」」」


 祐樹の言葉に疑問符を浮かべ、首を傾げる彼女たち。

 やがて祐樹は大きく息を吸い込むと、天井に向かって言葉をぶつけた。


「どうすんじゃこりゃああああああああああああああああああ!?」


 こうして、一越祐樹の冒険は、ひとまずの終焉を迎える。

 しかし、これからも彼の冒険は続いていくのだろう。

 その舞台を、次のステージに移して……


これまでご覧になって頂き、本当にありがとうございました。

この物語はこれで完結です。

※なお、このお話とは関係のない別のファンタジー小説を近日公開予定ですので、お時間がありましたらそちらもチェックして頂けますと幸いです。


最後に、祐樹が異世界に飛ばされる原因となったG.A.T.Eについて補足します。


G.A.T.Eについて=G.A.T.Eは電子生命体です。物語の主人公となるべき人物を見つけると姿を現し、その人物を主人公として物語を展開させるため、舞台となる場所(仮想/現実問わず)に転送します。

今回ラストでアオイ達が転送されたのは、今度は現実世界を舞台とし、祐樹を主人公とした物語を紡ぐためでしょう。

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