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第百八話:祐樹の覚醒

「しまっ―――!?」


 全員に指示を出していた祐樹は、一瞬ルシファーから目を離し、その結果対応が遅れる。

 祐樹の言葉を受けたメンバーも、同じく体が動けずにいた。

 そしてそんなメンバー全員に、赤く巨大な剣が何千本と降り注いだ。


「「「「「ああああああああああああああああ!?」」」」」


 アオイの胴に、ニャッフルの首に、レオナの心臓に、フレイの頭に、そして祐樹の全身に、赤い剣が突き刺さる。

 その瞬間、全員が息絶え、地面に倒れこんだ。


『……褒めて……褒めて、あげよう。この僕に、ここまで本気を出させるとはね』

「「「「「…………」」」」


 ゆっくりと地面に降り立つルシファー。

 その言葉に反応するものは、一人もいない。


『ふふっ。あははははっ! どうやら君達も、もう終わり―――』

「な、わけ、ねえだろうが……!」

『!?』


 笑っていたルシファーの表情が、一瞬にして凍りつく。

 その視線の先には、もう一本の“不死鳥の羽”を持った祐樹が、苦しそうな表情で立ち上がっていた。


「そう……です。私達はまだ、終わってません!」


 アオイは剣を杖の代わりにし、かろうじて立ち上がる。

 しかし次第にその体の傷は癒え、元気を取り戻していった。


「そうにゃ! ニャッフルは……ニャッフルはまだ、諦めないにゃ!」


 ニャッフルは体全体を使って飛び上がると、ルシファーに向かってファイティングポーズをとる。

 そんなニャッフルの声を聞いたレオナもまた、杖を使って体を支え、起き上がった。


「そうね……これくらいのピンチ、なんでもないわ。今までの旅だってずっと、楽な道ばかりじゃなかった!」


 レオナは杖を使って立ち上がると、ルシファーを睨みつけながら声をぶつける。

 その声を聞いたフレイは、槍を振り回しながら、何事もなかったように立ち上がった。


「おおよ! アタシたちを倒したいなら、もっとスゲー魔法でも使うんだなぁ。ルシファーさんよ!」


 フレイはルシファーを真っ直ぐに見据え、睨みつけながら歯を見せて笑う。

 ルシファーは次々立ち上がってくるパーティメンバーの姿を見ると、両手で頭を掻き毟った。


『面白くない……面白くない面白くない面白くない! なんだ貴様らは! 虫の息じゃないか! ただの雑魚じゃないか! 勝ち目などない! なのに何故立ち上がる!? まったく面白くないよ!』

「っ!? まずい! 野郎、また……!」


 ルシファーは頭を掻き毟りながら、再び空中へと浮き上がっていく。

 恐らく先ほどの大魔法“ファイナル・ジャッジメント”を再び放つつもりだろう。

 立ち上がる時は強気だったパーティメンバーだったが、その様子を見て、思わず表情を強張らせる。

 そして祐樹は……久しぶりに、その頭をフル回転させた。これまでにないほど、集中し、集中しつくして、頭の中の情報を全て整理した。


『どうする。どうするどうするどうする。考えろ。俺がいる意味を。絶対にあるはずなんだ。奴を倒す方法が。俺はそもそも、どうやってこの世界に来た?』


 祐樹の頭の中に、この世界に来た時の記憶が蘇っていく。

 しかし中々、答えは出なかった。


『これで終わりだ! ファイナル―――』

「っ!? くそ! 流れ出ずる、世界の全てよ。この瞬間、我は命ずる。創世せよ、凍結の領域。“クロック・フリーズ”!」

「なっ!? ユウキ、それはSSSランクのまほ―――」


 祐樹は早口で呪文を詠唱し、ルシファーよりも一瞬早く、その魔法を発動させる。

 その呪文を聞いたレオナが叫んでいるが、その部屋の全て……いや、その世界の全ての時間は今、静止していた。


「時を止める魔法……か。くそっ。時間稼ぎにしかならねえ」


 祐樹はその静止した時の中で、再び頭をフル回転させる。

 そして―――自身がコントローラを持ち、この世界に飛ばされる前の光景を思い出した。





『メモリ媒体1ノデータヲロードシマス…………ロードカンリョウシマシタ』

『おう! 俺様の最強セーブをロードするとはバグの癖にやるじゃねーか! さっさと始めようぜ!』





「!? 俺の、セーブデータ……媒体1のデータを、ロードだって!?」


この世界に飛ばされた時の、GATEから発せられた台詞を思い出した時。

ずっと解けなかったパズルがパチンとはまり…………一越祐樹は真の意味で、覚醒を果たした。


『ジャッジメント! ふははははは! これで、これで終わりだ、蛆虫ども!』


 ルシファーの魔法は発動し、再び赤い剣が上から降り注ぐ。

 それを見たパーティメンバーは思わず防御姿勢を取り目を瞑るが―――祐樹だけは俯きながら、ぽつりと言葉を紡いだ。


「……オール・キャンセラー……」

『っ!?』


 祐樹がぽつりと言葉を零すと、空中から降り注いでいた赤い剣その全てが、存在を消失する。

 ルシファーは目の前の光景が信じられず、声を荒げた。


『馬鹿な……僕のファイナルジャッジメントは、何者にもキャンセルできない魔法だぞ!? それを一体、どうやって……!?』


 ルシファーは驚愕の表情を浮かべ、言葉を祐樹へとぶつける。

 祐樹はゆっくりと顔を上げると、ニヤリと笑って見せた。


「なーんでこんなこと、気付かなかったんだろうなぁ。俺の中にロードされたデータは、“俺の記憶媒体に記録された全て”なんだ。つまり……他のゲームの技や魔法、その全てを、俺は扱うことができるってわけさ」

『ほ、ホカノ、ゲーム? 貴様、一体何を言っている!?』


 ルシファーは祐樹の言っている意味がわからず、さらに声を荒げる。

 そんなルシファーと同じく、レオナも声を荒げた。


「ユウキ! 一体何がどうなってるの!? あいつの攻撃はどうなったの!?」

「安心しろ、レオナ。はっきりと一つだけ、言えることがある」

「???」


 祐樹は人差し指を立て、悪戯に笑いながら、レオナに、そして他のみんなに向かって言葉を紡いだ。


「俺達の……勝ちだ。あいつはもう、俺達を倒せない」


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