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第百七話:ファイナル・ジャッジメント

『気に入らないね……その態度。この僕に勝てるとでも思っているのかい?』

「へっ。少なくとも、俺達はそう思ってるぜ。お前なんか、倒せない相手じゃないってな」


 祐樹は二本のキャンセラーブレイドを構えながら、その切っ先をルシファーに向け、言葉を紡ぐ。

 パーティメンバー全員も祐樹の言葉に合意し、ルシファーを睨みつけながら一度頷いた。


『あはははは! 君達が、僕に勝つ? それは不可能だ。何せ僕のヒットポイントは―――』

「っ!? やめろ、ルシファー!」


 祐樹はルシファーの伝えようとしている事を予見し、大声でそれを阻止しようとする。

 しかしルシファーはその口を止めることなく、言葉を続けた。


『僕のヒットポイントは、一千万。わかりやすく言えば、レオナ君の大魔法を千回以上打ち込まなければ、僕は倒せないのさ』

「せ、せん、かい……!?」


 ルシファーの言葉を受けたレオナは、青ざめた表情でかろうじて言葉を紡ぐ。

 祐樹は一度舌打ちをすると、レオナへと向き直った。


「動揺するな、レオナ! 大丈夫だ! 粘り強くやれば、必ず―――」

『おっと……へっぽこ君。そんなに油断していいのかな?』

「っ!? しまっ―――」


 気付けば祐樹達の頭上には、いくつもの波紋が生成され、その中から光のビームが降り注いでくる。

 祐樹はキャンセラーブレイドを振ろうとするが、それも間に合わなかった。


「「「「「ああああああああああああああっ!?」」」」」


 全員の体に、光のビームが降り注ぐ。

 それらはパーティメンバー全員の体を貫き、そして息絶えらせた。


『ふふっ。あはははは! たわいもないとはこの事だね。所詮は人。神の領域には何者も―――!?』


 勝利後の台詞を話していたルシファーだったが、祐樹のポケットが、赤く輝いていることに気付く。

 そのポケットから赤い羽根が飛び出すと、空中で弾け、その際に放った赤い光がパーティメンバー全員を包み込んだ。


「くっ……みんな、大丈夫か?」


 祐樹は誰よりも早く立ち上がり、パーティメンバーへと声をかける。

 すると一人、また一人と、皆何事もなかったかのように立ち上がり始めた。


「師匠……今、一体何が? 確かに私、死んだと思ったのですが……」

「“不死鳥の羽”……の効果だな。こいつは一度だけ、パーティが全滅した時に発動し、パーティ全員の蘇生及び全回復をしてくれるんだ。フランに大感謝だ」


 祐樹は理由を尋ねてきたアオイに対し、にいっと歯を見せて笑う。

 アオイはいつもと変わらない祐樹の様子に元気付けられたのか、「はい、師匠!」と嬉しそうな笑顔で言葉を返した。


『面白くない……面白くないよ、君達。往生際が悪いんじゃないのかい?』


 ルシファーは悔しそうに奥歯を噛み締めながら、祐樹達へと言葉をぶつける。

 祐樹はニヤリと笑いながら、返事を返した。


「わりぃな、ルシファー。それが俺達の取り得ってやつなんでね」

『!? ほざけ、人間風情があああああああ!』


 ルシファーは怒りに震え、今度は祐樹に対して二本のキャンセラーブレイドで襲いかかる。

 祐樹は表情を真剣なものに変え、その攻撃を同じくキャンセラーブレイドで受け続けた。


「っ!? ニャッフルちゃん……二人の動き、見えますか?」

「か、かろうじて、見えるにゃ」

「速すぎる……私には、さっぱり見えないわ」


 アオイ、ニャッフル、レオナの三人は、あまりにも高速すぎる二人の動きに圧倒され、ただ呆然と立ち尽くす。

 しかしそんな三人に、フレイは活を入れた。


「おめぇら、何ボーっとしてんだ! さっき祐樹に言われた通り、あいつにダメージを与えんぞ!」

「!? そ、そうですね。師匠の指示を守らなければ!」

「そうにゃ! こうなったら、やってやるにゃ!」


 アオイはフレイの言葉を受けると、剣を構えてもしもの場合に備え、防御体制をとる。

 ニャッフルは腕をぐるぐると回すと、四つんばいになってルシファーへと視界を定めた。

 そして、その刹那、剣を弾かれたルシファーに、一瞬の隙が生まれた。


「今だ、ニャッフル! いけええええ!」

『っ!?』

「にゃああああああああああ! 豪・裂衝連撃!」


 ニャッフルは驚異的なスピードでルシファーとの距離を詰め、奥義をルシファーの体に叩き込む。

 ルシファーはかろうじて両腕でガードしながらも、そのダメージは確実に蓄積されているようだ。


『くっ、この、獣人風情が!』

「よし、下がってろニャッフル! 後は俺がやる!」

「がってんにゃ!」


 反撃してきたルシファーに対し、祐樹は一瞬にしてニャッフルのカバーに入り、その剣を受け止める。

 そしてその瞬間、レオナの呪文詠唱が完了した。

「祐樹! いつでもいけるわよ!」

「本当か!? よっしゃ、かましたれレオナ!」


 祐樹はレオナの声を聞くと、ルシファーの刃を受けながら言葉を返す。

 レオナはこくりと頷くと、そのままルシファーへと杖をかざした。


『させるかあああ! クリティカルジャンプ!』

「っ!? まずい! アオイ、フレイ、二人でレオナのカバー!」

「「了解!」」


 クリティカルジャンプでレオナの眼前に瞬間移動し、その剣を振り下ろそうとするルシファー。

 間髪入れずに祐樹は二人に指示を出し、アオイとフレイは二人協力してその刃を受け止めた。


『っ!? ちい!』

「ブラッディ・エクストリーム!」


 二人に刃を止められたその一瞬に、レオナは魔法を発動させる。

 すると質量を伴った闇がルシファーの体を包み、その体を圧殺した。


『あぐああああああああ!? ぐっ……小ざかしい真似を!』


 ルシファーは再び交代すると、今度は大魔法の構えに入る。

 しかしその瞬間、間髪入れずに、祐樹がルシファーに切りかかった。


『っ!?』

「させるかよ、大魔法なんて! お前の相手はこの俺だ!」

『くっ……人間風情が、生意気な口を!』


 こうして再び、ルシファーと祐樹の剣が、超高速で交差する。

 そうしてから、一体、どれだけの時が過ぎただろう。

 ルシファーの大魔法と物理攻撃を防ぎ、こちらの攻撃と大魔法を当てる。

 その繰り返しが千回に届こうという時、ルシファーは天高く舞い上がり、狂ったように笑った。


『あはっ。あははははっ! 馬鹿な連中だ。僕を本当に、本当に怒らせたね!』


 ルシファーの瞳にもはや光は無く、貼り付けられたようだった笑顔は、狂乱のそれに変わっていた。

 やがてルシファーは両手を広げ、上を見上げる。


「っ!? まずい! 全員防御体勢をとれ!」

「「「「!?」」」」


 祐樹のただならぬ雰囲気に驚き、一瞬動きが止まるパーティメンバー。

 ルシファーはその一瞬を見逃さず、次の言葉を発した。


『この魔法は僕のオリジナル……つまり、キャンセルはできない! これで終わりだ! “ファイナル・ジャッジメント”!』


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