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第百二話:フラン再登場

「フランさん!? どうしてこんなところに!?」


 アオイ達の視線の先では、紫色のドレスに身を包み、茶髪の縦ロールが印象的な少女、フランが、祐樹に抱きついていた。


「もちろん、ユウキ様をサポートするためですわ! さあ、遠慮せずご覧になって! このフランが準備したショップの数々を!」


 フランは右手を魔王城の奥へ指し示し、一同はそれを追って魔王城の入り口周辺へと視線を移す。

 すると禍々しい装飾がされていたはずの入り口には大量の花が飾り立てられ、地面にはいたるところに赤いカーペットが敷き詰められている。

 結論から言えば、華々しくリフォームされていたのだ。恐らくは、フランの手によって。


「わぁ……なんということでしょう。禍々しい魔王城が一瞬にしてエレガントな装いに……って馬鹿! 何勝手に魔王城の入り口改造してんの!? ていうか出現してきたモンスターは!?」


 祐樹は取り乱した様子で、フランへと言葉をぶつける。

 フランはにこやかな笑顔を保ったまま、返事を返した。


「ああ、邪魔だったので私の護衛隊が退治いたしましたわ。そんなことよりユウキ様! さっそくこのフラン特製市場をご利用なさって! さあ、遠慮なさらずに!」

「ええええ……どういうことなのこれ。なあみん……な……」

「おーっ! この酒うめーなぁ! あっはっはっは!」

「このお肉美味しいにゃ! おかわりだにゃ!」

「このアクセサリいいわね……えっ? 割り引いてくれるの? なんか悪いわね……」

「護衛隊の皆さん、元王国騎士なのですか!? どうりでお強いはずです……是非お手合わせいただきたいですね」

「もう馴染んどるー!? お前ら適応力高すぎだろ! 俺まだ“フラン、衝撃の再会”のとこにいるから! 置いていかないで!」


 祐樹はまるで懇願するように膝を折り、頭を抱える。

 そんな祐樹を、フランは心配そうな表情で見つめた。


「あら、ユウキ様。お疲れですの? 王都セレスティアルホテルのロイヤルスイートを再現したお部屋がありますから、そこでお休みになって?」

「まあ、所々隠し切れていないドクロの装飾がアクセントになって素敵……って馬鹿! 何人の家(?)勝手に改造してんの!? 魔王かわいそうだろ!」


 全く悪びれない様子のフランに対し、勢いよくツッコミを入れる祐樹。

 フランはそんな祐樹の言葉を無視して、さらに言葉を続けた。


「あ、そうそう! このアイテムショップなんて凄いですわよ! カジノでしか手に入らない超レアアイテム“不死鳥の羽”を二つも扱っておりますわ!」


 フランはショップの前に走ると、豪華な装飾をされたショーケースに飾られている赤く美しい羽を指し示す。

 それを見た瞬間、祐樹のテンションは跳ね上がった。


「マジで!? うわすげえ! 二つくれ!」

「結局あいつも馴染んでるじゃねーか」

「あ、あはは……」


 最終的に異常事態に馴染んでしまった祐樹に対し、笑いながらツッコミを入れるフレイと、困ったように笑うアオイ。

 結局祐樹達は自称“フレイのスペシャル市場”を存分に堪能し、英気を養ったのであった。







「もう、行ってしまうんですの? わたくし、寂しいですわ」


 先に進むと告げる一行に対し、寂しそうに俯くフラン。

 祐樹はそんなフランの頭をぽんぽんと撫でると、微笑みながら言葉を紡いだ。


「……ありがとな、フラン。なんつーか、その、いい息抜きになったよ」

「ユウキ、様……」

「…………」


 フランは溢れそうになる涙を懸命に抑えながら、かろうじて言葉を返す。

 どこか言いにくそうにしている祐樹の様子に一人気付いたアオイは、その理由を察し、沈黙をもってその場の雰囲気を守った。


「安心しろって、フラン。勇者様は無敵だ。絶対帰ってくるから。な?」

「は、はいっ。わたくし、待っていますわ!」


 フランは悪戯な笑顔を見せた祐樹の表情に安心し、嬉しそうに笑顔を返す。

 そんなフランに背中を向けた祐樹の表情が強張っていることに気付いたアオイは、無言で横に寄り添った。


「じゃ、世話んなったな! 魔王ぶっとばしたら戻ってくるぜ!」

「ばいばいにゃ~!」

「またね。色々とありがとう」


 フレイ、ニャッフル、レオナの三人もそれぞれお礼の言葉をフラン達に送り、魔王城の奥へと進んでいく。

 こうして今度こそ、魔王との決戦の火蓋が切って落とされようとしていた。



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