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Destiny Memory  作者: まーく
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第八章 新しい精霊

再び間があいてしまって………。

いま必死で執筆中です。申し訳ありません。

第八章 新しい精霊




 「―――――結論から言えば共同戦線は受け入れる、その後のことは話し合いで決めたい」


朝早く、部屋に木霊する声は疲れ切ったマルスの声だ。


「なるほど………分かりました。マーク様達は遅かれ早かれ三日で着くはずです」


「丸一日話していたようだな………」


「そうですね………ふぁあ―――――あぁ、失礼………」


欠伸をしてゼツが言った。


「………僕も違う部屋で寝てきます。ゼツ、貴方もここで寝ていて下さい」


「はい………そうさせて頂きます。三日ほど―――――寝ていなかっ―――――」


話の途中でゼツは首を垂れた。余程眠かったのだろうか、そのままの体勢で寝息を立てている。


マルスはゆっくりとゼツの体を横にすると部屋から出た。朝の冷たい空気が肌を撫でる。


 「ん………おはよ、マルス」


目を擦りながらリアが言った。真っ白な半袖のTシャツに動きやすそうなズボンを履いている。


「今まで話してたの?」


「あぁ、まぁ―――――」


マルスは最後まで言わないうちに倒れた。慌ててリアが駆け寄った。


「ど、どうしたのマルス?」


「なんでもない、少し寝不足なだけだ」


蹌踉めきながらマルスは立ち上がった。


 (あれ………?)


違和感を覚えたその時、マルスの体から力が抜けてリアの方に倒れた。


その拍子にマルスとリアの額がぶつかった。


「ちょ、ちょっと………」


リアが照れながらマルスの顔をどけようとした瞬間、異変に気が付いた。


ゆっくりとマルスの体をどけると額に手を当てる。


「凄い熱…………とにかく寝かせないと」


リアが慌てて自分が借りている部屋にマルスを運び込んだ。


ゆっくりとマルスを布団に寝かせると光術で氷の塊を作って袋に入れるとマルスの頭を冷やした。


 「はぁ………はぁ………すまない………」


「寝ずに無理をするから………」


「………悪い」


ゼェゼェと荒い息遣いでマルスが言った。


「何かして欲しいことはない?」


「して欲しいこと―――――強いて言えばリアに居て欲しいかな?」


うっすらと笑みを浮かべてマルスが言った。


「………………分かったわ」


照れくさそうに顔を赤くして、しかし嬉しそうにリアが笑った。


 「―――――ねぇ………マルス? 記憶のことなんだけど」


急に寂しそうな表情を浮かべてリアが言った。


「記憶を取り戻したら―――――天光術の力を取り戻して、世界を救って………それでマルスはどうなるの?」


リアの唐突な質問に思わず言葉を詰まらせる。―――――今まで少しもそんなことを考えたことは無かった。


(抑も僕は、記憶を取り戻したいという理由で旅を始めた。仲間もできた。でも―――――)


脳裏に不安がよぎる。


(世界を救ったあとに自分がどうなるか、と問われれば普通の人間なら一緒に暮らす、とか言うのだろうか?


でも、僕は一度死んでいる人間。そんなに上手く行くとは思えない。けど、今したいことなら言える)


リアの質問の答えは―――――。


 「フェスト達との約束を守る―――――でも今は、クリン達を苦しめた者達を倒す。


そのあとに記憶を取り戻して、マナの暴走を引き起こす刹那を破壊する」


困ったように笑みを浮かべてマルスが言った。


「でも、マルスのそんなところが好きだよ」


思わずドキッとする。


「自分より、他の人を優先する。そんな優しいマルスが好き」


リアは、はにかんだ笑みを浮かべて言った。


マルスも顔を赤くして微笑み返した。


 「じゃあゆっくり休んでね。ここに居るから―――――おやすみ、マルス」


「やっぱり、クリンのお祖父さんを探してきてやってくれないか?」


「でも………」


少し寂しそうにして、リアが何か言おうとした。


「気持ちは嬉しいよ。でもお祖父さんのことが心配だし、クリンも可哀想だろう?」


「………それもそうね。じゃあ、あたし行ってくる………あとでね」


そう言ってリアは部屋から出て行った。


その瞬間に睡魔が襲ってきて、マルスは物の数分で眠りについた。




 意識が戻ると、そこは夜の町の中だった。どうやらまた記憶を見せられているようだ。


「ふぅ……少し疲れたね」


「そうだな」


日も暮れて、綺麗な月明かりに照らされながらリリィとマルスは町から少し離れた所に居た。


屋台が並ぶ賑やかな通りとはまた違った雰囲気のその場所は涼しく、町の人達も涼みに何人か来ていた。


町の方からは歌い声や笑い声が絶え間なく聞こえた。


 「お前達、良くやってくれた!」


酒の臭いを漂わせて、体の大きい男が話しかけてきた。それはあの戦いの時に先陣切って敵に襲いかかった騎士、モルロンだ。


そして、モルロンはマルスの隣にどっしりと腰掛けると一息ついた。


「あなた方のおかげで被害が最小限に済みました」


「いやいやいやいやいやいや、君たちが居なければ駄目だったよ」


大袈裟に首を振ってモルロンが言った。


「………しかし、あの光術は一体?」


モルロンが不思議そうに訊いた。


困ったようにマルスは笑みを浮かべると、それに気が付いたリリィが助け船を出した。


 「それより、騎士団の方達とお話ししなくて良いのですか?」


ハッとしたようにモルロンがリリィの顔を見た。


「いかん! まだ自慢話をしていないんだった。それじゃあな」


重い腰を上げて、少し蹌踉めきながらもモルロンは町の方へ歩いていった。


 「忙しい人ね」


クスクスとリリィが笑った。


「…………気のせいか? 人が増えたような………」


マルスが辺りを見回して言った。


リリィも笑うのをやめて辺りを見回した。


 「あの………」


頬を赤くした少女がマルスに近付いてきた。


少女は長い髪を揺らしながらゆっくりとマルス達に近付いてきた。


「なにか………?」


「あの………町を救ってくれて有り難うございます」


「いや、まぁ………俺達が連れてきてしまったみたいなものだから」


「え?」


どういう事か分からない、という様子で不思議そうに少女は首を傾げた。


「いや、何でもないよ」


「………はぁ…?」


「それで………何かな?」


 「その、お礼がしたくて」


恥ずかしそうに少女はマルスの方を向いて言った。


「いや、そんな気を遣わなくても………」


困ったようにマルスは笑みを浮かべた。


「しかし、そう言うわけにはいきません。みんなを助けて貰ったのですから………」


「んー、でも………」


マルスはどうしようか考えながらリアを見た。


マルスの気持ちを察してか、リアは軽く微笑むと頷いた。


「本当に気にしなくてもいいですから、ね?」


リアは少女に向かって微笑むとそう言った。


 「………では、せめて家へ来てください。何も出来ないのは返って辛いです」


困ったような表情を浮かべて少女が言った。


「じゃあ、お邪魔させて貰おうかな?」


そう言ってマルスは腰を上げると、リリィと共に少女に付いていった。


「きっと父も喜びます」


ゆっくりと町はずれの方へ少女は歩いていく。


 「まだかい?」


歩き疲れたマルスが我慢できずに言った。


「………着きました」


少女が言う場所は森のど真ん中、月明かりも入らないほど隙間無く木がある。


「こんなところに家があるとは思えないな?」


そう言うと不審に思ったマルスは剣を抜いた。


 「お前達………獲物を連れてきたぞ!」


少女がそう言った途端、少女の姿はおぞましい角の生えた魔物のコボルドホーンと化した。


ワアアアアアっと言う喜びの声が上がると、何匹ものコボルドホーンが現れた。


マルスはリリィをかばうようにすると近付いてくる同じようなコボルドホーンを切り倒した。


「コンティ………スペルッ!」


マルスがそう言うと、無数の光りが現れたかと思った瞬間に爆音が起こり、砂ぼこりが舞った。


その隙にリリィは光術を唱え始めた。


そしてマルスは剣を強化すると木の上に飛び乗った。


慌ててマルスを見たコボルドホーンは飛びかかる暇もなく、コンティスペルの餌食となった。


「お前等、顔は傷付けるなよ!あのお方に献上すれば、大量の飯にありつける!」


「あのお方? ………なんのことだ」


マルスがリリィの周りにいるコボルドホーンを切り裂いてそう言った。


「言う必要はない………」


「なら、生きて帰れると思うなよ」


そう言うとマルスが、コンティスペルを乱れ撃ちした。


 「ガオォオォオオオゥッ!」


後ろからの突然の咆哮にマルスは振り向いた。見れば三メートルもあろう、巨大な人狼のような魔物、パーゾンウルフが立っている。


コンティスペルを放っても少しも動じない様子で、パーゾンウルフは乱暴に進行方向にある木をなぎ払って、こちらへ向かってくる。


「深緑の精霊よ、その力を解き放て! ―――――フォレスト・インディグネイション!」


リリィがそう言うとメキメキッという、木々のしなる音と共にパーゾンウルフに倒された木も含めた辺りにある全ての木から


無数の枝が伸びて次々とコボルドホーンを串刺しにしていく、木々の攻撃を受けた魔物達は頭に響くほどの大きな声で叫び声を上げた。


魔物に息つく暇も与えずにリリィが連続して上級光術を唱えていく。


「まだまだ! 偉大なる大地の精霊よ、我が敵を葬りたまえ!―――――アース・シンキング!」


リリィが唱え終えると、地面からの振動が始まり、次々にコボルドホーンの真下にある地面が陥没する。


やがて、コボルドホーンは全員地面に呑み込まれた。


巨大なパーゾンウルフさえも、足をすくわれ仰向けに倒れた。そこへ木々の追撃が更に行われる。


それでも立ち上がるそのパーゾンウルフは咆哮すると辺りにある木を全て掴むと、マルス達に向かって思い切り投げた。


リリィに木が命中しそうになったその時、マルスがリリィの前に現れると木に向けて剣を突き出した。


 「フェニックス・ガード」


ゴウッ、という炎の燃え上がる音が聞こえて、木が燃えながら真っ二つに割れた。


「ふぃ…………リリィ、とっておきを頼むよ」


ニッコリ笑ってそう言うとマルスは魔物に向かって駆けだした。


リリィはマルスが言ったのを確認してから光術を唱え始めた。


 「死への誘い………破滅への扉が現れん―――――」


リリィが唱える中、マルスは倒れた木の上に飛び乗ると、刃をパーゾンウルフに向けて突っ込んだ。


腕で剣を弾かれると、今度は魔物の目に向かって光術を放った。


狙い通りに攻撃が命中すると、パーゾンウルフは悲鳴を上げてがむしゃらに腕を振り回した。


間一髪でジャンプしてかわすとマルスは地面に片腕をつくと、見事に一回転して着地した。


 「―――――滅亡への歩みが始まる。破滅への扉開かれ……全てが滅せられる」


腰から短剣を取り出すと、パーゾンウルフに思い切り投げつける。


しかし、簡単に短剣は弾かれてパーゾンウルフは鋭い爪でマルスを切り裂いた。


「ぐぅっ―――――だが、この程度で!」


傷に構わずマルスは剣を両手で持つとパーゾンウルフの攻撃を受け止める。


「ぐぁぁああ!」


うめき声を上げるマルスの体からは裂かれた場所から血があふれ出していた。


「闇へ落ちよ………マルス、お待たせ!―――――パーメネントダーク!!」


リリィがその言葉を口にした瞬間、パーゾンウルフの後ろに巨大な扉が現れた。


「ガルル…………」


そして突然マルスに興味を無くしたようにパーゾンウルフはその扉の取っ手に手を掛ける。


ガゴン、という音と共に扉が軋みながら開く。扉の向こうは何もなく真っ暗な闇だ。


魔物は何か探すように扉の向こうに首を突っ込んだ、その時だ。


闇の中から無数の手が伸びて、魔物を掴み、引き込もうとした。


「ガァアアァァアアァアアア!!!」


パーゾンウルフ我に返ったようで、狂ったように喚いて暴れ出したが時既に遅く、


無数の手に捕まれたパーゾンウルフは為す術もなく扉の中へ引き込まれていった。尾を引く悲鳴が聞こえた後にゆっくりと扉が閉まった。


 「とっておき………にしては、残酷な光術だな」


リリィに傷を治して貰いながらマルスが呟いた。


「でも魔物を倒すには確実な方法よ。勝てないのよ『扉を開けたい』って誘惑に」


「開けたら最後地獄行き、か」


苦笑してマルスが言った。


 「―――――私がマルスを誘惑したらどうする?」


地面に座ると唐突にリリィが言った。


「は? ―――――いや………どうするって言われても」


マルスも地面に座り込むと困ったように腕を組んで首を傾げる。


「やだ、本気で考えてたの?」


クスクスと笑いながらリリィが言った。


「え、いや………そんなわけないだろ」


マルスは咄嗟に作り笑いを浮かべた。


「ふふ………」


リリィはマルスの顔をジッと見て優しく笑った。


「ん………?」


少し頬を赤くしてマルスが言った。


 (き、記憶と言えど………これは………)


自分の記憶を見ながらマルスが溜息を吐いた。


 「………マルス」


とても穏やかな表情でリリィがマルスすぐ側に来た。


「………」


うっすら笑みを浮かべて、マルスがリリィの手を握るとリリィも握りかえしてきた。


鼓動が早くなる。記憶がそうなのか記憶を見ている自分がそうなのか分からないが、悪い気分ではない。


木が倒れた所為か月明かりが二人を照らして、顔がよく見えた。マルスはもちろんのこと、リリィまでも顔を赤くしている。


リリィが肩に寄り掛かると、そっとマルスはリリィを抱き寄せた。


「しばらく、このままでいい?」


マルスが静かにそう言うと、リリィは目を瞑って頷いた。


(お、おい…………)


内心ドキドキのマルスはしばらくその様子を見ていたが、やがてその光景はゆっくりと消えた。


 「見ていて心がときめいちゃうわね」


何もなくなった空間には宙に浮いた地面に付くほどに長い衣服に身を包んだ白髪の女性が居た。


「貴方は………精霊?」


まだ激しく胸打つ鼓動のままにマルスが言った。


「そう、私は精霊シャイン。光りを司る精霊よ」


「にしても、洞窟で私の存在に気が付いたなら早く来て欲しかったわ」


シャインが頬をふくらませて言った。


「申し訳ない。色々あったので………」


マルスが頭を掻きながら言った。


「ま、いいけど―――――じゃあ貴方に天光術のフェニックス・ガードを授けるわ」


シャインがそう言うと温かい光りがマルスの体の中へ入り込んできた。


「………文句を言う様で悪いんですが、本当にこの天光術………強力なのですか?」


「とりあえず敬語はやめて、嫌いなの―――――フェニックス・ガードは余程強力な攻撃じゃない限りはどんな攻撃も防げるわ。


口で言っても分からないだろうから実際にやってみようかしら………試練にもなるし。あ、夢とは言え、本気を出さないと死ぬわよ?」


そう言うとシャインは目つきを変えた。


「分かった」


マルスも目を見開くと自分の持つ剣を出来る限り強化した。


「天空に満ちし光りよ、聖なる槍となれ! ―――――セイントスピア!」


ぼんやりと光を発する槍を力強く両手で持つとシャインがマルスを睨んだ。


「試練内容はこう、十分間私に攻撃に耐えられればそれで貴方の勝ち、耐えられなかったらあたしの勝ち。


フェニックス・ガードを使わなくても良いわ―――――行くわよぉ!」


そう言うと想像すらしてなかったほどの早さで、シャインが空中を自由自在に飛び回った。


シャインはあっという間にマルスの背後に回ると遠慮なしに連続して斬り付けてきた。


かろうじてそれを剣で受け止めると、マルスはシャインの腹を思い切り蹴った。


「痛っ………もう、手加減なんてしないからね!」


そう言ってシャインは光術を唱え始めた。


「隙だらけだ」


マルスが光術を唱えているシャインに剣を振り下ろそうとしたとき、マルスの視界からシャインが消えた。


「ばかな!」


慌てて辺りを見回せば遠くの方にシャインの姿が見えた。


「そこかっ! ―――――コンティスペル!」


しかし攻撃は全て外れた。シャインは相変わらず光術を唱え続けている。


「くそっ!」


シャインがに攻撃するたびに、シャインは消えて別の場所へ移動する。その繰り返しが続くうちにシャインはとうとう光術を唱え終わった。


 「冥空の彼方より現れし、時の鎖は汝を貫く――――タイムチェーン・ジャッジメント」


地面から無数の先端に刃がついている鎖が現れると、マルスの体に向かって伸びてくる。


それを剣で弾くが、何度も何度もこちらへ向かってきてきりがない。


「蒼守壁!!」


マルスがそう言うと、目の前に青い壁が現れ、鎖を弾いた。


「頼む、耐えてくれ! ―――――三つの火焔(かえん)は全てを焼き尽くす! ―――――デルタフレア!」


マルスが詠唱を唱え終わると、三つの巨大な火の玉が現れて鎖に直撃した。すると鎖ははじけ飛び、熱風が吹き荒れた。


 「―――――セイントスピア、アウェーキング」


シャインがそう言うとシャインの持つ槍が形を変えて、鉾となった。


「聖なる鉾の攻撃に耐えられる?」


「耐えてみせるさ………」


「じゃ、行くわよ―――――空駆ける斬撃」


ビュンッという音が聞こえ、無数の鎌鼬がマルスの体を裂いた。


「おいおい、本気で狙えよ」


両腕と両足から血を流しながらマルスが笑って言った。しかしながら傷は深くない、シャインにマルスを殺す気がないからだろう。


「聖なる鉾の連撃」


キィィンと言う音が、剣と鉾がぶつかる度に空間に響く。


そしてまた鉾と剣がぶつかると、剣にひびが入った。


「くそっこれでも………!」


これ以上攻撃を受ければ折れる。そう思ったマルスは剣を思い切りシャインに投げつけた。


それを受け流すこともなく、シャインは簡単に避けると鉾を再びマルスに向けた。


「…………全力で行くわ―――――聖なる光りが瞬く時、全てが終わるを告げる」


鉾を地面に突き刺すと、シャインが鉾に手をかざしながら不思議な言葉を唱えた。剣のないマルスにはどうすることもできない。


「聖なる鉾が光りを放つ」


光りが瞬いたと思った瞬間、目の前には鉾があった。


「ふぇ、フェニックス・ガード!」


マルスの前に炎が現れると、鉾は寸前で止まり燃え尽きた。


「こ、これは………」


今までその防御力を疑っていたマルスだったが、フェニックス・ガードで木とは違う、精霊の全力の攻撃を防げたことに絶句した。


 「試練は終わり、お疲れさま」


マルスに負けたのに勝ち誇ったような笑みを浮かべてシャインが言った。


「さ、じゃあ現実世界へ戻るわよ」


マルスに有無を言わせないまま、シャインはマルスが寝ている部屋に着いた。


目を覚ますとまだ朝で、あまり寝ていない気もするが結構頭がスッキリしていた。


 「いきなりかよ―――――………んーシャイン、この家に住んでいるクリンという女の子のお祖父さんを探しているのだけれど、


力を貸してもらえるだろうか?」


「精霊は人間に力を貸してはいけない………………でも十分既に貸してるしね。いいわ」


そう言うと精神の集中に入ったようで、シャインはゆっくりと目を瞑った。


数分くらい経つとシャインは目を開けてマルスを見た。


「あと1分もすればここにお祖父さんが来るわよ」


マルスは首を傾げた。


「………どういこと―――――」


マルスが何か言おうとしたとき、扉が開いた。


「はぁはぁ…………み、見つかったの!―――――って、誰!?」


リアが慌てて部屋に駆け込んできたので、マルスは驚いてしりもちをついて、逆にリアも見慣れぬ女性が立っていることに驚いた。


 「ま、まぁ落ち着け。この人は精霊シャインだ」


「そうなんだ―――――それで、クリンのお祖父さんが見つかったのよ」


「皆様にご心配をお掛けしてしまってすいません―――――私がクリンの祖父、ワットです」

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