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Destiny Memory  作者: まーく
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第三章 襲撃

第三章 襲撃




だだっ広い寝室兼リビングルームの部屋にフィンとリア、そしてマルスが居た。


二人はフィンが部屋に来るまで時間がどれだけ経っているか分からなかった。フィンが言うには半日ほど熟睡していたらしい。


そしてフィンに少し待つように言うとリアとマルスは部屋の外に出て先程の話をフィンに話すかどうか考えた。


「・・・やはり話した方が良いだろう」


マルスは話す内容をリアとまとめると部屋に戻った。


「ん?ノロケ話は終わったようだな」


頭を掻きながらフィンがにやけて言った。


「話したいことがあるのですが」


マルスが赤い顔で咳払いすると慌ててフィンが姿勢を正した。


うって変わって硬い表情をしてマルスが記憶のこととライトクリスタルの話を始めた。


呆気にとられているフィンを余所にリアは早速荷物の準備をし始めた。


「先祖は・・・そうか・・・代々伝わるとおりに先祖は立派なお方だったのだな」


ようやく口を開きかつてフィンの先祖が成し遂げた


名誉あることを誇りに思いながら何度も頷いた。


「・・・で、本題ですが協力してくれますか?」


「おっと、そうだったな。しかし先祖のことはともかくとして他のことは信用ならん」


都合のいい人ね。小声でリアがぼやいたのをマルスは聞き逃さなかった。


「リア、ウンディーネを召還してくれ。説明には必要不可欠だ」


マルスが言うや否やリアは両手を胸にあてて精神集中した後、胸から


手を離し空に紋章を描くように指を動かした。すると空中に青く輝く紋章が現れ、その紋章ができるとリアがウンディーネの名を叫んだ。


すると紋章が消えて変わりにウンディーネが現れた。


「信用してくれますか?」


ウンディーネが珍しく悪戯っぽい笑みを浮かべてフィンを見下ろした。


「せ、精霊ウンディーネか?!ま、まさか本当とは・・・」


フィンはウンディーネが現れた直後に驚いてしりもちをついていた。


「・・・さぁ信用してもらえましたね?では、早速ですがライトクリスタルを破壊してもらえませんか?」


いつもの用に優しく微笑んでウンディーネが言った。


 「信じがたい・・・が、こうして精霊が目の前にいるんだ。間違いではないんだろう、では協力しよう」


フィンが言ったのを確認すると三人が同時に礼を述べた。


 それから三人は部屋を出るとライトクリスタルがある場所へ向かった。


「ここだ。鍵はそこに―――」


フィンの言葉を最後まで聞かない内にマルスはドアを蹴破った。


「滅茶苦茶だな」


フィンとウンディーネがその場に残り見張りをすることになりリアとマルスが破壊することになった。


 「やるか・・・」


マルスは剣を取り出すと一気に巨大なライトクリスタルに剣を突き出した。


キィィンッと言う高い音が部屋中に木霊してライトクリスタルは小さな粒子になって消えた。


「これで・・・危険が少し減ったわけだ」


マルスはリアに笑いかけるとリアも嬉しそうに返事をして笑みを見せた。


 「急げ!兵が来たぞ、早くここから――――」


フィンの言葉が最後まで続かないうちに爆音が城内に響き渡った。そしてその大きな爆音の後に次々と爆発音が轟いた。


慌ててマルスとリアは部屋を飛び出した。


 「団長!魔物が攻め込んで来て!」


騎士団員が切羽詰まった様子で言った。


「落ち着くんだ!お前は第三防壁の護衛に回れ!」


フィンが速やかに命令を出すと騎士団員は頷き走り去っていった。


そして再び爆音が轟き黒煙と共に兵士が吹き飛んできた。廊下には瓦礫と力尽きた騎士達が倒れ込んでいた。


 「フェスト、無事か!?」


倒れ込んでいる騎士を抱えるように起こしてフィンが言った。


「私は大丈夫です・・・しかし第一防壁は既に壊滅状態、第二防壁も時機に突破されるでしょう」


騎士は立ち上がると見慣れない客人と蒼い光を放つ女を見てハッとしたように駆け寄り避難するように言った。


 「これでも戦うだけの力は持っています」


リアが騎士の傷を癒すと微笑んだ。


「そ、そうですか・・・私は王宮騎士団のフェストです」


礼儀正しく頭を下げてフェストが言った。


「僕はマルス、こっちはリアだ。話は後にして後ろの奴を倒そう」


 マルスがフェストの後ろに居る者を睨むとウンディーネも真剣な顔でマルスと同じように睨み付けた。


「精霊、封印スル」


その者は額から一本の角が生え皮膚の色は毒々しい紫色をしていた。


声は身を震わせるような高く鋭い声で全てにおいて魔物の条件が整っていた。


魔物は渦巻く黒い球体を手のひらに作ると躊躇無くマルス達に放った。するとハッとしてウンディーネが飛び出しそれを防いだ。


 「・・・この程度!―――――スプレッド!」


全く狼狽えない様子でウンディーネが反撃を行った。


無数の水の柱が床から現れたかと思うと魔物に直撃した。水飛沫が舞い激しい水圧で魔物は押しつぶされた。


尾を引く嫌な悲鳴が城内に木霊し、消えた。そしてウンディーネはリアの付けている指輪に戻り、城内はまた静けさに包まれた。


 「契約者か・・・厄介だな。しかし契約者ごと消し去ればいいだけの話だ」


今度は魔物ではなく男が現れた。


「貴様、ゾウスか?」至って冷静にフィンが言った。


「ご名答、まぁ昔からここには因縁がありますしね、魔物と手を組んでも不思議ではないでしょう?」


その者の名はゾウスと言うらしく紫色の長髪で鎧を着込んでいる。


「城下はもう占領した。降伏したほうがこの国の為だろう。それとも国民を殺す気か?」


 フィンは苦虫を噛み潰したような顔を浮かべた。


「ふふ!・・・では、そこの契約者、死ぬが良い!―――――ダークフレア!」


ゾウスは先程の魔物が使った光術と同じ物をリアに放った。


 しかし今度は先程と違い準備が整っている。蒼く透き通った壁がリアの前に現れて魔物の攻撃を完璧に防いだ。


蒼守壁―――文字通り蒼い壁が現れて敵の攻撃を防ぐ防御系の光術だ。


余程のダメージでなければ破られることはなく。マルスがポラスに来る最中に魔物と戦って習得した技だ。


解放された天光術の影響かマルスにもライトクリスタルなしで初歩的な光術が使えるようになって来ていた。


 「くっ・・・雑魚に手間取っている暇はないと言うのに!もはや手加減をする理由もないか!」


ゾウスは手を掲げ何やら不思議な呪文を唱え始めた。


「わざわざ相手の詠唱を見ているとでも?」


そこへマルスが突撃した。


しかしマルスの剣は見えない何かに弾かれてマルスさえも吹き飛んだ。


「今こそ終焉の時!デモンズゲイト!!」


詠唱が終わりゾウスの光術が炸裂した。


 突然引っ張られるような感覚に襲われたかと思うと一気に締め付けられた。その痛みは今まで体感したことのない程だった。


そしてその痛みは始まりと同じように唐突に終わった。


 「リカバリー!」「ヒール!」「はぁ!」


二人の女性が回復光術が唱えてマルス達を回復させ、男がゾウスに不意打ちを与えた。ゾウスはその攻撃で吹き飛んで倒れた。


「・・・ホープ、ケルク、ミラ!・・・お前ら・・・」


フェストが紺色の長髪をした男の手を借りて起き上がると笑った。


マルス達も起き上がると剣を抜いて倒れているゾウスを睨んだ。


 「雑魚に遅れを取るなんてなぁ?」


ゾウスの事などどうでもいい事のように男が笑っていった。


「ケルク・・・お前な・・・」


呆れ笑いを浮かべフェストが言った。


「何にせよ助かった・・・礼を言うぞ」


マルスは目線をゾウスに向けたまま素っ気なく言った。


爆音が城内に未だ響く中、安堵の表情を浮かべているのはここにいる数人だけだろう。


 しかし脅威はまだ消えては居ない。ゾウスはゆっくりと立ち上がると無言で剣を鞘から抜いた。


すると今までのゾウスとは思えないほどの殺気を放ち太刀をマルスに向けた。


 「・・・死ね」


その言葉を合図に二人の剣がぶつかった。次々と繰り出される攻撃は剣舞を思わせる程に綺麗だった。


だが、その思いは一瞬で消えた。ゾウスの連続した攻撃にマルスは押されて、互いの剣からは火花が散った。


そしてゾウスの剣から無数の雷が放たれ次々とマルスに直撃した。


 「雷牙剣・・・続けて・・・雷牙風包剣!」


雷で痺れてしまい動けないマルスにゾウスは続けて風を纏った剣で突きを繰り出した。


 マルスは直撃を受けてしまい、体からは鮮血が噴き出した。更にマルスの体を凄まじいほどの雷撃が覆いマルスは倒れ込んだ。


爆音とリアの悲鳴が聞こえる中マルスの意識は少しずつ遠のいていった。


痛みの感覚すらないマルスにはリアの悲鳴とヒールと叫び続ける声が聞こえる。


(死ぬわけには・・・いかない・・・)


 その瞬間に体の奥深くにある力が込み上げてきた。それと同時にハッキリとしたリアの声が聞き取れた。


「レイズデット!」


力がみなぎりマルスは再び立ち上がった。その目の色は再び黒から蒼い色に変わっていた。


――――夢の時の様に。




「マルス!よかった・・・」


リアが歓喜の声を上げ、フェスト達は安堵の溜息をついた。


マルスの目の色と共鳴するかのようにリアの指輪が輝きだして指輪からはリアの意志に関係なくウンディーネとシルフが召還された。


 「天光術が復活したんだね。力はまだ少ないけど」


「ぐっ・・・早く援護してもらえないか?」


騎士団の一人、ケルクがゾウスの剣を押し返しながら言った。


マルスが倒れていた間、リアや他の女の騎士はマルスの回復に専念して後の三人は全員でゾウスと戦っていた。


「ありがとう、助かった。話は後だ・・・今はゾウスを倒す!」


マルスが走り出すのと同時にゾウスは三人を吹き飛ばして笑みを浮かべた。


 「天光術か・・・しかし目的の物がもう一つあるとは・・・フォシテス様もお喜びになる」


その瞬間マルスは動きを止めリアとフィンも息をのんだ。


「フォシテスだと?」


ドラムのことを思い出したマルスは表情に憎しみを浮かべてゾウスを見た。


「・・・コンティスペル」


マルスが小声で光術を唱えるとマルスの周りに下級系光術のファイアボールやアイスニードル、その他の下級系光術までも現れた。


数十、数百の下級系光術がゾウスに向かっていき、それに続くようにマルスも走り出した。


 ゾウスが光術で呼び寄せた雷を固めて剣にするとそれを振り下ろした。中級光術サンダーブレイドだ。


サンダーブレイドと幾多の下級光術がぶつかり辺りは爆風と砂埃に包まれた。


砂埃で何も見えない中尾を引く悲鳴と爆音が聞こえた。


 おそらくサンダーブレイドでも相殺しきれなかった下級系光術が次々とゾウスに当たったのだろう。


「まだ・・・!」


ゾウスは攻撃を受けてもまだ立ち続けて剣を構えた。


マルスはそのゾウスの懐に飛び込むと無言の気合いと共にマルスは剣を突き出した。剣は幾つにも分身してその剣先はゾウスを捕らえた。


 何回か剣先が弾かれたがそれでも一撃一撃がゾウスに致命傷を与えた。


―――突連閃。超光速で剣を何度も突き出す連続攻撃で相手に致命傷を与える。


ゾウスは短く悲鳴を上げると倒れた。


 「・・・殺せ」


ゾウスは力無い声で言った。その目からは覇気は失せていた。


「殺さない、フォシテスのことを教えろ」


動けなくなったゾウスにまだ剣先を向けたままマルスが冷静に言った。


「教えて欲しいのか?なら教えてやる」


崩れた壁からまた一人男が入ってきた。


 砂埃も治まり辺りが見えるようになったリア達は目の前にある光景を見て安堵の溜息を吐いた。


「・・・マーク・・・か・・・」


 「動くな、そのままにしてろ」


マークの一語一句が呪文のようにマルス達は体が動かなくなった。


ニヤリと笑みを浮かべるとマークは倒れ込むゾウスに回復系光術を唱えた。


「まったく・・・お前はヘマをしすぎだ」


「す、すまないマーク。だがこいつ強すぎるんだ」


ゾウスは何処か怯える様子でマルスを指さしながらマークを見た。


「・・・強い?・・・こいつがか?」


苦しそうに顔をゆがめるマルスに冷たくマークが言い放った。


「くそ・・・もう一人いたなんて思―――――」


体が石になったようにマルスはそのまま倒れた。


「マルス!?」


慌ててリアはマルスに駆け寄りヒールをかけた。


しかしマルスは倒れたまま起き上がらなかった。


 「――――残念だが、ヒールは傷を癒すだけだ。疲労は癒してくれない」


フィンが倒れ込んだマルスを見てリアに言った。


「リアさん、マルスさんを頼みます、君たちは手を貸してくれ・・・奴らを倒すぞ」


リアは頷いて後方に待機して残りの四人はフィンの側に来て戦闘態勢に入った。


 「ウンディーネ、シルフ・・・マルスは大丈夫なの?」


心配そうにリアが訊ねた。


「あの男が言うとおり・・・かなりの疲労状態ですね。いきなり天光術を使ったからでしょう」


「でも心配はいらないと思うよ、少し休めば動けるさ」


シルフは笑みを浮かべて言った。


「笑ってる場合ですか?まったく・・・」


ウンディーネが厳しい顔をして言った。


「ご、ごめん」




 「・・・ホープとミラは光術で援護を頼む・・・ケルク、フェスト、行くぞ!」


フィンの合図と共にホープとミラは詠唱に入りケルクとフェストがフィンの後に続いた。


「ゾウスあの先頭の奴を頼む。俺は後ろの二人をやる」


ゾウスは素直に頷くとフィンに向かって走り出した。


 「まぁゆっくりやろうぜ?」


マークがそう言うとまたケルクとフェストが動きを止めた。


「・・・動けないなら光術を使うまで・・・サンダーブレイド」フェストが呪文の名前を唱えると瞬時に雷の刃が現れマークを襲った。


その瞬間呪縛が解けて、動けるようになった二人は一気に攻撃を仕掛けた。


 「紅龍斬っ!」


ケルクが持った剣が炎を纏ってマークを切り裂いた。


それに続くかのようにフェストが剣を振るう。見事にコンビネーションが決まりマークは吹き飛んだ。


「調子に乗るなよ!」


血を流しながらも立ち上がるとマークが怒声を上げた。


マークは瞬時にフェストの目の前に来るとニヤリと笑みを浮かべた。


 そして、マークのサーベルが光りを帯びてフェストを切り裂いた。


「のっ・・・やろっ!!」


倒れるフェストを横目にケルクは特攻した。


不意打ちを受けたマークは口から血を吐くと膝をついた。


 そんな二人とは違いフィンは巧みな剣術でゾウスはじりじりと追いつめていた。


「ちぃ!」


ゾウスはフィンの攻撃を避けると足を蹴りフィンのバランスを崩した。


そして倒れるフィンにゾウスは剣を振り下ろした。


「なっ!?」


だがフィンはそれを片手で受け止めてもう片方の手に持っていた剣でゾウスを切り裂いた。


 「く、ぅ!マーク・・・援護してくれ!」


ゾウスはフィンから間合いを取るとマークに助けを求めた。


ケルクを吹き飛ばしマークはゾウスの方を向くと光術を唱え始めた。


 「・・・・・デモンズランス」


マークは舌打ちをしながらフィンに向かって光術を唱えた。


無数の黒い槍がフィンの周囲に現れてフィンに向かって飛んできた。四方八方からの槍は避けようもなくフィンの体を貫いた。


「ぐっ!?ぁああ!!」


赤い鮮血がとんで、フィンは力無く地に伏せた。


ミラがすぐさまフィンの側に行き回復系光術を唱え始めた。


「フィン団長!!・・・・貴様ぁぁぁ!!!」


自らの傷にも構わずフェストが剣を突き出しながら特攻した。


向かってきたフェストの剣をいとも簡単に短刀で吹き飛ばし、マークは短刀で連続して斬り付けた。


最後の力を振り絞ってフェストは至近距離から光術を放った。


しかし敢え無くマークの持つ短刀で光術は防がれてフェストは倒れた。


 「いい加減に!絶氷凍孔!」


背中に着けていた弓を取り出すとホープは矢を放った。


勢いよく飛んだ矢の周りは凍りつき始め、槍の様に長く鋭い矢がマークを射抜いた。


「かはっ」


刺さった矢はまだ冷気を放ち傷口さえも凍らせた。


その隙をついてケルクがマークを切り裂いた。


「くそっ貴様!・・・ん?こ・・・れは・・・そうか・・・」


傷口を手で抑えたままケルクを見つめてマークは呟いた。


 「じろじろ見てる暇があるのか?フェストやフィン団長が回復すればお前は不利だぞ?」


ケルクが勝ち誇ったように言った。


「・・・数が多ければ一掃するまでだ・・・。ゾウス先に行け!」


「まさかあれを?・・・分かった」


慌てて走り去るゾウスを確認すると詠唱し始めた。


「わざわざ詠唱しているのを見ているとでも!?」


詠唱を止めるべく走ったケルクは途中で止まった。


「くそッ!またか!!」


悔しそうに叫ぶケルクだが全く動けない。それは他の仲間も同じようだ。


 「冥空より来る神の雷・・・全てを焼き尽くす業火・・・全てを呑み込む大いなる水・・・


全てを切り裂き吹き飛ばす大烈風・・・大地は割れ、人は消え去る・・・」


大気が震え、床から凄まじい熱が感じられる。


「いけない!」


慌ててウンディーネがケルク達の前に立った。


「地獄を凌駕する、苦しみを受けよ!ラージェストペイン!」


雷が落ちた瞬間体が麻痺して動かない。想像を絶する痛みが走り体が焼ける。


服が焦げる臭いが立ち込めて風が吹き荒れ、水に呑み込まれ息が出来ない。


その苦しみは永遠に続くかと思う程に酷かった。風が身を切り裂いた後に体中に衝撃が走った後その苦しみは唐突に終わった。


マークと精霊以外誰もが立つことが出来ない。辛うじてウンディーネが守ってくれなければ全員が塵と化していただろう。


そのウンディーネも力を使い果たしリアの指輪へ戻って行った。残ったのはシルフとマークだけ。


 「僕だけじゃどうしようもないね、契約者が倒れてしまっているから」


シルフが苦々しく言った。


「・・・ここは退くとしよう・・・魔力が底をついた。もはやどうすることも出来ない・・・。


だが、何にも持たずに帰る訳にもいかないんでね。この男は貰っていくよ」


マークがケルクをかついでシルフに言った。


 「やっぱりね。僕も薄々気が付いて居たんだけど・・・。その男の人、聖剣エクスカリバーを持てる」


「俺達が聖剣を狙っていることをいつ知った?」


マークが驚いたようにシルフを見つめた。


「随分・・・前からだよ!その男の人はとても強い剣気を持ってる。どんな剣でも使えこなせ・・・」


シルフは体に走る痛みに顔を歪ませて蹲った。


「・・・やっぱりキツイや・・・君を見逃すのは惜しいけど契約者の意識がないと――――」


最後まで言い切れずにシルフは指輪に戻った。


 「精霊を奪っていきたいが・・・やはり指輪を無理矢理奪うことは不可能だろう・・・」


「マルスか・・・フォシテス様にお伝えしなくては・・・『天光術が復活した』とね」


そう言い残すとマークはケルクをかついだまま姿を消した。

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