表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Destiny Memory  作者: まーく
2/10

第一章 記憶探しの旅へ

第一部 記憶探しの旅へ



第一章 最初の記憶




 暗い町でマルスは剣を持って立っていた。辺りの家は焼けこげて嫌な臭いがする。


遠くで、近くで、色々な声が聞こえた。


悲鳴、笑い声、魔物の声。逃げ遅れた人々が抵抗も出来ずに魔物に襲われている。それを止めようとした戦士さえもなぎ倒し、魔物は


人を殺し続けた。


 そして、気が付けば幾人もの戦士が力尽き、罪なき住人が倒れている。


何人かは仲間と一緒に逃げた。だが、逃げ遅れた人には目も向けられない状態だった。


(何故こんな・・・あいつは・・・あいつのせいで・・・)


 悲鳴が止み薄気味悪い笑い声が響く、声の主は自分を見ていた。


魔物のような目は身を震わせるほど恐ろしい物だった。


 「マルス・・・天光術を渡さなかったお前のせいで罪なき人々は殺されたのだ」


男が言った。


「違う―――僕は・・・!!」


体の中で凄まじいほどの憎悪が渦巻き剣の柄を強く握りしめる。


「ははははははは!!!苦しめ!恨め!そしてこれ以上住民を殺されたくなければ我に服従しろ!」


「断る!!――――貴様は・・・貴様だけは許さない!」


マルスは剣を男に振り下ろした。


だが、男は攻撃を簡単に避けた。


「なんと無力な!その無力なお前が我にさえ従えば住民を救えたというのに」


「黙れ・・・」


「住民が死んだのはお前の責任だ」


薄気味悪い笑みを浮かべながら男は言った。


「黙れ、黙れ、黙れ!!!」


「お前が我の仲間になれば皆無事だったのだ」


冷酷に、残酷に、男は確実に言葉でマルスを追いつめていった。


「黙れぇぇぇぇ!!!!」


マルスの目からは涙があふれ出していた。


自分の無力さと男の行いにマルスは我慢ならなかった。


(悔しい・・・力があれば!)


 「ふふ・・・どれほどの力を出しても住民を守ることはできないのだよ・・・」


「うぅぅうぁぁぁああああああ!!!!!」


そのときマルスのなかで何かが解き放たれて目の色が変わった。


そして、マルスの体からは凄まじいほどの風が巻き起こり男はたじろいだ。


 「これが・・・これが真の天光術か!さっきとはまるで違――――――――」


男の声は爆音に掻き消された。


凄まじい数の光術でできたレーザーが男に命中したのだ。


―――そして辺りは爆風に包まれた。




 「マルス?大丈夫!?マルス!」


リアが耳元で言ったのでマルスは驚いて起きあがった。


「はぁ・・・はぁ・・・夢・・・なのか?」


冷や汗が吹き出しマルスの顔からは血の気が引いていた。


(今のは俺の記憶なのか?だとしたら・・・)


 先程の光景を思い出すと吐き気と憎しみが渦巻いてきた。


「マルス、大丈夫なの?顔が真っ青よ?」


心配そうに呆けていたマルスの額を触った。


「熱はないみたい・・・でも・・・今日はやめておこうか?」


リアが水をマルスに渡した。


「いや・・・俺は行かなきゃ」


リアに渡して貰った水を一気に飲み干すとリアに笑って見せた。


(俺?今日のマルスはどこかおかしい)


リアの脳裏に少しの不安がよぎった。


「でも・・・」


心配そうな顔をしてリアがマルスに近付いた。


「大丈夫だ。たかが・・・夢だ・・・」


マルスはにっこりと笑って言ったがリアにはとても笑う気にはなれなかった。


(やだ・・・あたしまで暗くなっちゃだめよね)


リアは心の中でそう言ってマルスを心配する気持ちを心の奥にしまった。


 「・・・じゃあ早く着替えて!色々と薬を買いに行かなきゃ」


リアは元気を振り絞るように明るい声で言った。


「何もそんなに急がなくてもいいだろう?」


マルスがあきれてそう言った。


「昨日も言ったけど夜のラマ草原に行くのは自殺行為!だから早くしないと!」


「分かったから部屋から出てくれないか?リアの前で着替えるわけにはいかないだろう」


少し悪戯っぽくマルスが言った。


「あっ・・・!ご、ごめん!」


リアは顔を真っ赤にして部屋から飛び出ていった。


 マルスはすっかり目が覚めて着替え初めた。


「もういい?そこあたしの部屋だから・・・その・・・髪とか整えたいの」


リアがドア越しに言った。


「あぁ、もう着替え終わったから入っていいよ」


ドアを開けるとリアがゆっくり入ってきて鏡の前に立ち髪を整え始めた。


 「―――ねぇさっきの夢・・・一体?」


リアは髪を整える手を休めて我慢しきれず心配そうに訊いた。


「悪夢なんて誰でも見るだろう?大丈夫だ。心配など無用だよ」


マルスは何処か悲しそうな顔で言った。


「そう・・・分かった。マルスが話したいって思ったときに話してくれればそれでいいよ。――――本当のことも」


最後の言葉を発したときリアは悲しそうに俯いた。


 「―――知っていたのか?俺が嘘を言っていたこと」


マルスは信じられないという表情でリアを見た。


「あの時、挙動不審だったから嘘を付いてるのかなって・・・」


「あたしって信用できないのかな?」


目を涙ぐませてリアがマルスに言った。


「・・・いつかは必ず話す」


(今は・・・今は話せない・・・一つ目の記憶が戻ったとき・・・話そう)


 「―――さっ!それじゃ朝食にしましょう!もちろん食べるわよね?」


話を逸らすかのようにリアが立ち上がり台所へ行った。


「あぁ・・・リアは料理が上手いからな」


マルスは昨日の夜に食べたリアの手料理を思い出して言った。


リアは普段の食事は自分で作っていたので料理は得意だった。


朝食は目玉焼きとスープとパンだった。


マルスは夢を思い出すと食欲が湧かなかったがリアのことを思うと少しは食べようと思い、スープだけ飲むと外に出た。


家の裏に回ると綺麗な町並みが揃っていた。


 「この前見ていた町の光はこれだったのか・・・」


マルスは一瞬夢のことも忘れて笑みをこぼしていた。


「そろそろいこっか?」


リアが家から出てきてマルスに声を掛けた。


「あぁ・・・買い出し――――だったな」


「準備はできたしいつでもいけるよ」


 「ああ、行こう・・・ゆっくりと・・・夜になるまでな」


「夜!?駄目だってば!」


聞いていなかったの?と言わんばかりにリアが声を張り上げた。


「夜行かなきゃ駄目な気がするんだ」


マルスは空を見上げた。


「・・・・・マルスが言うならそうなのかな・・・しょうがない・・・時間でも潰す?」


リアが大きくため息をついて言った。


「どうせ時間を潰すなら買い物の後に光術のことを教えてくれないか?僕も知っておいた方がいいと思ってね」


(言葉遣いが戻ってる・・・やっぱり気のせいよ・・・)


リアの中にあったモヤモヤとしていた不安は晴れた。


「いいわよ、嫌って程教えてあげる」


リアは太陽のような笑みを浮かべてそう言った。


それから夜までリアはマルスに光術の原理などを全て教えた。




 「なるほどな・・・ん?もう夜か・・・じゃあ出発だ」


二人は剣や杖、回復道具などを持って家を出た。


すると鈴が鳴り、光がラマ草原を指した。その光はこの間の物とは格段に違う輝きだった。


 「やはり夜だったんだ」


自分の予想があたり、満足そうにマルスは頷いた。


「でもなんで夜なのよ・・・魔物が出るじゃない!」


リアが嫌そうに言った。


「そんなことを言われてもどうしようもない・・・とにかく行くぞ」


リアを無理矢理引っ張ってマルスが歩き出した。


「痛い!もう!自分で歩けるわよ!」


その後しばらくリアはマルスと口を利かなかった。


ラマ草原に入ってから1時間ほど経った頃に鈴が鳴り始めた。


 鈴の光は地面を指して鈴の音と共に光が止んだ。


「・・・・この土が入り口ってのか?」


マルスが嫌そうに言った。


「んー違うと思うわ、こんな時こそ光術の"スケアスサーチ"ね」


そう言うとリアが一歩前に出て地面を見た。


「確か入り口などを見つけるために使う光術だったな・・・だがここはただの土しかないぞ?」


「あら、やってみなきゃ分からないでしょ?さ、やるわよ」


リアが地面に向かってスケアスサーチを行うと地面に不思議な紋章が


 浮き上がりその紋章が光を発し出すと地面がずれた―――いや、扉が開いたのだ。扉の下には階段があった。


「・・・馬鹿な」


唖然と入り口をマルスは見た。


「ね、入り口あったでしょ?」


リアが悪戯っぽく笑った。


「これからもスケアスサーチは必要だろうな・・・」


マルスを先頭に二人は階段を下りた。


 「どうやら遺跡みたいね・・・いかにもなにか出そう・・・」


遺跡の中は湿気が多く気持ちが悪かった。


狭く太陽の届かないこの場所は魔物の巣窟のような物だった。


中にはキノコのような魔物が湧くように現れマルスはその魔物を切り払って進んだ。奥に進む毎に気味が悪くなった。


しばらく進むと広い場所に出た。三方向に進む道があったが二人は一度ここで休むことにした。


 「寝ても良いぞ見張りは俺がやる」


地面に座り込みマルスが言った。


「変なことしないでしょうね?」


疑わしげにリアがマルスを見つめた。


「ば、馬鹿か!?僕がそんなことをするわけ無いだろう!」


マルスは少し顔を赤くしながらもピシャリと言った。


「なーんて冗談よ、冗談♪」


リアは舌を出して笑って見せた。


「まったく・・・」冗談じゃない、マルスは心の中でそう言った。


 「でも、いいの?マルスの方が眠そうだよ?」


寝袋を地面に敷くとリアが言った。


「俺が寝ればいいと言って居るんだ、寝ておいた方が良い」


「ふぅん・・・じゃあそうさせてもらうわ。でも眠たくなったら起こしてね、かわってあげるから」


そう言うとリアは眠りについた。


 リアが寝てから敵は全く来なかった。


2時間くらいたっただろうか。マルスはそう考えながら持ち込んだサンドイッチをほおばっていた。


その時キノコの魔物とは違う魔物の鋭い叫び声が遠くから聞こえ遺跡に木霊した。


 「なんだ?!」


思わず立ち上がりマルスは剣を構えた。


「何?何があったの?というか、今の声は一体なに!?」


リアが驚いて目を覚ました。


「奥の方だな、行くぞ!」


荷物を背負うとマルクは声が聞こえた方の道を進んだ。


「まって!髪くらい整えさせて!」


リアは叫んだがマルスには聞こえなかったらしくマルスはそのまま進んでいった。


「・・・もういいわよ」


リアは諦めてマルスの後を追った。


リアは狭い通路をマルスを追って、ようやく追いつくと絶句した。


 「こんな魔物見たこと無いわ」


リアとマルスの何倍もある巨大な魔物が目の前に居た。


牙と爪が長くあんな物で攻撃されたらひとたまりもない。鋭い目つきは夢の中の男を思いださせる。


体は長い毛で包まれている。幸いこちらにはまだ気が付いていないようだった。


 「光術で援護を頼む・・・」


マルスはそう言って巨大な魔物の懐に飛び込み足を切り裂いた。


「え!?あ・・・うん、分かったわ」


リアは左手でピシャリと顔を叩いて目をカッと開いた。


魔物は叫びマルスを見ると雄叫びを上げて手を振り上げた。


 「リア、絶対にそこから動くなよ!接近すると危ない」


マルスは魔物の一撃を間一髪で避けた。


「なるべく強い光術で攻撃してくれ!」


マルスは長く鋭い魔物の爪を剣で受け止めたが力が及ばず吹き飛ばされた。


「アイス・ランス!」


リアがそう叫ぶと無数の氷の槍が現れ魔物に向かっていった。


無数の氷の槍は魔物に直撃して魔物の体からは青い血が噴き出した。


 しかし魔物は怯みもせずマルスに向かって爪で攻撃し続けた。魔物の連続的な攻撃でマルスは足を滑らせてしまい体勢を崩してしまった。


そこに魔物が容赦なく攻撃を行いマルスは倒れ込んだ。


「マルス!」


思わずリアはマルスに駆け寄ろうとしたがマルスに言われたことを思い出して行くのを堪えた。


「はぁ・・・それでいいんだ!」


マルスが肩から血を流しながらゆっくりと立ち上がって言った。


 魔物がまたマルスに襲いかかろうとしたときにリアが大声を上げて魔物の気を引きつけた。


「フレイムアロー!」


高い声で叫ぶとリアは魔物の目を狙い炎の矢を放った。


そして炎の矢は見事に魔物の目をつぶした。そのすきにマルスは魔物の懐に飛び込んだ。


「でやぁぁぁぁぁ!!」


マルスはありったけの力を込めて切り上げ、魔物を裂いた。


魔物は鮮血を吹き出しながら悲鳴を上げて倒れ、マルスはそれを見つめてリアにとどめを刺すように言った。


リアは言われたとおり光術で魔物にとどめを刺すと魔物は燃え上がり、やがて消えた。


 「マルス、大丈夫?」


リアはパックリと割れた左手の傷口をリカバリーで回復させながらマルスに訊ねた。


「こんなの大したことはない――――――あれは」


マルスは何処か見覚えのある地面に描かれた紋章を見つめた。


「この紋章・・・リアはそこに居てくれ」


(朝の夢の鍵があるかもしれない・・・)


マルスはふと、そう考え紋章を見つめた。


「うん・・・」


まだ心配そうにリアはマルスを見つめていた。リアにはもう二度と会えないような気がしたからだ。


 「大丈夫だよ、また戻ってくるさ」


リアの気持ちを悟ったのかマルスは穏やかに微笑んだ後、


顔を引き締めてリアの視線を後ろに紋章の上に立った。


すると鈴の音が辺りに響きマルスは突然体が引っ張られるような感覚に襲われた。




 気が付くとマルスは綺麗な町に居た。


「今戻った」


ボロボロになったマルスがそう言うと町中から歓声が沸き上がった。


(ん?僕はこんな言葉を言おうと思っていないのに・・・)


「お疲れ様でした。本当にありがとうございます!」


町長だろうか他の住民とは違い豪華な服を着ている。


「そんな、当然のことをしたまでです。山の魔物は倒しました・・・ですがまだ危険は―――」


(そうか・・・記憶だから昔僕がしたとおりのことしかできないのか)


「いえいえ!いいんですよ、山の魔物を倒して下さっただけでもいいのですよ!」


「そうですか、それならいいのですが・・・」


 「では私はこれで失礼します」


礼儀正しくマルスは一礼した。


「え!?何でですか?お供の人もまだいますし・・・ゆっくりしていって下さい」


町長が言った。


「いや色々とあるので・・・共を連れて失礼させてもらいます」


そう言ってマルスは仲間がいる家に入った。


 「戻ったか・・・よくやったな、マルス」


斧をかついだ男が言った。


「天光術は使いこなせるようになったか?」


鋭い目つきをした銀色の髪をした男が言った。


「いや、あれはまだ完全じゃない、発揮しようにも全ての力は出せないんだ」


「そっか・・・でもいつかは使えるようになるよ!」


亜麻色の髪の毛をした少女が言った。


「ははっ、そうだといいけどね・・・」


マルスはしばらく少女と見つめ合った。


 すると、突然悲鳴が外から聞こえた。


「なんだ!?」


マルス達は慌てて外に飛び出した。


見れば長髪の男が居た。


「お前は誰だ!?」


マルスは剣を構えた。


「我の名はフォシテス!」


男が自分の名を名乗ると光術で人々を吹き飛ばした。


 「リリィ回復を!」


マルスが指示を出すと少女が倒れた人々を回復した。


「貴様ぁ!」


斧を持った男がフォシテスに向かっていった。


「ドラム!よせ!」


マルスが走るドラムに声を掛けた。


しかし斧を持ったドラムの頭の中にはフォシテスのことしかなくマルスの声は届かなかった。


 「愚かな、その程度で我を倒すというのか?」


ドラムの斧は片手で受け止められドラムは吹き飛ばされた。


「俺がやる!」


銀色の髪をした男はフォシテスに手をかざし凄まじいほどの雷を放った。


「無駄だ・・・」


フォシテスは男が放った雷を弾き返した。


「何!?――――――っぁああ!」


男は自らはなった雷にうたれて倒れてしまった。


「グレアっ!」


マルスは凄まじい形相でフォシテスを睨んだ。


 「何の恨みがあって村人を攻撃した?」


マルスは剣に力を込めてフォシテスに近付いた。


「恨み?無いさただ邪魔だったんだよ」


フォシテスはそう言って嘲笑った。


「お前・・・お前の目的はなんだ?」


 「天光術を手に入れるのが目的さ・・・」


「それだけが目的で罪無き人を・・・!!」


ついにマルスは走り出した。


「はぁあああ!!」


凄まじい早さの切り上げ攻撃でフォシテスは避けきれずに倒れた。


「それで済むと思うなよ!」


マルスは光術の力を剣に込めて切り上げ、そして空中で叩き落とすと、同時に閃光が走った。


気が付けばフォシテスは地面に倒れ込み体からは鮮血が出ていた。


 「飛翔閃光斬っ!」


その様子を見てマルスは鞘に剣をしまおうとしたとき後ろで笑い声が聞こえた。


「甘い・・・な・・・この程度で私を倒せると・・・思っているのか?」


フォシテスは血だらけになりながらも立ち上がって言い放った。


「なに?」


愕然とフォシテスを見つめてマルスが言った。


「天光術の力を出して見ろ・・・」


そう言うとフォシテスはリリィに光術を放った。


リリィは悲鳴を上げて吹き飛んだ。


「リリィ!」


マルスはリリィに駆け寄った。


「マルス?・・・大丈夫よ・・・すぐ回復できる・・・から」


苦しそうに―――――だが、笑ってリリィが言った。


「・・・わかったここで休んでいろ」


マルスは心配そうにそう言うとフォシテスに向き直った。


 「フォシテス・・・お前は許さない・・・完全じゃないが望み通り見せてやる」


マルスはそう言って光で体を包んだ。


「まずは下級光術の乱れ撃ちだ!」


そう言うとマルスの体からは無数の火の玉や雷が現れ、フォシテスに向かっていった。


「なに!?避けきれな―――――」


フォシテスは傷が深く足が思い通りに動かなかった。そしてマルスの攻撃は全てが命中した。


「これで終わりではない、次は天光術を付加した剣で貴様を切り裂く」


天光術で剣の鋭さを高め、マルスは一気にフォシテスに接近すると瞬時に体を切り刻んだ。フォシテスの体からは赤い鮮血が噴き出した。


鋭い斬撃に思わず叫び声を上げたフォシテスにマルスは更に至近距離から光術を放って吹き飛ばした。


フォシテスはそのまま飛んでいき、もの凄い音を立てて民家に激突した。


 「ふふ・・・ふはははは!!!見たぞ!・・・見たぞ・・・天光術の力・・・我が物にするにふさわしい。


さぁ・・・その力を我に渡せ・・・」


倒れたままフォシテスは不気味に笑って言った。


「断る。何故、貴様にこの力を渡さなきゃならない?」


マルスは倒れるフォシテスに容赦なく追撃を行った。


「くくくく・・・ならば・・・力ずくで奪うまでだ・・・」


そう言ってフォシテスは金切り声で叫んだ。


その声は体中から鳥肌が立つほどおぞましく嫌な声だった。思わず皆が耳を塞ぎ歯を食いしばった。


(記憶でもその時感じた感覚は受けるのか・・・!?)


嫌な音は記憶世界に居るマルスにまで伝わってきた。


 そして遙か彼方の草原から無数の黒い影が見えた。――――それは魔物だった。


「ドラム、グレアあの魔物達を頼んだ。僕はこの男を倒す」


マルスが指示を出すと二人は頷いて


ドラムは斧を構えて迫り来る魔物との戦闘に備え、グレアは精神の集中に入り上級光術の準備に入った。


「リリィは動けるか?動けるなら人々の避難を手伝ってくれ」


「・・・任せて」


リリィは怪我をした人の回復を終えるとその人達を連れて逃げた。


 「どこを見ている?」


フォシテスは立ち上がると瞬時にマルスの前に来て拳を振るった。


「しまった――――」


避ける暇もなくマルスはフォシテスの拳を顔に受けた。


痛みでうずくまるマルスに容赦なくフォシテスが蹴りを加えた。


更に一撃を加えようとフォシテスが手を振り上げると同時にマルスはサッと立ち上がると間合いを取った。


「そんなに簡単に負けられない」


口の中が切れて血の味が口に広がった。


そしてマルスは鋭さを上げた剣を再びフォシテスに向けた。


 「剣のような軟弱な武器で・・・我の槍をかわせるか?」


光術で作ったのかフォシテスが土から槍を取り出した。


少し驚いた後にマルスは槍にも構わずフォシテスに向かって走り出した。


 マルスは思い切り剣を振り下ろした。だが、槍の柄で受け止められてしまった。


「ふ・・・この程度か?」


フォシテスが勝ち誇ったように笑みを浮かべている。


「冗談、それで防いだとでも?―――はぁ!」


マルスは気合いを入れて剣に力を込めると柄を切り落としてそのままフォシテスを切り裂いた。


「何だと!?」


フォシテスはマルスの斬激を受けて膝をついた。


「だ、だが・・・これで終わるわけにはいかぬ!」


そう言って震える足で飛び退くと自らの傷をリカバリーで癒した。


(長期戦になりそうだ・・・)


 マルスがそう考えていると鋭い叫び声が聞こえた。


魔物が町に到着したのだ。次々と魔物が降りてきてマルス達を睨んだ。


精神集中をしていたグレアが目を見開いて凄まじい光を手から発した。


そして、グレアが魔物の塊にターゲットを定めると叫んだ。


「アークコメット!!」


グレアが叫ぶと光術でできた巨大な彗星が魔物の塊に落ちた。


落下した彗星は爆音をあげながら粉塵を巻き起こした。そして周囲を凄まじいほどの閃光で包み魔物を一掃した。


その一撃を受けても尚生き残った魔物をドラムが見据えて、それから斧を振り回し次々と魔物を蹴散らした。


 そして一人の騎士がマルス達が戦う姿を見て、剣を抜いて魔物に斬りかかった。


「下がれ!死にたいのか!」


ドラムが目の前の敵を倒して言った。


「私は騎士団に誓ってこの町を守ると約束した。だから戦うのだ。名はモルロン!行くぞ、魔物共!」


一匹の魔物を切り倒しモルロンが叫んだ。


 ある程度の住民の誘導を終えて戻った騎士団の隊長は一人戦うモルロンを見てしばらく考えたあと剣を抜いた。


「我々とて・・・この町を守る騎士団!死んでもこの町を守り通す!」


隊長が一声上げると大勢の騎士達が同意の声を上げた。


隊長に続いて騎士達が次々と剣を抜き隊長が進撃の号令を掛けると騎士達が魔物に襲いかかった。


 「貴様達になんかに屈するものか!・・・それはこの町の人が証明してくれる」


マルスそう言って笑うと再びフォシテスに剣を振り上げた。


「ふん・・・ならば惨劇を味合わせてやる―――――ダーク・イネイ」


フォシテスは薄気味悪く笑うと手の上に黒い球体を作った。


そしてそれをマルスに放った。マルスは金縛りにあうかのように体が動かずその球体はマルスに当たった。


だが、なんともなかった。痛みもなければ血もでない。


(これは?ただの脅し?・・・違う・・・それだけのはずが・・・ない・・・)


マルスは気を失った。




 「しまった・・・気絶して・・・!?」


マルスが頭を抑えながら立ち上がると絶句した。


辺りは火の海と化していて騎士達と逃げ遅れた住民が息絶えている。


所々でまだ悲鳴が聞こえる。


(この光景・・・夢の)


グレイとドラムの姿が見当たらない。


 「マルス・・・天光術を渡さなかったお前のせいで罪なき人々は殺されたのだ」


(やはり今日の夢と同じ・・・)


そして二人がしばらく話しているとマルスの目の色が変わった。


「これが・・・これが真の天光術か!さっきとはまるで違――――――――」


フォシテスの声は掻き消された。


(体に力がみなぎる・・・)


レーザーはフォシテスの体を貫き爆発した。


そして爆風に包まれると悪夢のような光景が消え失せた。


 「これは・・・幻覚・・・だったのか・・・」


マルスは体中に入っていた力が抜けていくのと同時に安堵の笑みを浮かべた。


(そうか、そういうことだったのか・・・)


自分の記憶を見て安心したマルスは安心して涙を流した。辺りが光に包まれ景色がなくなった。


ただ真っ白な空間にマルスは居た。


 「よく試練に耐えましたね」


高い女の声が聞こえた。


「誰だ?」


流れる涙を拭うと声の方に向いた。


「私の名はウンディーネ水を司る精霊です。良いのですよ、涙は自らの心の傷を癒してくれる」


女は優しく言った。


「そうはいかない・・・」


マルスはニヤッと笑って言った。


「・・・記憶の断片の一つが今見た光景です。昔の仲間の名を思い出したでしょう?」


「あぁ、ありがとう」


「ふふ・・・本当に良く頑張りましたね」


 「それより・・・訊きたいことが山ほどあるんだ」


「・・・私は多くのことを語りません。それでもよろしいですか?」


「構わない―――――それで・・・天光術とは何だ?」


「分かりました、天光術について少しだけ語りましょう。貴方は生まれながらにして私達に選ばれました。


そして選ばれた貴方は天光術を授かったのです」


「選ばれた?・・・ウンディーネやオリジンにか?」


「察しがよいですね。その通り、貴方は我ら精霊に選ばれた。そして選ばれた貴方に天光術を与えました」


「・・・なるほどな、それで続きは?」


「残念ながらこれ以上は語れません・・・」


「精霊界の掟・・・か?」


マルスは俯いて小さな声で言った。


「・・・その通りです」


申し訳なさそうにウンディーネは困ったように笑みを浮かべた。


 「さぁ・・・天光術の一部の力を授けましょう。いえ・・・返しましょう」


「返す?・・・そうか僕が死んで天光術の力は貴方達精霊のもとに戻った・・・ということか」


「その通りです。記憶を取り戻していくのと同時に天光術の力も取り戻すでしょう」


 「では、力を戻します・・・」


ウンディーネの手が輝きだした。


すると同時にマルス自身の体も光り輝き、その上力がみなぎっていくのが感じ取れた。


とても心地よく思わず眠ってしまいそうだ。


「天光術を引き出すのは貴方次第です。頑張って下さいね」


ウンディーネの言葉を聞いて頷いたあと、光はゆっくりと消えていった。


「終わりました。では貴方の付き人も待っているでしょう。またどこかで・・・さぁ戻りなさい」


ゆっくりとマルスが頷くのを確認するとウンディーネは優しく微笑み「さようなら」と言うのを確認した瞬間にあっという間に遺跡の中に戻った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ