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Destiny Memory  作者: まーく
10/10

第九章 再開、そして戦いの始まり

長らく更新せずに申し訳ないです><


出来れば、評価をお願いします…

第九章 再開、そして戦いの始まり




 「そうですか、裏庭の木に………」


フェストがワットの方を向いて頷いた。


「クリンとレクセルはまだ目を覚まさないのですか?」


心配そうにワットが言う。


「ええ、でもワットさんが声を掛ければ目を覚ますかもしれません」


「…………そうですね」


疲れたように肩をがっくりと落として、ワットが言った。


 「ところで、クリンちゃんはワットさんの孫と言うことは分かるのですが、レクセルと言う男は………?」


「孫、ですか………確かに私はそう思ってきました」


「どういうこと?」


不思議そうにシャインが言った。


「………クリンは、本当の孫ではないのです」


「だからどういう―――――」


「シャイン、契約して指輪へ」


見かねたリアが、小声で言った。


嫌そうにシャインは返事をすると、契約してリアの指輪の中に入った。シャインの指輪は七色に光るオパールの指輪だ。


その光景を不思議そうに、リアとマルス以外の者達が見ている。


 「―――――気にせずに続けて」


マルスがそう言うと皆が頷いた。


 「実はレクセルもクリンも本当の孫ではないんです。レクセルとクリンは血の繋がった兄弟なのですが」


「………?」


「この町の入り口に二人の赤ん坊が捨てられていた。それがレクセルとクリンです」


「酷い話………」


ミラが顔をしかめて言った。


「………二人はそのことを?」


「知っています。それでも私のことを"お祖父ちゃん"、と呼んでくれるのです」


「………そんな時、二人を捨てた親が家へ来ました。その時レクセルが11歳、クリンが8歳でした」


「二人の親は私に何度も何度も謝った。でも、とても許せるようなことではない」


その時の事を思い出したようで、ワットは眉間にしわを寄せて言った。


「そんな話を二人は聞いていたんです。レクセルもクリンもすぐに状況を把握したようで、親に駆け寄って行きました」


それからワットはその時のことを詳しく話し始めた。




 『あなた達が、僕たちの親………?』


レクセルが静かに言った。


『そう………』


母親が静かに頷いた。


『………………どうして私達を捨てたの?』


普段の元気の良いクリンからは想像できないほどの小さな声でクリンが言った。


『クリン………』


『すまなかった、ほんとに―――――』


父親が口を開いたとき、レクセルは目を見開いて父親の顔を思い切り殴った。


『ぐっ………!!」


どさっという音がして、父親は倒れた。


『謝ったところで………』


『謝ったところで何が変わるんだ!!』


そう言ってレクセルは部屋を飛び出していき、後を追うようにクリンも部屋を飛び出していった。


その様子を無言で皆が見つめた。


『お帰り下さい………あの子達は責任を持って私が面倒を見ます』




 「そして、二人を無理矢理押し返すと、私はレクセルとクリンに全てを話しました―――――そして今に至るわけです」


「………そうなんですか」


 「―――――話は変わりますが、ワットさんを閉じこめた連中、奴らはまた仕掛けてきます。どうするのですか?」


フェストが言った。


「それですが………できればあなた方に協力を頼みたい。この町の戦力と言えばレクセルくらいですから」


「それはもちろんです」


マルスが即答したのでワットは少し驚いた様だった。


 「それには私達も参加させて頂く」


声がする方を見るとそこには見覚えのある顔があった。それは―――――マークだった。


「久しぶりだな、マルス」


鎧で身を包んだマークがうっすらと笑みを浮かべて言った。


「………あぁ」


マークをちらりと見ると、素っ気なくマルスが言った。


 「―――――よくもケルクを………!!」


マークの姿を見た瞬間、ミラは迷わず短刀を取り出すとマークに飛びかかった。


「落ち着けよ」


咄嗟にミラの手首は誰かに掴まれて、短刀はマークの目の前で止まった。


「離して!離し―――――」


 「よっ、ミラ」


その声を聞いてミラは短刀を落とした。


「ケ……ルク?―――――それにフィン団長まで……」


全員が呆気にとられた。刹那に操られていたはずのケルクが居て、重傷のはずのフィンまでがマークの隣に立っているのだから。


フィンもケルクも綺麗な鎧に身を包んでいる。


 「話せば長くなるのだが、とりあえず今はそんな暇がない……王宮騎士団を連れてきた、戦場へ行くぞ」


フィンが現れた早々にそう言った。


「マークにゾウス………じゃあ奴らが?」


マルスがマークに向き直り言った。


「あぁ、攻めてきた」


「外じゃもう戦闘が始まっている。マークの仲間達も加勢してくれているから、君達も今すぐ向かってくれ」


フィンはそう言った後、ハッとしたように後ろを向いた。


 「どこから入った!?」


慌てて剣を抜くとフィンが大声で言った。


その瞬間、空気がピンと張り詰めてその場の全員が剣を抜いた。


「待て、俺は敵じゃない」


包帯だらけの体でレクセルが言った。


「レクセル! お前、その傷で………」


ワットは慌てた様子で立ち上がり、レクセルの側に駆け寄った。


「俺は大丈夫だよ、お祖父さん。―――――行ってくる!」


そう言ってレクセルは家の壁を飛び越えて町の出口の方へ駆け抜けていった。


「あの傷で行くのは無謀すぎる―――――マーク、レクセルを追うぞ」


マルスが心配そうにしているワットを横目に言った。


「確かにそれが得策だ。奴も戦力の内だからな」


そう言うとマルスとマークもレクセルの後を追った。


「ちょっと待て二人とも―――――しまったな…………作戦を作る予定だったのだが」


 「町に入る正式ルートの他に、昔の炭鉱から地下に敵が来る可能性もある。念には念をと言う奴だ。


可能性は低いが………な」


「確かに、この町は昔から鉱石が採れる炭鉱がありますからね。あり得ることです」


ワットの顔からは血の気が引いている。レクセルの事とフィンが言った言葉が彼に相当の負担を与えているのだろう。


 「ともかく、部隊を分ける必要がある」


フィンがいつものように顎髭をいじりながら言った。


「………敵数は少なくても約150人、対するこちらは70人………」


ゼツが静かに言った。それを聞いてワットがハッとしたようにゼツを見つめた。


「な、何か……?」


「住人の避難は!?」


「安心して下さい。全ての家に強力なバリアが張ってあります。上級光術レベルでも防ぐでしょう」


ゼツがワットの気をなだめるように、優しい声で言った。


「ふむ? 誰がそんなことをやっている?」


フィンが不思議そうに言った。


「仲間のカトラが、入り口近くの見張り台でやっています」


「そうか、それならいいのだが………」


 「それで俺達はどうすればいいんですか? 団長」


ケルクが言った。


「とりあえず…………フェスト、ケルク、ホープ、ミラ、そして私はここを守る。


ワットさんはここで待機して下さい。リアさんはカトラさんと一緒に見張り台でバリアを」


「地上のことは、安心してマルスとマーク達に任せよう。各自、なにかあったら光術を上に向かって放て、それが助けの合図だ」


フィンがそう言うと皆が頷き、リアはカトラの元へと駆けていった。




地下から出ると、二人は血まみれになったレクセルと、ぐったりとしている何人もの敵を見た。


「これは………」


辺りの衝撃的な光景を目にした二人は言葉を失った。


「いきなり、襲いかかって来て…………ぐっ…!」


傷口を顔をしかめながら押さえて、レクセルが言った。


「レクセル、お前は町へ早く戻れ。こんな所に居ても邪魔になるだけだ」


マークは辺りに居る敵が生きているか確認しながら言った。


敵は皆、生きてはいたが虫の息だった。


「分かりました。後は、頼みます」


レクセルはそう言うと、足を引きずって地下へと戻っていった。


「さぁて………どうする?」


マークが剣を鞘から抜くと辺りを見回して言った。


「敵達には応急処置を施そう、敵とはいえ見捨てる分けにはいかない」


「それもそうだな………」


二人は回復光術で倒れている敵を回復すると三度あたりを見回した。


 「敵は居ないようだが………」


「あぁ、いくら俺の仲間が強いとは言っても、これは異常だ」


辺りからは戦地というのに声すら聞こえない。


「警戒を怠るなよ………」


マークがそう言うと、ゆっくりとマルスは剣を抜いた。


 「―――――? ………………くっ、右に飛べ!!」


マークは突然そう言って左に飛んだ。そして迷わずマルスも右に飛ぶと、さっきまで二人が居たところに隕石が落ちた。


その爆音が鳴り響くと、辺りから先程とは想像できないほどの騒音が耳に入った。


「しまった、幻術か………」


その瞬間に辺りでは互いの兵士が激突している様子が目に入った。


 「爪翔連牙(ソウショウレンガ)


一瞬で血飛沫が舞い、数人の敵が同時に倒れる。


「マークさん、無事ですか?」


ぼろぼろになった鎧を着て、男が言った。


「あぁ。それで戦況は?」


「敵の数が多すぎますね。この前の比ではありませんよ。ですがややこちらの方が有利だと思われます。


幸いにも死傷者はまだこちらには出ていませんし、言われたとおりに追撃は仕掛けていません」


「そうか………そうだ、こいつは…」


「知っています。マルスさんですよね? 私はマークさんの部下でギースと言います。よろしく」


丁寧に挨拶をするとギースは後ろに居た敵を斬り飛ばした。


「ふぅ、やれやれ………」


(口調は穏やかだが、剣の腕前は穏やかじゃないな………)


マルスはそんなことを考えながら、ギースと握手を交わした。


 「それと、ゼフィスさん達は何人かの敵の将を倒しているみたいです。それで、残っているこの部隊の主戦力は


テン、ポレオ、コレオ、メルキリーの四名です。リーダーのテンとメルキリーは要注意です。


敵はこの辺りに居るはずです。完全な場所は特定できていませんが………すいません。以上で報告を終わります。では――――」


それだけ言うとギースは再び敵の集団に飛び込んでいった。


「慌ただしい奴だ」


マルスはそう言うとやれやれと、首を振った。


「気にするな、それよりも重要なのはすぐにでも主戦力を叩くことだ。無駄な戦闘は無駄な血を生む」


「そうだな、とにかくここを突破しなければ話にならない。どうする?」


「俺の"とっておき"を使えばいいだけの話だ」


「分かった」


(全員、飛び上がれ!)


マークのトゥントが近くに居る全ての仲間に伝わった。


慌ててマークの仲間達は全員飛び上がると、それを確認したマークはカッと目を見開き、詠唱した。


「ラージェスト・ペイン!!」


あっと言う間に何人もの敵が吹き飛び、地に伏せた。


仲間達が着地する頃には立っていられる敵は数えるほどしか居なかった。


「行くぞ」


「あぁ」


二人は倒れている敵を横目にテン達を探しに走り出した。




 「刹那様の増援はまだか?」


マーク達がテンを探しているころ、テンは自らの基地で待機していた。


「それが、刹那様が操っていた男が自らの片腕を切り落として………無理矢理に洗脳を解いたらしく―――――」


ポレオが少しおどおどした様子で言った。


「ばかな………そんなことが………。いや、そんなことよりも、増援はどうなるんだ?」


「つい先日、ディス軍の三将や約60名の兵士が全員やられたとかで、デスハーツの紋章も見つかったみたいです。


故に………増援は期待できないかと………」


今度はコレオが言った。


 「はぁ………仕方がない、ディス様に通信を」


顔を手のひらに埋めてテンが嫌そうに言った。


「しかし、ディス様は………」


コレオとポレオが顔を見合わせて溜息を吐いた。


「いいから、繋げ」


テンが少し怒ったような顔で言った。


「おい、繋いでくれ」


慌ててコレオとポレオが同時に近くに居た兵士に言った。


兵士は慌てて通信機の方へ行き、交信をし始めた。


「……………………回線、繋がりました」


兵士はテンにそう言うと部屋から出て行った。


「ディス様、お久しぶりです」


 「…………おぉー! テンのおっちゃん、久しぶりー」


モニターに映し出されたのはまだ背も余り高くなく、声の高い、まさしく子どもだった。


「それで、なんの用なのー?」


近くにあったお菓子を頬張りながらディスが言った。


「………先日、増援を出して貰った部隊が全滅したそうで………」


「あらー、ウェインが居たのに? んー…………ウェイン、強かったのになぁ」


「―――――それで、こちらの戦況があまり………」


「なるほどねー。それで増援が欲しいってこと?」


「はい」


「分かった。なら蒼炎(そうえん)を出すよ、あと………ウェインが見つかったらすぐに連絡をちょうだいね」


少し寂しそうな表情でディスが言った。


「蒼炎、ですか? 聞いたことがないですが………まぁ、ウェイン様のことは承知しました」


「蒼炎は最近設立したばかりの空中部隊なんだ。そちらに着くまで………一時間かな。それまでは持ち堪えられるでしょ?」


「なんとか………」


 「ふふ、蒼炎は"人"ではないから扱いには気を付けるんだよ」


その言葉に違和感を感じながらもテンは頷いた。


「………あ、そうだ。忘れていたけれど、刹那様はもう既に復活されている。


つまり………招集がちかいうちにあると言うこと………まぁ頑張ってね。それじゃあ、また」


そう言い残すと、モニターの映像と共に音声が途切れた。


 「招集………か………。招集には必ず参加しなければならない、つまりここは切り抜けるしかない。


私達も外へ出て、敵を殲滅(せんめつ)する。一時間だ。一時間耐えろ」


「了解しました。―――――いくぞ、ポレオ」


「御意」


素早く二人は上着を脱ぎ捨てると、あっと言う間に黒い忍び装束(しょうぞく)に着替えた。


そしてテン達は戦場へと踏み出した。

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