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引越し屋 完了!

引越しは、2件目に突入し、昼食後も3件目と続いた。。リュウジの首に掛けたタオルは、もう汗でびっしょりだ。3件目の荷物をトラックに積み込んだ頃には、日が落ちて真っ暗になっていた。



「バイト君。これで最期だから。」


「ハイ!」


「エレベーターがあるから、台車を使おう。」


「絶対に、落すなよ! エレベーターの出口でいいからな!」


「ハイ!」



★☆☆☆☆★★★☆



リュウジは手間取っていた。なかなか思ったように台車が動かないからである。


「あ、あれ、台車ちゃん。どこいっちゃうの?あ、あれ?」


もう、何分も台車に弄ばれている。ヤバイ。リュウジ、大丈夫か?



「おい!コラッ!何やってんだ!さっさと持って来い!」


眼鏡の方の社員さんが怒鳴る。


「い、いや。台車が上手く動かなくてですね。」



「ば、ばかっ!それ、反対だ。台車には向きがあるんだよっ!」


「え、そうなのっ。あ、わっわわああ~」


積荷のダンボールとともに、リュウジは大きく倒れた。


「こ、この!しっかりやれよ!」


必死で、崩れたダンボールの山を積みなおすリュウジ。


そのリュウジを足で蹴っ飛ばす。


「ひっ、ひいい~」



「また崩れるだろ!こんな積み方じゃ! 交代だ!ここまで運んでくるから玄関まで運べ!」



★☆☆☆☆★★★☆



リュウジは落ち込んでいた。こんな簡単なことができないなんて、そんなバカ呼ばわりされたり、足蹴にされたり、自分に対する怒り、眼鏡の社員さんに対する怒り(逆切れ)で、「わああ~~」って叫びながら飛び出したい気分だった。



トラックの陰でうな垂れて座り込んでいるリュウジに、小さい、年配の方の社員さんが話掛けた。


「まあ、気にするな。初めてなら頑張った方だ。」


慰めているようだ。リュウジは顔を上げた。目が真っ赤だ。泣いていたのだろうか。



「オレ、今日、何にもできませんでした。怒られてばっかでした。トラックを誘導する時も、「声が小さいっ!」って怒られたし、挨拶も起こられたし、荷物の梱包ができなくて怒られたし、最後の最後にコレですよ。もう、笑ってしまいますよね。」


「誰でも、そんなもんだ。初めから何でもできる奴はいないよ。」



「で、でもっ! おじさんは冷蔵庫でも一人で持つし、梱包だって凄く早いじゃないですかっ!オレ、そんな力もないし、手先も不器用だから…」



「いいこと教えてやろう。わしの体格はいいほうか?寧ろ、小さい方だし、筋力だって、ほら見てみろ、そんなにムキムキしてないだろ。でも、冷蔵庫が持てる。なんでかわかるか?」


「そ、そうですね。不思議ですね。」

リュウジは怪訝な顔をして答えた。


「荷物には、持ち方のコツがあるのさ。ダンボールなら、こう持つ。長い、例えば物干し竿なら、重心のあたりを抱えるようにして、こう持つ。その動作、動作に、動き方のポイントがある。それを、しっかりできれば、こういう仕事も筋力とか関係なくできるようになる。逆に筋肉に頼りすぎると、腰がやられたりして、わしぐらいの年齢で引退することになる。」


「へ~。そういうもんなんですか!今度やってみます!」


「うん。特に、手や腕、腰は酷使せず、足で動くことが大事なんだ。そうすれば、多少重くても運べる。梱包の方は、あらかじめ準備を全て済ませてから機械的に、サッサッっと終わらせれば早くできる。まあ、こういうのはコツだよ。一緒に働いている人をじっとみて、動きを真似するんだ。」


「観察して、動きを真似るんですか。」


「ああ、そうだ。そうしていれば、きっとできるようになる。」


★☆☆☆☆★★★☆



作業が終了したのは、夜の9時だった。しかも、遠くの町で降ろされてそこから自力で帰りなさいと言われてしまった。酷い!


「鴨野龍司ですけれど、今、現場、上がりました。」


「お疲れ様。リュウジ君ね。今日は急なお仕事ありがとう。上手くできたみたいね。評価も上々だったわ。特別にEランクにしてあげる。」


「え、評価良かったんですか?いっぱい怒られたし。蹴られるくらい。。」


「そう?でも、比較的良い評価になってるわよ。とりあえず、Eランク昇格おめでとう。」


「はい。ありがとうございます。ちょっとお聞きしたいんですが、よくわからない場所で、トラックを降ろされちゃったんですが、どうやって帰ればいいんでしょう?ここがどこだかもわからないんです。」


「大丈夫よ。交通費は出るから。大人なんだから、頑張って帰ってね。交通費は、後で事務所で請求できるから、じゃあね♪~」


「う~。ココハドコ??ど、どうしよう。」


暗闇に閉ざされた町で、一人佇むリュウジだった。





なかなか話が進まない。まあ、いつものこと。

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