初仕事だ!リュウジ!
時は、5月の連休前。
リュウジは、一人、携帯をジッと見つめていた。
そんなに見つめても何もおきないぞ。リュウジ。
バイト協会に登録したものの、待てど暮らせど仕事の連絡はなかった。
そして、2週間が経ってしまった。
「ヤバイ。これでは可愛い粘菌達を養えなくなってしまう。…もう自分の食費を削るしかないのか。」
リュウジはゲームもしないし、漫画も買わない。ネットも家ではしない。現代では非常に珍しい青年である。その生活は非常に「清貧」に分類されることだろう。粘菌へ餌代を除いて。
「あああ、早くバイトしないと~」
そう叫んで頭を掻き毟り、机に突っ伏した。
ピロロロ…
その時、携帯電話の音が鳴り響いた!!
「っ… あわ、もし、もし、鴨野隆司です。」
「『もしもし』じゃないわよ。もっとハキハキ『はい!鴨野です』って言いなさい。…まあ、いいわ。今日は仕事をあなたに割り振ろうと思って電話しました。」
「え、仕事ですか?やったあ!いつです?どんな仕事です?」
「ちょっと落ち着いて。あなたにもできそうな簡単なお仕事よ。日給で6500円。モデルルームの看板持ちです。ゴールデンウィークの初日ね。空いてます?」
「もちろん空いてますよ~場所はどこです?いやあ~うっれしいな~」
「じゃあ、お仕事入れるわよ。詳細はメールでお知らせするので、時刻と場所はそれで確認してください。それじゃあ、頑張ってね。期待してないけど。」
「はい。頑張ります。それじゃ。」
ピッ。リュウジは、携帯電話の通話を切った。
「ヤッホーい。仕事だ!」
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5月の穏やかな風に吹かれながらリュウジは自転車を走らせた。
乗客の少ないバスに乗り、隣町の穏やかな住宅街に向かう。
もちろん、遅刻しないよう、トラブルがあってもいいように、仕事開始時刻の30分前に現場に着くバスに乗っている。前回、事務所に行くのに遅刻しちゃったからね。
よし、今日のオレ。気合入っているぞ!
「おはよ~すっ。… あ~れ。誰もいないな。」
オドオド
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「おはよう。君が今日のバイト君か。いろいろ準備があるからちょっと待っててくれないか。」
モデルルームの社員さんが話しかけてきた。どうやら、この人がお客さん(依頼人)らしい。まあ、優しそうな30歳くらいの青年だ。休日なのに頑張ってるな~
「は~い。」
「じゃあ、あのイスに座って、この看板を持って、ずっと座っていてくれないか。」
「看板持ってるだけですか?それだけ?旗とか振るとか…」
「いや。余計なことをしなくていいよ。看板は法律上、だれかが持ってないといけないんだ。漫画でも読みながら看板支えていればいいよ。楽だろ。トイレはそこにあるから。じゃあ、宜しく」
リュウジはキョトンとしていた。こんな楽な仕事。… これで、いいんだろうか。