リュウジはGランク
リュウジは駆けた。おお、意外に速いじゃないか。そんなに急いでどこに行く。
ピロロロ…
ん。この音は携帯か?鞄の中か?
リュウジは立ち止まり携帯を開いた。
「はい。もしもし。鴨野ですが。」
「どうしたのですか?指定したお時間が過ぎていますよ。」
年配の女性の声がする。
「すみません。た、太陽の光が眩しくて。必ず向かいますので。」
おい。どんないい訳だ。なんでも太陽のせいにすればいいってもんじゃないぞ。
「よくわからないけど、とにかく急いで来てくださいね。」
ガチャ
走れ、リュウジ。なんだかよくわからんが、走れ。遅刻だ!走れ!
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リュウジは、汗でびしょぬれになりながら、たらたらと歩きながら
雑居ビルのエレベーターに乗った。
「はあ、はあ。もう、ハシレナイ。」
この軟弱者め。草食系どころかプラナリア系とよばれちゃうぞ♪
エレベーターが停止した。
そして、扉が開いた。
そこには、「大日本バイト協会」の事務室があった。
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「まず、遅刻はダメです。それに、謝罪の言葉も無い。これでは、失格です。」
年配のお局様風のいかにもキャリア積んでます!って感じの人がなんだか怒っている。
「ご、ごめんなさい。もう、走れないくらい疲れてしまってですね~。」
お、、リュウジは意外と平気なようだ。
苦笑いの気持ちの悪い笑みを浮かべながらヘラヘラしている。
ここは謝り続けるべきではないだろうか。
「コラ! アンタは何を考えているの! その態度から改めなさい!」
怒られた。まあ、あたりまえか。最近の若いもんはダメだな~ハハッ。
「ご、ごめんなさい。」
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「まず、私は、荻原と申します。あなたのジョブアドバイザーです。
普段は、この事務所で仕事の割り振りや受付をしております。」
「ど、どうも。オレは、鴨野龍司です。」
「まず、当協会のシステムを紹介します。
入会しますと、ジョブデータベースに登録され、各人にあった仕事が
紹介されます。もちろん、ご希望に添えない場合は断っても結構です。
時給はランクによって変動します。ランクはFクラスから始まりSクラス
まであります。入会時は、Fクラスからのスタートです。
ランクの決定は、アルバイト先の評価、経験、資格等によって変動します。
とはいっても、アルバイト先の評価×現場の回数でほとんど決まります。
それから、会社から会員へ支払われる報奨金の4割は、当協会が徴収します。
それで、リュウジさんはアルバイトがしたいということでしたけど、
どんなアルバイトがご希望ですか??」
「ぶっちゃけよくわかんないんで。楽な奴があればいいです。
あ~あと、労働中の事故とか補償されんですか?
物とか壊して弁償しろ!なんて言われても、オレ、払えないですよ。」
おい。リュウジ。その受け答えはどうかと思うぞ。また、怒られるんじゃ…
「リュウジさん。まず、仕事はこちらで割り振るということでいいですね。
当協会で徴収するお金には、保険料が含まれています。ご安心してくださいね。」
あれ、怒らないのか…。
「では、バイト協会により、バイトマン腕時計が支給されますので、
それを差し上げますね。」
「へー。これがバイトマン腕時計ですか。なんかちゃっちいですね。」
うむ。確かに普通の百円で売ってるような黒いビニールの腕時計だ。
「まあ、着けてみてください。」
「では。」
リュウジはバイトマン腕時計を左手首に装着した。
時計のデジタル画面の背景に「G」の赤い文字が浮かびあがった。
「なんですか?これは。すごいですね。」
「その文字が、君の今のランクです。」
「え。んあ。もう一度言ってくれませんか?」
「その文字が、君の今のランクです。
あなたは、Gランク。」
「あ、あれ。Fランクが最低じゃないの?」
「あなたは遅刻もしたし、態度が最低です。
とても現場に送り出せません。Gランクはそういう人のためのランクです。」
ほほ~そんなランクがあるのか。良かったなリュウジ。レアだぞ。それは。
「因みにGランクの下は登録抹消です。これ以上ランクを落さないように
頑張ってくださいね。」
頑張れリュウジ!負けるなリュウジ!仕事はもらえるのか!リュウジ!
次は初バイトに向かいます。どんな仕事が待っているのか。ドキドキ。ワクワク。