赤い帽子
もう何を言っても通じない。
Sはどうしても自分の国が嫌いだった。
Sは職場のカフェで、店内の雰囲気やオペレーションにたくさんの不満があった。
しかし改善の提案を聞き入れてもらえることは無かった。
周りとの調和を求められ、自分の能力を発揮する場所は与えられなかったのだ。
少しでも気分を上げるため、今日はフリルのついた可愛いワンピースを着て出勤した。
同僚のみんながとても褒めてくれた。
「その服可愛いね。色も綺麗!」
みんなシンプルな服装で通勤するので、Sの服は目立ったのだ。
Sは照れながら言った。
「少しでも気分を上げたくてさ。」
普段通り働いていると、常連のお客さんから面白い話を聞いた。
X国では自分の意見を主張したり、自分らしく生きることが評価されるというのだ。
-- この国で否定されることが、X国だと肯定されるのだ。
Sはすぐに海外へ飛び立ち、新たな人生を始めた。
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X国へ移住したSはまずは住居を探した。
手ごろな値段のシェアハウスを見つけたのですぐに決めることができた。
シェアハウスの住人はみんなSのように他国からの移住者だった。
その次は仕事だ。
Sはあまり貯金が無かったのですぐに仕事を見つけなければいけなかった。
ハウスメイトの一人が紹介してくれたカフェで働くことになった。
そのカフェの従業員も、みんなSのように母国を離れた者たちだった。
Sはすぐにカフェの雰囲気に馴染むことができた。
すぐにほかの従業員と仲良くなり、毎日働くことが楽しかった。
X国ではコーヒーには必ずミルクを入れる。
ブラックコーヒーを飲む人は一人もいなかった。
-- 私はブラックの方がおいしいと思うけどな。
それでも、苦い飲み物が苦手な国民性が、Sは可愛いと感じた。
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ある時、Sは母国に帰らなければいけなくなった。
Sの持っているビザではこれ以上この国にはいられないのだ。
夢のような時間をくれたX国を離れ、Sは母国に戻ってきた。
Sにとってこの国での生活はとても苦しい。
常に自分を押さえつけられているような、窮屈な生活だ。
SはとにかくX国に帰りたかった。
いつものようにカフェで働いていると、少し変わった客と出会う。
Oはとても変わった風貌で、明らかにこの国の人ではない。
どうやらY国から旅行で来ているらしい。
SはすぐにOに興味津々になった。
Oからは、今まで聞いたことないような、全く異なる文化の話を聞くことができた。
何より、楽しそうに自国の文化を語るOに、Sはすぐに心を惹かれた。
数年間の交際の末、SはOからプロポーズされた。
こんなに幸せな瞬間をSは感じたことがなかった。
夫婦となった二人は、Oの祖国であるY国で暮らすことにした。
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移住して間もなく、Sはたくさんの人が赤い帽子をかぶっていることに気づいた。
Sは聞いた。
「なんでみんな赤い帽子を被ってるの?」
Oは誇らしげに言った。
「この国では、赤い帽子を被ることが立派な成人の証なんだよ。
逆にそれがないと、1人前に扱ってもらえない。」
これは歴史の深い伝統らしい。
Sはさっそく赤い帽子を手に入れた。
「これで私もみんなと同じ、一人前の大人ね。」
Sはこの国で暮らすことがとても楽しかった。




