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止まぬ雨と君との出会い

作者: 天瑚 神樂
掲載日:2026/03/20

雨止みを待つ中、彼女が現れた。その瞬間だけ、世界から雨音が消えた気がした。

傘のない僕の方へ視線を向けた彼女は

「傘、貸そっか?」

そう言った。

「あっ、えっと…」

「大丈夫、私もう一本あるから。」

そう言うと彼女は、背負っていたリュックの中から折りたたみ傘を取り出し僕に渡した。

「あっ、ありがとう」



「雨、止まないね。」


彼女は空を見上げながら小さく笑った。

その横顔に街灯の光が滲んで、雨粒よりも儚く見えた。


「でも、こうして立ってるのも悪くないかも。」

「どうして…」

「だって、止んだらもう会えないでしょ?」


一瞬、心臓が跳ねた。彼女は冗談めかして笑ったけれど、僕は言葉を失った。


「私、帰るね。」

そう言って彼女は歩き出した。

僕は立ち尽くしたまま声をかける間もなく彼女は見えなくなってしまった。

雨止まぬ空の下で独りになった僕は家路についた。

また雨の日に、あの人に会える気がして、傘を強く握った。


……それから一年

あの時と同じ場所で似た空の色を見た僕はふと思い出した。

あの日の雨。あの傘。あの笑顔。


信号で立ち止まる僕の横に、見覚えのある傘。

僕は彼女だと確信した。

声をかけようとした時、彼女と目が合う。

僕は一年前の彼女の笑顔を思い出した。あの日と同じように彼女は笑った。

「雨だね。」

「そうだね。」

僕は思い出したかのようにカバンの中から折りたたみ傘を取り出した。


「これ、一年前の君に借りた傘。」


その傘を見た彼女は驚き、


「ありがとう。覚えててくれたんだね…」


と、そう言って傘を手に取った。

彼女は小さく呟いた。


「返しちゃったら、もう会えなくなるかも。だから持ってて。」


彼女は微笑んだが、どこか寂しそうな顔をした。

あの日とは違う笑顔を僕は彼女に貰った。

気がつくと雨は静かに止んでいた。



また会ったら君と……


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