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告白翌日の教室で

朝、目が覚めた瞬間、最初に思った。


(……夢じゃ、ないよね)


胸の奥が、じんわりあたたかい。

でも同時に、現実に戻るのが怖くて、布団から出られなかった。


告白された。

好きだって言われた。

それも、「ずっと前から」。


なのに。


教室でどう振る舞えばいいのか、分からない。


(普通でいいんだよね)

(昨日のこと、なかったみたいに)

(私だけが意識してたら、変だよね)


そんなことを考えながら、学校へ向かった。


教室に入ると、いつもと同じ音。

いつもと同じ席。

いつもと同じ――斜め前。


朝倉くんが、もう座っていた。


(……いる)


それだけで、心臓がうるさくなる。


でも彼は、私を見ない。

ノートを開いて、ペンを持っている。


(あ、そっか)


(昨日のこと、引きずってるの、私だけか)


少しだけ、胸が軽くなった。


……でも、寂しい。


席に着いても、私は前を見られなかった。

ノートを開いても、文字が頭に入らない。


授業中、先生が黒板に書く音だけがやけに大きい。


ふと顔を上げたとき、

朝倉くんが、ほんの一瞬だけ、こちらを見た。


目が合った。


一秒もない。


それなのに、心臓が跳ねる。


私は慌てて視線を逸らした。


(だめだめだめ)


(落ち着いて)


(私は、いつも通りでいなきゃ)


休み時間、真帆が後ろから小声で言った。


「……生きてる?」


「なにそれ」


「顔。魂半分抜けてる」


私は小さく笑った。


「普通だよ」


「普通じゃない」


真帆は、私の顔をじっと見てから、何も言わなかった。


それが逆に、怖かった。


(……みんな、分かってるのかな)


(私だけ、必死に隠してる?)


でも、朝倉くんは、何も言わない。


それが、優しさなのか、距離なのか――

まだ、分からなかった。

朝倉君の視点


正直に言うと、

教室に入る前から心臓がうるさかった。


昨日、言った。

やっと言った。


白石がどう出るか、何百通りも想像したけど、

今日の教室は、どれも想像してなかった。


白石が、来た。


足音で分かる。


(……あ)


反射的に、顔を上げそうになるのを止めた。


見たら、きっと、

昨日の続きを期待してしまう。


期待して、

白石を困らせたくなかった。


だから、見ない。


ノートを開いて、

いつも通りのふりをする。


でも、視界の端に白石が入る。


座る仕草。

カバンを掛ける音。


全部、分かる。


授業中、ふと顔を上げたとき、

白石と目が合った。


……しまった。


一瞬だったけど、

白石が慌てて視線を逸らすのが見えた。


(……ああ)


(やっぱり、意識してる)


それが嬉しくて、

同時に、胸が痛くなる。


白石は、自分の気持ちを後回しにする。


だから俺は、今日は何もしないと決めてた。


話しかけない。

距離を詰めない。

昨日のことを、教室に持ち込まない。


白石が、

「大丈夫」って思えるまで。


それでも。


休み時間、白石の後ろ姿を見て、

何度も名前を呼びそうになった。


我慢。


昨日からずっと、そればっかりだ。


でも、我慢するのは慣れてる。


今度は、

白石が逃げなくなるまでの我慢だから。

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