第93想 魔法試験・終幕――過去を越え、前へ
壇上では、レイリアスが一度全体を見渡し、再び口を開く。
「そして――総合部門。
こちらはチームでの成績と、個人戦の内容を合わせた総合評価となります」
会場の空気が、再び張り詰める。
「第三位同率――
魔法執行部チーム、そして風紀委員チーム!」
名前が告げられると、それぞれの陣営から拍手と歓声が上がる。
「そして……第ニ位。
生徒会チーム!」
一瞬、会場がざわついた。
「あの生徒会が二位?」
「じゃあ……一位は……?」
驚きと期待が入り混じった視線が、壇上に集まる。
レイリアスは、わずかに間を置いてから、はっきりと告げた。
「――栄えある第一位は……
不知火チームです」
次の瞬間、会場が一気に沸き立った。
「特に個人戦での戦いは、審査員一同、強く印象に残りました。
試練に真正面から向き合い、それぞれが己の壁を越えた、見事な戦いでした」
歓声と拍手が止まらない。
燈也たちは顔を見合わせ、実感が追いつかないまま、ただ笑い合った。
「優秀な成績を残した皆さんには――」
レイリアスは続ける。
「『マジックウィザードトーナメント』への出場権利、
そして、魔法協会主催パーティへの参加資格が与えられます」
その言葉に、会場は再び大きくざわめいた。
「あの……マジックウィザードトーナメントへの出場権だって……?」
「嘘だろ……」
生徒たちの間に、驚きと羨望の声が広がる。
――マジックウィザードトーナメント。
各国の魔法学校から選ばれた精鋭たちが競い合う、名誉ある大会。
年に一度だけ開催され、世界各国の要人や有名人が参列する、魔法界屈指の大舞台だ。
「本当におめでとうございます」
レイリアスは穏やかに微笑みながら言った。
「トーナメントでの皆さんの活躍を、心から期待しています」
そう告げて、壇上から静かに降りる。
入れ替わるように、ドライツェンが前へ出た。
「では――これにて魔法試験を終了する」
その声は厳格でありながら、どこか労いを含んでいた。
「二日間、本当によくやった。
今はゆっくり休むと良いのである」
試験は終わった。
自宅の屋上。
夕暮れの風が静かに吹き抜け、フェンス越しに沈みかけた空が広がっていた。
リエラは、隣に立つ燈也の横顔をそっと見つめる。
どこか肩の力が抜けた、その表情に気づいて、小さく微笑んだ。
「なんだか……晴々した顔をしてるわね。何かあった?」
燈也は一瞬、言葉を探すように視線を空へ向け、それからゆっくりと口を開いた。
「……最後の個人戦でさ。
昔のダチの幻が、現れたんだ」
リエラの表情がわずかに引き締まる。
「それって……」
「ああ。中学の頃、つるんでた悪友だよ」
苦笑交じりに言いながら、燈也は拳を軽く握る。
「でさ……思いっきり、ぶっ飛ばしてやった」
「……」
「もちろん、幻だけどな」
自分に言い聞かせるように続ける。
「でもよ、不思議と……少し、吹っ切れた気がしたんだ」
風が、二人の間をすり抜ける。
「先輩の仇を取れた……ってな」
その言葉に、リエラの胸が静かに痛んだ。
「燈也くん……」
呼びかける声は、自然と優しくなる。
燈也は気づかぬまま、空を見上げたまま続けた。
「まぁ……先輩には、笑われるかもしれないけどな」
少し照れたように、鼻を鳴らす。
「『まだまだだ』ってさ。」
「それでも……」
燈也は一度言葉を切り、ゆっくりと息を吸う。
その声には、もう迷いはなかった。
「これで、少しは胸張って――
先輩の墓参りに行ける気がするんだ」
リエラは、空を見上げる燈也の背中を見つめながら、そっと目を閉じる。
「そうね……」
静かに、しかし確信を込めて言う。
「きっと先輩も、喜んでくれると思うわよ」
彼が前を向いて歩き出したこと。
それこそが、何よりの答えなのだから。
夕焼けに染まる空の下、
二人はしばらく、何も言わずに並んで立ち続けていた。
次回 『第94想 転校生は、ただ者じゃない――真条聖妓、登場』
新たな出会い。
転校生・真条聖妓の登場が、学園に波乱を呼ぶ――。
部活動設立を巡る思惑、
立ちはだかる理不尽と衝突。
そして迫る夏。
部活動設立を巡る思惑、
立ちはだかる理不尽と衝突。
仲間を集め、信念を貫くことはできるのか。
――新章開幕ーー




