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Himeyuri ―魔法嫌いの元学園最強と、幼馴染の約束から始まる魔法学園譚ー  作者: 小鳥遊 千夜
第二章 魔法試験編

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第92想 魔法試験・終幕――


 試験用に構築された異界の門が、ゆっくりと開いていく。

 淡い光が収束し、その中から燈也(ともや)たちの姿が現れた。



 全員、立っている。

 誰一人欠けることなく。


 次の瞬間、会場全体にどよめきが走った。


不知火(しらぬい)チーム!

 なっ……なんと全員合格でクリアしたぞ!これは凄い!!』


 興奮を隠しきれない実況席から、吉良(きら)の張り上げた声が響く。

 観客席からも拍手と歓声が巻き起こった。


『お疲れ様でした。

 これは結果が楽しみですね』


 落ち着いた口調で、解説の愛紗(あいしゃ)が続ける。


 門の前で立ち止まった燈也は、一度大きく息を吐き、仲間たちを見渡した。



「皆、やったな」


 その声は静かだが、確かな達成感が滲んでいた。


「アタシにかかれば当然よ」


 流水(るみ)は腕を組み、胸を張る。

 いつもの自信満々な笑みだが、その瞳の奥には、確かに戦い抜いた者の疲労があった。


「頼ってばかりじゃいられないですからね。頑張りました」


 怜花(れいか)は少し照れたように笑いながら言う。

 それでも、その表情には迷いのない強さが宿っていた。


「足引っ張らずに済んで良かったです」


 癒水(ゆみ)はほっとしたように、優しく微笑む。

 仲間全員が無事だったことが、何より嬉しいのだろう。


「オレ様にかかればこんなもんよ」


 最後に郷夜(ごうや)が腕を広げ、これでもかというほどのドヤ顔を決める。


「でも他はともかくとして、アンタが合格するなんてね……」


 流水が半眼で呟く。


「オレ様を見くびんなよ!」



 即座に食ってかかる郷夜。


「しかも相手は、あのドライツェンだったんだぞ?

 まぁオレ様の敵じゃなかったけどな。コテンパンに(ひね)り潰してやったぜ」


 話が盛られているのは明白だった。


「今回のMVPは、このオレ様に決まりだな!」


 完全に調子に乗っている。


 その時だった。


「ほう……面白い話をしておるな?」


 低く、落ち着いた声。


 一瞬で、郷夜の顔から血の気が引く。


 背後に立っていたのは、腕を組み、穏やかな笑みを浮かべた魔法教師――ドライツェンだった。


「ひぃいいいいいっ!!

 ほっ……ほ、本物だあああ!!」


 悲鳴を上げ、郷夜は全力で後ずさる。


「ヤレヤレ……カッコ付かないな。お前は……」


 燈也は肩をすくめ、呆れたように溜息をついた。


 ドライツェンは小さく笑い、皆を見渡す。


「ふっ……驕らずに、これからも精進するのである」


 そう言って、ドライツェンは珍しく柔らかな笑みを浮かべた。

 その一言に、張り詰めていた空気がわずかに和らぐ。


 直後、会場全体に澄んだ声が響き渡る。





『皆さん、集計が終わったようです。

 先生方から、これより結果発表があります。お集まり下さい』



 解説席の愛紗の声を合図に、生徒たちがざわめきながら中央へと集まっていく。

 誰もが期待と不安を胸に抱え、視線は自然と壇上(だんじょう)へ向けられていた。


 ドライツェンが一歩前に出る。


「諸君。二日間にわたる試験、ご苦労であった」


 低く、よく通る声。


「これより、理事長から結果発表がある。

 心して聞くように……」


 その言葉に、空気が引き締まる。


 壇上に立ったのは、学院理事長――レイリアス。

 穏やかな表情の奥に、鋭い知性を宿した人物だ。


「生徒の皆さん、試験お疲れさまでした」


 静かな声だが、会場全体に自然と届く。


「どのチームも素晴らしい活躍を見せてくれました。

 審査は非常に難航しましたが……」


 一拍置いて、微笑む。


「そんな中で、今回特に優秀だったチーム、そして生徒を、これより発表致します」


 会場が息を呑む。


「まずは個人部門。遠距離部門――

 夏色みかん、睦月和彦(むつきかずひこ)雫川瑞穂(しずくがわみずほ)佐門丈(さもんじょう)


 名前が呼ばれるたび、周囲から感嘆の声が上がる。


「流石……早々たるメンバーだな」


 どこかの生徒が小声で呟いた。


「続いて、中距離部門。

 鏡膤斗(かがみゆきと)冬丘白(ふゆおかはく)二宮正人(にのみやまさと)風祭雀(かざまつりすずめ)


 次々と名が挙がり、空気はさらに熱を帯びていく。


「近距離部門。

 白金凛(しろがねりん)工藤英明(くどうひであき)服部季節(はっとりきせつ)――そして、漣流水(さざなみるみ)


 その瞬間、燈也は流水の方を見た。


「流水姉、やったじゃねぇか」


「アタシにかかれば当然よ」


 そう言いながらも、流水は口元を隠し、どこか照れくさそうに笑っていた。


「支援部門。

 (ひいらぎ)ななみ、瀬名千鶴(せなちづる)三浦宗次(みうらそうじ)――漣癒水(さざなみゆみ)


「……わ、わたしが!?」


 思わず声を上げる癒水。

 自分の名が呼ばれるとは思っていなかったのだろう。


「おめでとう、癒水」


 燈也が静かに声をかける。


「義兄さん……」


 癒水は頬を赤らめ、小さく微笑んだ。


 そして――。


「そして、今回のMVP――

 不知火燈也(しらぬいともや)


 一瞬、音が消えたように感じた。


(……この俺が?)


 驚きで言葉を失う燈也の肩を、郷夜が力強く叩く。


「流石は俺の親友だぜ」


「おめでとうございます、燈也さん」


 怜花はまるで自分のことのように嬉しそうに微笑む。


「やったじゃない」


 流水も満足そうに笑った。


「義兄さん、おめでとうございます」


 癒水も、誇らしげな表情を向ける。


 燈也は仲間たちを見渡し、ゆっくりと口を開いた。


「……皆のおかげだ」


 燈也は照れ隠しのように短く答えたが、その表情はどこか晴れやかだった。


次回 『第93想 魔法試験・終幕――過去を越え、前へ』


魔法試験、ついに終了。

過去の因縁、消えない恐怖――

それらを乗り越え、彼は一歩前へと進む。


試験を終えた仲間たちと再会し、新たに動き出す運命の歯車。

トラウマを超えた先に待つ、次なる物語とは――。



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