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Himeyuri ―魔法嫌いの元学園最強と、幼馴染の約束から始まる魔法学園譚ー  作者: 小鳥遊 千夜
第二章 魔法試験編

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第85想 後半戦突入!個人戦、いざ開幕

 

 試験会場には、昨日と同じ顔ぶれが揃っていた。

 理事長を中心に、いずれも学園を代表する実力者である教師陣が、静かに生徒達を見下ろしている。


 張り詰めた空気の中、一歩前に出たのは魔法主任の神奈(かんな)だった。


「皆の者、集まったようじゃな」


 鋭い視線が、会場全体を一掃する。


「では、これより後半戦を開始する。昨日も話した通り、本日は個人戦じゃ」


 ざわめく生徒達を一瞥(いちべつ)し、神奈は試験場奥にそびえる巨大な門を指差した。


「準備が出来た者から、この門を潜るの以上じゃ」


 短く、だが重みのある宣言だった。


 直後、会場全体に響き渡る張りのある声。


『さあ始まりましたっ!魔法試験、最後の試練!』

 実況席から吉良(きら)の声が弾ける。


『今回の試練は個人戦!相手に自分のライセンスを触れさせれば勝利となります!』


 単純なルール。


「なんだ、そんなら簡単じゃん」

 郷夜(ごうや)が肩をすくめ、軽口を叩く。


女子(ハニー)達にカッコイイ所、見せてやるぜ」


 だが、その言葉を(さえぎ)るように、神奈が低く告げた。


「侮るでないぞ。相手は、門を潜った者の“一番苦手なモノ”を模した姿で現れる」


 生徒達の間に、どよめきが走る。


「恐怖心が強ければ強い程、その存在は力を増す。じゃが――」


 神奈はゆっくりと言葉を区切った。


「恐れに呑まれず、前に進め。さすれば道は開けるじゃろう」


 その直後、ドライツェンが腕を組み、不敵に口角(こうかく)を上げる。


「くくくっ……何人が合格出来るか、実に見物である」


 その一言が、生徒達の背筋を冷やした。


「ま……マジかよ……」


 郷夜の顔から、さっきまでの余裕が消える。


「ど、どうしよう……」


 明らかに動揺する郷夜の肩に、燈也(ともや)が軽く手を置いた。


「落ち着けよ、風間」


 静かな声だったが、不思議と芯があった。


「女の子にカッコイイ所見せてやるんだろ?」


 その一言に、郷夜は一瞬だけ目を見開き――


「おう、そうだったぜ……!」


 深く息を吸い、拳を握り締める。


「よし!やってやる!」


 恐怖は消えていない。

 だが、迷いは振り払った。




「どいた、どいた!ガハハハッ!俺達なら瞬殺だぜ!」


 豪快な笑い声と共に、周囲の生徒を肩で押し退けながら前へ出る、ひときわガタイの良い男子生徒。

 まるで自分達こそが主役だと言わんばかりの態度だった。


 そのすぐ後ろを、余裕の笑みを浮かべた女子生徒が歩み出る。


「ええ、一瞬で焼き尽くしてやりますわ」


 炎のように気の強さを滲ませた視線が、門の奥を射抜く。


『さあ最初に挑戦するのは、上坂(うえさか)チーム!』

実況席から、吉良の張り切った声が会場を(ふる)わせる。

 

『前回ランキング8位!“白煙(はくえん)篝火(かがりび)”の異名を持つ上坂ほむら先輩!そして“雷王の豪真(ごうま)”の異名を持つ伝来豪真(でんらいごうま)先輩を中心とした、バランスの良いチームだ!!』


『上坂ほむら先輩は高火力の火属性魔法、伝来豪真先輩は強力な雷属性魔法を得意とし、どちらもランクはA。これは期待出来ますね』


 解説の愛紗(あいしゃ)も、落ち着いた声で太鼓判(たいこばん)を押す。


 二人を先頭に、チームメンバー達も胸を張って門へと向かう。

 誰もが、順調な突破を疑っていなかった。


 ――だが。


 門が閉じてから、わずか数分。


「くそっ!あんなのありかよ!!!」


 勢いよく門から飛び出してきたのは、雷王と呼ばれたはずの豪真だった。

 (ひたい)には汗、表情には焦りと怒りが(にじ)んでいる。


「くっ……覚えてなさい!!」


 ほむらも歯を食いしばり、悔しさを隠しきれないまま(きびす)を返す。

 さっきまでの自信は、跡形もなく消え失せていた。


『な、なんということだ!!』


 吉良の声が一段高くなる。


『挑戦開始から5分も経たず、チーム全員ギブアップ!まさに瞬殺だぁ!!』


 会場は騒然。

 ささやき声と動揺が、波のように広がっていく。


「……本当に瞬殺だったな……」


 燈也は、門を見つめたまま静かに呟いた。



「私達も行くぞ」


 凛とした声と共に、風紀委員長・白金凛(しろがねりん)が前へ進み出る。

 背筋を真っ直ぐに伸ばし、迷いのない足取り。その後ろには、同じ腕章を付けた風紀委員の仲間達が整然と並んでいた。


「はい。俺達の正義の強さを見せてやりましょう」


 同じチームの男子生徒が力強く応じる。

 派手さはないが、鍛え抜かれた規律と結束が、その場の空気を引き締めていく。


『続いては、学園の風紀を守る質実剛健・風紀委員会チーム!』


 解説席から愛紗の落ち着いた声が響く。


『特にリーダーの白金凛先輩は、文武両道。その実力は魔法執行部部長や生徒会と並ぶと評されています』


 周りから感嘆の声が漏れる。

 “本命”の一角が、ついに動いた。


「なら……私達も行きましょうか」


 その緊張を裂くように、今度は艶やかな声が響く。

 魔法執行部部長・高天原帝亜(たかまがはらてぃあ)が、余裕の微笑みを浮かべながら姿を現した。


 背後には、副リーダーの工藤英明(くどうひであき)、そして静かに佇む鏡膤斗(かがみゆきと)

 それだけで、場の視線が一斉に集まる。


『おっと、今度は魔法執行部チームだ!!』


 吉良のテンションが一段跳ね上がる。


『リーダーは部長・高天原帝亜先輩!副リーダーの工藤英明先輩も含め、その実力は校内でも折り紙付き!

 さらに今回はもう一人の懐刀、鏡膤斗!今回の優勝候補だぁ!!』


「負けんぞ、魔法執行部!」


 凛が真っ直ぐ帝亜を見据(みす)え、闘志(とうし)(あら)わにする。


「ふふ……相手にとって不足はないわ」


 帝亜もまた、微笑みの奥に鋭い光を宿す。


「油断するなよ」


 英明が短く釘を刺す。


「まぁまぁ、そんなに硬くならずに頑張ろうぜ」


 膤斗が軽く肩をすくめ、張り詰めた空気を和らげた。


「あら……私達もいるのをお忘れなく……」


 さらにもう一つ、静かでありながら圧倒的な存在感が割って入る。

 生徒会副会長・夏色みかんが、優雅な所作で姿を現した。


『次に登場したのは生徒会チーム!!』


 吉良の声が再び会場を震わせる。


『現在一位通過!率いるは副会長・夏色みかん先輩!!

 このまま圧倒的な実力で優勝を掴むのか!?』


 三つ巴。

 風紀委員、魔法執行部、生徒会――それぞれが譲れぬ誇りを胸に、火花を散らす。



「さて……俺達も進むか」


 燈也が振り返り、仲間達の顔を一人ずつ見渡す。

 その瞳に迷いはなく、静かな覚悟だけが宿っていた。


「そうね。やってやるわ!」


 流水が拳を握り、力強く応える。

 揺らめく魔力が、彼女の闘志をそのまま形にしたかのようだった。


「ああ、ここまで来たんだからよ……優勝、目指してやるぜ」


 郷夜は口元を歪めて笑い、肩を回す。

 先ほどまでの不安は消え、今は前へ進む意志だけが残っている。


「ふふっ……皆さん、怪我だけは気を付けてくださいね」


 癒水が穏やかに微笑む。その声は柔らかいが、支える覚悟は誰よりも強い。


「私も……頑張ります!」


 怜花は両手をぎゅっと握りしめ、胸の奥に溢れる想いを押し込めるように前を見据えた。


 その瞬間、会場に高らかな声が響き渡る。


『さあ、不知火チームも門へと入っていきます!!』


 実況の吉良が興奮を隠さず叫ぶ。


『学園最強のSランク、不知火燈也が率いるこのチーム!前半戦も好成績で突破しており、優勝候補の一角と言って間違いない!!』


 観客席がざわめき、期待と注目が一斉に集まる。


「皆……頑張ってね」


 少し離れた場所から、リエラが静かに声を掛ける。

 その眼差しには心配と信頼が入り混じっていた。


「ああ……行ってくるぜ」


 燈也は振り返り、いつものように笑って応える。

 その笑顔は、これから始まる戦いを恐れていない証だった。


 そして不知火チームは並んで門へと足を踏み入れる。



次回『第86想 個人戦開幕――試されるのは強さか覚悟か』



仲間達はそれぞれの恐怖と因縁に引き裂かれていく。


そして燈也の前に現れる、忘れられない過去。




仲間達は、それぞれの恐怖と因縁を越えられるのか。

試されるのは力か、心か、それとも――存在そのものか。



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