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Himeyuri ―魔法嫌いの元学園最強と、幼馴染の約束から始まる魔法学園譚ー  作者: 小鳥遊 千夜
第二章 魔法試験編

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第83想 夜明け前、覚悟は静かに燃える

 

不知火(しらぬい)チーム!やりました!!5つ目の試練をクリアし今ゴールイン!!!』


 燈也(ともや)達が洞窟の出口を抜けた瞬間、実況席の吉良(きら)の高らかな声が響き渡った。


『皆さん、お疲れさまでした。』

 続けて、解説の愛紗(あいしゃ)愛紗(あいしゃ)の声も響く。


 時間は夕刻。

 赤く(かたむ)いた陽が学園を染め上げ、

 長く伸びる影が、今日という一日の重さを物語っていた。


 全ての生徒の試練は終了した。

 あちこちで座り込む者、肩を借りる者、静かに息を整える者。

 達成感と疲労が入り混じった空気が漂っている。



「…皆の者」

 穏やかだがよく通る神奈(かんな)の声が響く。


「今日はお疲れじゃったな」

 神奈が生徒達を見渡しながら頷く。


「明日からは個人戦が行われる。

 今日は無理をせず、ゆっくり療養するんじゃぞ」



 その言葉に、安堵(あんど)したようなざわめきが広がった。


「はぁ……もうヘロヘロだぜ」


 郷夜(ごうや)はその場にどさりと腰を下ろし、

 大の字になりかけながら天を仰ぐ。


「私も早く帰って、お風呂に入りたいわ」

 流水(るみ)はそう(こぼ)すと、肩から力を抜いた。


「そうだな……」

 燈也(ともや)は短く応じる。


「ふふ……凄かったじゃない」


 不意に、背後から軽やかな声が降ってきた。


 そこにいたのは、魔法執行部部長・帝亜(てぃあ)だった。

 試験の後とは思えない余裕の笑みを浮かべ、まるで楽しんだ後のような表情をしている。


 乱れ一つない制服。

 魔力の消耗も、表には一切出していない。


「よく言うぜ」

 燈也は肩をすくめ、からかうように口角を上げる。


「お前ら、2位通過なんだろ?」


「まぁね」

 あっけらかんと答え、空を見上げる。


「でも、結果はまだ分からないでしょ?」


 その軽さの裏に、

 確かな自信と競争心が(にじ)んでいた。


 その言葉に重なるように、今度は別の気配が近づく。


「ああ、その通りだ」


 凛とした声。


 風紀委員長、白金凛(しろがねりん)が姿を現す。

 背筋は真っ直ぐ、視線は鋭い。


「今度は風紀委員か」


 燈也が小さく呟く。


「今回は後れを取ってしまったが」


 凛は帝亜を正面から見据(みす)える。


「後半戦では、こちらが勝たせてもらうぞ。魔法執行部」


「ふふっ……」


 帝亜は楽しそうに微笑む。


「いいじゃない。そう来なくちゃね」


 二人の視線がぶつかり合い、その間に見えない火花が散る。



 その様子を、少し離れた場所から眺める一団がいた。


「……騒がしい連中ですね」


 生徒会庶務の腕章を付けた男子生徒が、

 冷静な目で状況を見渡す。

「我々生徒会を差し置いて勝つ気とは」


「まぁまぁ、いいじゃないですか」


 柔らかな声で笑うのは、

 書記の腕章を付けた女子生徒。


「その方が楽しいですし」


 そして、意味深な視線を巡らせる。


「それに……風紀委員、魔法執行部だけじゃないみたいですよ」


「何やら、面白い子達もいるみたいですし……」


「彼らのことですか?」

 庶務の男子生徒が問い返す。


「ええ」

 そう答えたのは、

 副会長の腕章を付けた女子生徒だった。


 彼女の視線は、一直線に燈也へと向けられている。


「特に……あの少年」


 微かに口角を上げる。


「会長と並ぶSランク……」


 その声には、はっきりとした興味が宿っていた。


「実に、興味深いわ」


 夕暮れの空の下。

 静かに、次なる戦いの歯車が回り始めていた。



次回 『第84想 魔法試験前半戦突破――夜空に誓う絆』


「第5試練――全員無事クリア!

夜空の屋上で交わす、燈也と怜花の約束。

しかし、学園の裏側では、十月花の影が静かに動き出す――。

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