第81想 己を超え、絶望を断て――最後の希望、不知火燈也覚醒!
燈也とドッペルゲンガーは、霧に包まれた空間で向かい合っていた。
互いに同じ姿、同じ気配。
違うのは、その“覚悟の向き”だけだった。
「どうした不知火!!その程度か?」
ドッペルゲンガーが余裕たっぷりに笑う。
まるで鏡に映った自分が、弱さを嘲っているかのようだった。
「ふざけやがって……」
燈也は低く唸り、地面を蹴る。
感情に引きずられるように、拳を突き出した。
≪補助強化魔法≫
魔力が腕に集まり、筋肉に力が漲る。
強化された拳が一直線に叩き込まれるが……。
≪魔法障壁≫
半透明の壁が展開され、衝撃は鈍い音を立てて弾かれた。
「効かねえよ!」
ドッペルゲンガーは一歩も動かず、鼻で笑う。
「だったら……!」
燈也は即座に切り替える。
魔法への嫌悪すら飲み込み、刃を形作った。
≪魔斬!!≫
魔法を断ち切る性質を持つ魔力の刃。
障壁ごと貫くつもりで振り抜く。
「甘いな!いいか、こう使うんだよ!」
≪魔断!!≫
同質、同格、同技。
二つの刃が激突し、音と共に火花のような魔力が散った。
「同じ技なのに……俺が押し負けるだと……」
燈也は歯を食いしばる。
腕が痺れ、後退を余儀なくされる。
「それは、あなたの心の問題よ」
横合いから、静かな声が落ちてきた。
「過去と向き合いなさい。あなたには……守りたいものがあるのでしょう?」
セレナの幻影が、燈也を見据えて囁く。
「……」
答えられない。
胸の奥で、何かが重く沈んでいる。
「おい? ギブアップか?」
ドッペルゲンガーが愉快そうに首を傾げる。
「んなわけあるかよ! こっからが本当の勝負だ!」
燈也は叫び、再び踏み込む。
「ハハハッ!そう来なくちゃな」
ドッペルゲンガーもまた笑い、魔力を高める。
≪補助強化魔法≫
≪魔断!!!≫
≪補助魔法≫
≪魔断!!!≫
拳と刃、魔力と魔力が何度もぶつかり合う。
衝撃が空間を震わせ、床にひびが走る。
「なんでギブアップしない?」
鍔迫り合いの中で、ドッペルゲンガーが問いかける。
「所詮は試験、本気でやる必要がどこにある?」
「黙れ……」
燈也の声は低く、震えていた。
「魔法なんて、あれ程嫌ってたじゃねえか?」
その一言が、胸を抉る。
「黙れって言ってんだよ!!」
燈也は叫び、抑え込んでいたものを解き放つ。
≪魔力最大解放!!≫
奔流のような魔力が溢れ出し、空気が悲鳴を上げる。
「ほう……面白れぇ。なら俺も……」
≪魔力最大解放!!≫
二人分の魔力がぶつかり、嵐のように渦を巻く。
「お前の覚悟を俺に見せてみろ!!!」
ドッペルゲンガーが狂気じみた笑みを浮かべる。
「俺は――お前を超えていく!!」
燈也は真正面から睨み返し、力強く言い放った。
それは宣言であり、過去への決別でもあった。
「不安定、だけどこの魔力は実に素晴らしい……。」
離れた場所で、セレナが楽しげに目を細める。
指先で顎に触れながら、燈也を値踏みするように眺めていた。
「しかも潜在能力はまだこんなものじゃない…。」
凄まじい魔力。荒削りで制御も甘いが、量と質は規格外。
「ただ惜しむらくは…剣の腕前かな。」
小さく笑い、そう評する。
次の瞬間。
燈也とドッペルゲンガーは同時に踏み込み、
魔力を刃の形へと収束させた。
腕に纏う、白い魔法の刃。
≪魔法斬!!≫
≪魔法斬!!≫
二つの刃が真正面からぶつかり合い、火花のような魔力が飛び散る。
激しい衝撃が起こる。それでも、どちらも引かない。
力も魔力も――完全に拮抗している
「どうした。まだ迷ってんのか?」
ドッペルゲンガーが、余裕の笑みを浮かべて囁く。
「うるせ!!」
歯を食いしばり、燈也は叫ぶ。
「おまえがそうやって殻に閉じこる為に――先輩はお前を助けたのかッ?」
ドッペルゲンガーは言葉を重ねる。
何かが、燈也の中で切れた。
「黙れって言ってんだよ!!」
怒号と共に魔力が荒れ狂う。
「てめぇが、先輩を語るんじゃねえよ!!!!」
抑え込んでいた感情が、一気に噴き出す。
悔しさ、怒り、後悔、そして守れなかった記憶。
すべてが魔力となって、燈也の全身を包み込んだ。
次回 『第82想 第五の試練決着――己の力で、影を斬り裂く』
「己の力、影を超えろ――!」
ドッペルゲンガーとの激闘を経て、燈也は真の力を解放。




