第73想 迷宮の激闘、頂上決戦――魔力、極限突破!
「どうしたァ?」
六堂が歯を剥き出しにして笑う。
「もう来ないならよォ……」
一歩、また一歩。
重い足音と共に、圧倒的な威圧感が迫ってくる。
「こっちから行くぜ?」
「――っ!」
燈也は即座に両手を構え、魔力を展開する。
≪魔法障壁≫
半透明のバリアが燈也の前に展開された。
だが――
「無駄無駄無駄無駄ァァァァ!!」
六堂の両拳が、嵐のように叩き込まれる。
衝撃が連続して走り、障壁が悲鳴を上げる。
――バキィン!!
「くそっ……!バリアが……!」
砕け散る魔法障壁。
その向こうで、六堂の笑みが歪む。
「これで終わりだァ!」
巨体が一気に踏み込み、掴みかかろうと腕を伸ばす。
『逃げ場はねぇぞ――暴れろ、俺の腕!!』
≪剛力旋風!!≫
六堂の腕が唸りを上げ、渦を巻くような暴力が燈也を飲み込もうとする。
――その瞬間。
「させないわ!」
澄んだ、しかし力強い声。
『揺るぎなき誓いよ、雷光となって降り注げ。
我が前に聖域を築き、悪しきものを退けよ』
≪幻雷の聖盾≫
雷光を帯びた魔法障壁が、燈也の前に割り込む。
六堂の腕が叩きつけられ、激しい火花が散った。
「チッ……!」
六堂は一歩退き、舌打ちする。
「このメスが邪魔しやがって……」
そして、視線をリエラへと向ける。
「……ん?」
その瞬間。
『光よ、束ね――逃げ場なき輪となれ』
≪縛光結界≫
光の輪が幾重にも重なり、六堂の身体を縛り上げる。
「ちっ……!」
筋肉が軋み、動きが止まる。
「リエラさん、大丈夫ですか!?」
怜花が叫ぶ。
「ええ……!」
リエラは息を整えながら答えた。
「やるじゃねぇか……メス……」
六堂は拘束されたまま、愉快そうに笑う。
「ん?」
だが次の瞬間――
視界いっぱいに、無数の泡が広がった。
『泡となり、霞となり――
争いの目を曇らせよ』
≪幻泡霧!≫
癒水の魔法が発動し、濃密な泡の霧が六堂の視界を完全に奪う。
「さぁ、今のうちに!」
その声を合図に、仲間たちは一斉に距離を取る。
「目くらましか……小賢しい手を使いやがって……」
泡霧の中から六堂の低い唸り声が響く。
だが拘束と視界不良に足を取られている今が、唯一の好機だった。
六堂が動けないその隙に、不知火達は一斉に後退する。
「どうする……アイツ、強敵よ」
流水が息を整えながら問いかける。
先ほどの一撃を思い出したのか、その表情は険しい。
「ああ……正面から相手するのはキツいな」
燈也も苦い表情で頷く。
拳も魔法も通じている感触はある。
だが――決定打には程遠い。
「でもよ、遠距離魔法も効かねぇんだぜ?」
郷夜が歯噛みしながら言う。
実際、風も水も光もあの筋肉に弾かれてきた。
「いや……」
燈也は視線を六堂に向けたまま、静かに言葉を続ける。
「……全く効かないってわけじゃない」
「え?」
「遠距離で陽動をしつつ、隙を作る。
それで――もう一度、接近攻撃を当てれば……」
燈也の声に、確信が滲む。
「……なるほどね。また“連携”プレーってわけね」
流水が口元を吊り上げる。
「いいぜ!」
郷夜がニヤリと笑った。
「オレ様達の結束、見せてやろうじゃねぇか」
――その瞬間。
≪剛力旋風!!≫
轟音と共に、泡霧が一気に吹き飛ばされる。
拘束の光も、力任せに引き千切られた。
「さてと…」
霧の向こうから、六堂が姿を現す。
腕を鳴らしながら、不敵に笑う。
「面倒な泡も消えた。
そろそろ――終わりにさせてもらうぜ」
その瞬間、殺気が跳ね上がる。
「来たわよ!」
流水が叫ぶ。
「ああ、皆――行くぞ!!」
燈也の号令が響く。
「ぬぅん!!!」
≪筋肉装填≫
六堂の筋肉が再び魔力に覆われ、金剛のように膨れ上がる。
地面を砕きながら、一直線に突っ込んでくる。
『照らせ!』
≪初級光魔法 ルクス≫
怜花が放った光の矢が、六堂の視界を狙う。
『押し流せ!水流の円舞!』
≪中級水魔法 メガアクア≫
癒水の水流が、動きを阻むように絡みつく。
「ガハハハハ!!」
六堂は笑い声を上げた。
「効かん!効かんわ!!」
光も水も、筋肉のバリアに弾かれながらも――
確実に、動きは鈍っている。
その刹那。
『祈りは光、誓いは刃。
私の願いよ、その姿を槍として結べ。
穿て――』
≪神魔の幻槍≫
リエラが魔法を放ち交差した光の槍が、六堂を貫かんと迫る。
「……ぬう」
六堂の表情が、わずかに変わった。
「この技……いや……」
何かに気付いたように、足が止まる。
「……気のせいか……?」
ほんの一瞬。
それを、流水は見逃さなかった。
「今よ!!!」
鋭い号令。
『春を告げる青き風よ、
その旋律で道を切り拓け。踊れ』
≪青き春風のワルツ≫
郷夜の風魔法が、螺旋を描いて六堂へと叩きつけられる。
ただ切り裂くための風ではない。
足場を崩し、体勢を奪う――連携前提の一撃。
「チッ……!」
その刹那。
『沈め。砕け。深海の連撃――』
≪オーシャンアーツ弐の技
黒鯱≫
流水が一気に距離を詰める。
水を纏った連撃が、六堂の側面へと畳みかけられた。
「ええい!邪魔くさいヤツだ!」
六堂が吼える。
≪魔法否定拳!!!≫
流水の身体を掴み、そのまま――
郷夜の方角へ、力任せに投げ飛ばす。
「うわっ!」「きゃっ!」
二人は地面を転がり、激しく倒れ込む。
「風間さん、流水さん!!」
怜花が即座に詠唱に入る。
『光よ、束ね
逃げ場なき輪となれ』
≪縛光結界!≫
光の輪が六堂を包もうと――する。
だが。
「二度はやらせん!!!」
拘束を紙一重でかわし、踏み込む六堂。
≪筋肉正拳!!≫
放たれた拳そのものは、怜花に触れていない。
だが――
「きゃあああ!!」
拳圧だけで、怜花の身体が吹き飛ばされた。
「怜花っ……!!」
燈也の叫びが、迷宮に響く。
「お前……」
低く、震える声。
「よくも――怜花を、俺の仲間を……」
燈也の身体から、魔力が溢れ出す。
抑え込まれていた何かが、決壊したかのように。
「……絶対に、許さねぇ!!!!」
「こ、これって……」
倒れたまま、流水が呟く。
「ああ……」
郷夜も息を呑む。
「不知火の魔力が……一気に、上がってる……」
空気が、冷える。
いや――凍りつく。
「なんだ……?」
六堂も異変を感じ、表情を変えた。
「この寒気のする魔力……
それに、この殺気は……」
『術式展開――魔力、最大解放ッッ!!!』
燈也の魔力が、完全に解き放たれる。
「……さっきまでとは段違いだな」
六堂が、心底楽しそうに口角を上げる。
「そうか……
これが――本当のSランクの力ってわけか」
そして、腹の底から笑った。
「ガハハハハッ!!
おもしれェ……そう来なくちゃなァ!!!!!」
強大な魔力を前にしてなお、
六堂仁も一歩も引かなかった。
次回 『第74想 Sランク覚醒――すべてを絶つ力』
仲間を傷つけられ、理性を越えて解放される本来の魔力。
それに応えるように、十月花の一人。六堂仁もまた、筋肉に秘めた全魔力を解き放つ。
魔法を弾く鋼の肉体 対 すべてを断ち切るSランクの一撃。
力と力が正面から激突する、真っ向勝負!
最後に立つのは果たしてどちらだ?




