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Himeyuri ―魔法嫌いの元学園最強と、幼馴染の約束から始まる魔法学園譚ー  作者: 小鳥遊 千夜
第二章 魔法試験編

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第72想 筋肉は魔法を嘲笑う――十月花からの刺客 六堂仁



 

「今は試験中よ。生徒同士の妨害はNGの筈。通報してやるわ」

 リエラが緊急連絡用の魔法を展開しようとする。

 ――だが。


「あれ……?」


 魔法陣が形成されない。外部との接続も、完全に断たれている。


「無駄だ」

 六堂(ろくどう)が肩をすくめるように言った。

「ここは魔法を遮断(しゃだん)する術が掛けられてる。それに――」


 彼は懐から小型の魔法アイテムを取り出し、わざとらしく(かか)げる。


「さっき通信阻害(つうしんそがい)も仕込ませて貰ったんでな」


「そんな……」

 リエラが言葉を失う。


「安心しろ」

 六堂は燈也(ともや)を見据え、不敵に笑った。

「俺が興味あるのは、そこのSランクだけだ。他の雑魚には興味ねェ」


 まるで獲物を品定(しなさだ)めする肉食獣の目。

 その視線に周りの空気が一気に張り詰める。


「皆、こいつは俺がやる」

 燈也は前に出て、仲間たちを背に庇う。


「先に行ってくれ」


 それは命令ではなく、覚悟のこもった宣言だった。


 戦闘は、もはや避けられない。

 誰もが、それを悟っていた。



「燈也さんを置いてはいけません!」

 怜花(れいか)が即座に燈也の横に立ち、戦闘態勢を取る。


「そうだ。水臭いぜ」

 郷夜(ごうや)も一歩前へ。


「さっさと終わらせるわよ!」

 流水(るみ)も六堂へ鋭い視線を向ける。

 

 誰一人、引く者はいない。

 全員でゴールする。

 それが、チームの答えだった。


「くくくッ……しょうがねえなァ……」

 六堂は(のど)を鳴らして笑い、ゆっくりと両腕を広げる。

 筋肉が盛り上がり、圧倒的な威圧感が放たれる。



 そして、迷宮全体に響き渡るほどの大声で叫んだ。


「ならまとめて相手してやるよ!!!

 かかって来いやァァァ!!!」

 戦闘狂の咆哮が、迷宮に響き渡る。



「へへ…自慢のその筋肉も近づけなきゃ怖くねぇ!遠距離で一気に終わらせてやる!」


 郷夜は距離を取りつつ、笑う。

 足元の魔力が渦を巻き、風が一気に集束していく。


『怪我したくなきゃ、今のうちに下がりな 風は止められないからさ』


緑の疾風(サイクロン・)斬破(ブレード)

 解き放たれた風は、鋭利(えいり)な刃となって六堂へ襲いかかった。

 空気を切り裂く音が迷宮に響き渡る。


 ――だが。



魔法(魔法なんて)否定拳(使ってんじゃねェ)!!!!≫


 信じ難い光景が起こる。


 六堂は迫り来る風の刃を、素手で掴み取ったのだ。

 そればかりか、そのまま力任せに投げ返す。


「――っ!?」


「危ぶねぇ……」


 郷夜は慌てて身を(ひるがえ)し、かろうじて回避する。


「こいつ……オレ様の魔法を掴んで投げ返しやがった……!」


 驚愕(きょうがく)が、その表情にありありと浮かんでいた。



「ぬるい、ぬる過ぎるぞ!」


 六堂が吠える。

 まるでウォーミングアップにもならないと言わんばかりだ。


「なら、これはどう!?」


 今度は流水が動いた。

 地を蹴り、水の流れを(まと)いながら一気に距離を詰める。


『蒼海を駆ける一撃!!』


≪オーシャンアーツ壱の技 藍鯆あおいるか


 水を纏った鋭い蹴りが、一直線に六堂へ放たれる。


「ぬぅん!!!」


 瞬間、六堂の全身が光を帯びた。


金剛超筋肉(マッスル・チャージ)


 筋肉そのものに魔力を纏わせ、防御と強化を同時に行う異様な技。

 流水の蹴りは当たるどころか、衝撃で跳ね返される。


 さらに――

 六堂の筋肉は、攻撃を受けたことでより一層盛り上がり、増長していく。


「……!」


 流水が息を呑む。


「メスの割には良い蹴りだったぞ。だが……」


 次の瞬間。


筋肉正拳(マッスル・パンチ)!!』


 鋼鉄(こうてつ)のような拳が、一直線に放たれた。


「きゃっ!!」


 鈍い衝撃音と共に、流水の身体が宙を舞う。


流水姉(るみねぇ)!!」


 燈也の叫びが迷宮に響く。


 流水は地面を転がり、ようやく体勢を立て直したが、その衝撃は明らかだった。


「俺の鋼の筋肉の前では無力だ」


 六堂はわざとらしく筋肉を誇示するようなポーズを取り、嘲笑(あざわら)う。


『恵みの雨よ、静かに降り注ぎ、

 傷ついた心と身体を包んで』


治癒の雨(ヒール・レイン)


 淡い光の雨が降り注ぎ、流水の身体を包み込む。


「お姉ちゃん、大丈夫?」


 癒水(ゆみ)が駆け寄り、心配そうに声をかける。


「ええ……ありがとう」



 流水はそう答えたが、その表情には悔しさが(にじ)んでいた。


 ――その瞬間。


「てめぇ……」


 低く、抑えた声。

 燈也の全身から、はっきりとした怒気が立ち上る。


「良くも……俺の仲間を!!」


 怒りを抑えることなく、燈也は一気に地を蹴った。


補助加速魔法(アクセル・ブースト)!!≫


 魔力が脚部に集中し、燈也の身体が一瞬で加速する。


「おっ……!」


 六堂の口角が、(たの)しそうに吊り上がる。


「ようやくやる気になったみたいだなァ?

 来い!Sランク!!!!!」


 狂喜に満ちた声。


「更に……!」


 燈也は詠唱を重ねる。


補助強化魔法(パワー・ブースト)!≫


 腕に魔力が集束し、筋肉に力が宿る。


「くらえ!!!」


 渾身(こんしん)の拳が、一直線に六堂の顔面へ叩き込まれた。


 ――鈍い衝撃音。



 だが。


「……ククッ」


 六堂は、にやりと笑った。


「腰の入ってないパンチだなァ……!!!」


 首を鳴らしながら、嘲るように言い放つ。


「パンチってのはなァ……こうやるんだよ!!!

 小細工はいらねぇ……」


筋肉正拳(マッスル・パンチ)!!≫


 砲弾のような拳が、燈也へと叩き返される。


「――がはっ……!」


 燈也は咄嗟(とっさ)に身体を(ひね)り、直撃こそ免れたものの、衝撃で吹き飛ばされる。

 喉の奥から込み上げる血を、地面に吐き捨てた。


「……っ」


 それでも、燈也は立ち上がる。

 口元の血を乱暴に(ぬぐ)いながら、再び前へ出た。


「なら……これだ!!!」


魔断(マギ・ブレイク)!!≫


 腕に魔法を無効化する魔力を纏わせながら、燈也は再び殴りかかる。


 ――拳が、六堂の胴へ突き刺さる。


「……ぺっ」


 六堂は数歩、後退した。

 口の端から血を吐き出し、驚いたように目を細める。


「……ほう」


 そして、笑った。


「今度のは、結構効いたぞ」


 だが、その表情には恐怖も焦りもない。


「だがよ……Sランクの力はこんなものか?」


 肩をぐるりと回し、関節を鳴らす。


「拍子抜けだな」


 その姿はまさに戦闘狂。


「おいおい……」


 郷夜が引きつった笑みを浮かべる。


「生身であれ食らってピンピンしてるとか……

 バケモンじゃねえか」


「何なのよ……こいつ……」


 流水の声は、驚愕と焦りが混じっている。

 魔法も、打撃も効いているはずなのに――六堂は、まるで痛みを楽しむかのように立っている。



次回 『第73想 迷宮の激闘、頂上決戦――魔力、極限突破!』


迷宮の出口に六堂仁――戦闘狂の巨体が立ちはだかる。


圧倒的な拳圧が、仲間たちの心に緊張を刻み込む。


しかし、不知火チームも黙ってはいない。

仲間たちの連携が炸裂する。だが六堂の筋肉装甲は、容赦なくそれを弾き返す――。

「……絶対に、許さねぇ!!!!」

その叫びと共に、燈也の魔力が解き放たれる。


全身を覆う熱量と殺気――かつてない力が迷宮を満たす。

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