第67想 第三の試練中半 絶望の鋼鉄!魔導ギア!
「行くぞ! 皆!」
燈也の号令に、迷いはなかった。
「はい!」
怜花が一歩前に出て、魔力を集中させる。
『――照らせ!』
≪初級光魔法 ルクス≫
純白の光が刃となり、一直線に放たれた。
闇を切り裂くような軌跡を描きながら、魔導ギアへと突き刺さる――
だが。
ギィンッ、と高い金属音が響き、光は透明な障壁に阻まれて弾かれた。
「……!」
間髪入れず、燈也が地を蹴る。
≪補助強化魔法!!≫
身体能力を極限まで引き上げられた拳が、唸りを上げて突き出される。
――ドンッ!!
衝撃波が走るが、魔導ギアの前面に展開されたバリアは微動だにしない。
「……駄目か。」
燈也が歯噛みする。
「……だったら、これはどう?」
流水が鋭く目を細め、郷夜へ視線を送る。
「いくわよ、郷夜!!」
「任せろ!」
郷夜がニヤリと笑い、魔力を解放する。
『春を告げる青き風よ、その旋律で道を切り拓け。踊れ』
≪青き春風のワルツ!!≫
渦巻く風が刃となり、カマイタチの連撃となって魔導ギアを包み込む。
装甲を削るような音が連続して響き――
その直後。
『蒼海を駆ける一撃!!』
≪オーシャンアーツ壱の技 藍鯆≫
流水が床を滑るように踏み込み、水を纏った流麗な蹴りを叩き込む。
風と水の連携攻撃。
確実に決まった――はずだった。
「……え?」
「無傷ですって!!」
流水の声が弾む。
魔導ギアは、そこに立ったまま。
装甲に傷一つなく、バリアも健在だった。
本体どころか、バリアすら突破できていない。
「なぁ……流石に強すぎないか?」
郷夜が乾いた笑いを浮かべ、肩を落とす。
その様子を見て、ドライツェンが愉快そうに口元を歪めた。
「当然である。」
腕を組み、悠然と言い放つ。
「なんせ、Sランクのいるチームが相手なのだからな。
一番強い設定の個体を選んでおいたのである。」
「くそ……やっぱり性格悪いな!!」
燈也が睨みつける。
「くくっ……褒め言葉として受け取っておこう。」
薄く笑うその姿は、まるで試験生が追い詰められるのを楽しむ観客のようだった。
「こんな相手……どうすんのよ!?」
流水の声に焦りが混じる。
鋼鉄の巨体を前に、常識的な攻撃が通じないことは誰の目にも明らかだった。
「まずは、バリアを破壊する。」
燈也は短く告げ、前に出る。
その腕に、禍々しくも澄んだ魔力が収束していく。
≪魔断!!!≫
魔法無効化の性質を持つ魔力の刃が、燈也の腕を覆う。
一歩踏み込み、迷いなく振り抜いた。
――ガギィンッ!!
硬質な音と共に、魔導ギアを覆っていたバリアに亀裂が走る。
次の瞬間、まるで硝子が砕けるように、バリアが粉々に弾け飛んだ。
『これは凄い!!不知火選手、魔導ギアのバリアを一発で破壊したぞォ!!』
十文字吉良の興奮した実況が洞窟に響き渡る。
「よし!」
燈也が叫ぶ、その瞬間。
「今ね!」
リエラが前に出る。
両手を掲げ、澄んだ声で詠唱を紡ぐ。
『祈りは光、誓いは刃。
私の願いよ、その姿を槍として結べ。穿て』
≪神魔の幻槍≫
光と魔力が交錯し、光の槍が形成される。
槍は一直線に魔導ギアへ――
「まだまだ行くぜ! こいつもオマケだ!」
郷夜が追撃に出る。
『怪我したくなきゃ、今のうちに下がりな
風は止められないからさ』
≪緑の疾風斬破!!≫
唸りを上げる竜巻が発生し、槍と共に魔導ギアを飲み込む。
風と光が交差し、凄まじい衝撃波が洞窟内を駆け抜けた。
「ほう。だが……」
ドライツェンは腕を組み、わずかに感心したような視線を向ける。
――煙が晴れる。
しかし。
魔導ギアは、びくともしていなかった。
「へっ……」
郷夜の喉から、間の抜けた声が漏れる。
「対象ヲ排除シマス」
次の瞬間、無機質な機械音声が響き渡る。
魔導ギアの砲口が展開し、赤い光が収束していく。
≪強化魔弾発射!!≫
「危ない!!」
燈也が叫ぶ。
≪魔法障壁展開!≫
咄嗟に展開された障壁に、魔弾が叩きつけられる。
轟音と衝撃――だが完全には防ぎきれない。
「くっ……!」
燈也の腕をかすめ、血が滲む。
その瞬間。
『集え、水よ 流れて壁となり、命を護れ』
≪水護壁≫
癒水の魔法が発動し、水の防壁が仲間達を包み込む。
「義兄さん、大丈夫ですか!」
「ああ、ありがとう」
燈也は一旦距離を取り、態勢を立て直す。
「これ以上はさせないわ!!」
流水が踏み込み、鋭く息を吐く。
『沈め。砕け。深海の連撃――』
≪オーシャンアーツ弐の技 黒鯱!!≫
連続蹴りが叩き込まれる――
しかし、その直前。
バシュッ……!
魔導ギアの周囲に、再び防護バリアが展開される。
「そんなっ……! もうバリアが……!」
流水は即座に距離を取り、歯噛みする。
「くくっ……」
ドライツェンの低い笑い声が響く。
鋼鉄の巨体は、何事もなかったかのように再び赤いレンズを輝かせる。
「一体……どうしたら……」
絶望と焦りが、戦場に静かに滲み始めていた。
次回 『第68想 第三の試練中半 魔導ギア突破作戦――絶対防御を打ち破れ』
魔導ギアの圧倒的な防御と火力に追い詰められる不知火チーム。
個の力では通じない――求められるのは、仲間との連携。
燈也の指示のもと、一つの作戦に賭ける。
鋼鉄を砕くのは、魔法か――それとも、信じ合った者たちの“結束”か。




