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Himeyuri ―魔法嫌いの元学園最強と、幼馴染の約束から始まる魔法学園譚ー  作者: 小鳥遊 千夜
第二章 魔法試験編

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第65想 晶界迷宮《クリスタリオン・ラビリンス》発動!――鍵を取ってからが本当の地獄でした

 

「ふふっ!鍵を取っただけで安心するなんて、少し早いですよ」


 小さな身体からは想像できないほど、澄んだ魔力が静かに(あふ)れ出す。

 キララ先生は胸の前で両手を重ね、ゆっくりと詠唱を始めた。


『大地に眠る鉱脈よ、私の指揮で舞いなさい。

 岩は結晶へ、洞は秩序へ――

 構造を変え、道を拒み、侵入を否定せよ。

 迷える者に、出口は不要です』


晶界迷宮クリスタリオン・ラビリンス


 ――その瞬間。


 洞窟の内部で、不気味な低音が鳴り響いた。


「なっ……なんだ?」


 燈也が思わず周囲を見回す。


 岩壁(がんぺき)(きし)み、鍾乳石(しょうにゅうせき)が隆起し、床に走る鉱脈が淡く光を放ち始める。

 まるで洞窟そのものが意思を持った生き物のように(とどろ)き出した。


「危ない!! 燈也(ともや)くん!!」


 リエラの叫び。


 次の瞬間、燈也のいた位置めがけて鋭く尖った鍾乳石が横薙(よこな)ぎに飛来(ひらい)する。


「っ!」


 燈也は咄嗟(とっさ)にホウキを(かたむ)け、紙一重でそれを回避する。

 背後の岩壁に鍾乳石が突き刺さり、粉塵(ふんじん)が舞い上がった。


「洞窟が……狙ってきてるのか!?」


 床が盛り上がり、壁が迫り、逃げ道そのものが変化していく。


『出ましたァァ! キララ先生の必殺技、≪晶界迷宮≫!

 さぁ、不知火(しらぬい)チーム! どう立ち向かうのか!』


 十文字吉良(じゅうもんじきら)の興奮した声が、洞窟内に反響する。


『この技は地形や鉱石を自在に変化させ、侵入者を狙う支配系魔法です。

 皆さん、十分に注意して下さいね』


 如月愛紗(きさらぎあいしゃ)の落ち着いた解説が続く。


「もう! そういうのは早く言いなさいよ!」


 流水が歯噛(はが)みしながら叫ぶ。


「おい! 早く逃げようぜ!」


 郷夜(ごうや)の声には、明らかな焦りが(にじ)んでいた。


「そうだな! 皆、逃げるぞ!」


 燈也の号令と同時に、全員が入口方向へとホウキを走らせる。


 ――だが。


「きゃあっ!」


 癒水(ゆみ)の悲鳴。


 彼女の進行方向に、床から隆起した岩が壁のように迫っていた。


『蒼海を駆ける一撃!!』


≪オーシャンアーツ壱の技・藍鯆あおいるか


 流水が一瞬で加速し、軽やかな軌道から鋭い蹴りを放つ。

 岩は粉砕され、水の衝撃が飛沫(しぶき)のように広がった。


「癒水、大丈夫?」


「ありがとう、姉さん……!」


 癒水は胸を撫で下ろしながら答える。


「どんどん攻撃が激しくなってきてるわ!」


 リエラが必死に叫ぶ。


「ひぇえええ! 大岩が大量に来たぁぁ!」


 郷夜の悲鳴と同時に、前方から複数の巨岩(きょがん)が転がり落ちてくる。


「振り返るな! 全力で入口まで戻るんだ!」


 燈也が怒鳴る。


「今度は上からよ!」


 リエラの指差す先――

 天井から無数の鍾乳石が、雨のように落下してくる。


「くそ……このままじゃ……何か手は……」


 一瞬の沈黙。


 そして、燈也は歯を食いしばり、決断する。


「……そうだ」


 振り返り、仲間たちを見る。


「お前たちは先に行け。

 この洞窟は“()()()()()()()()”を優先して狙ってる。

 だから――俺が足止めする」


「そんな……一人では危険すぎます!」


 癒水が必死に反対する。


「そうよ!」


 流水も声を荒げる。


「いや、このままだと全滅だ」


 燈也は静かだが、強い声で続ける。


「それに、ホウキの腕には自信がある。心配すんな」


 そして、流水を見る。


「……流水姉(るみねぇ)。皆を頼む」


 一瞬、流水は唇を噛み――


「……分かったわ」


 だが、すぐに睨みつけるように言う。


「でも、アンタも無理すんじゃないわよ!」


「ああ」


 燈也は短く答え、ホウキの向きを反転させる。


「さあ……こっちだぜ」


 仲間とは別方向へ――、燈也は単身突っ込んでいった。




 燈也が囮となって洞窟の奥へ引きつけている間、

 残されたメンバーたちは必死にホウキを走らせていた。


 背後では、岩が砕ける音、鍾乳石が崩れ落ちる轟音が途切れることなく響いている。

 それでも――追撃は明らかに弱まっていた。


「はぁ……はぁ……」


 入口が視界に入った瞬間、流水が大きく息を吐く。


「やっと……入口まで戻れましたね……」


 ホウキを降りた癒水も、膝に手をついて肩で息をする。


「皆さん、お帰りなさい」


 入口で待っていた怜花が駆け寄ってくる。

 しかし、その視線はすぐに周囲を見回し――一人足りないことに気付いた。


「あれ……燈也さんは?」


 その問いに、場の空気が一瞬で重くなる。


「それがよ……」


 郷夜が言い(よど)み、視線を逸らす。


「そんな……」


 怜花の声が小さく震える。


「……まぁ、不知火を信じようぜ!」


 郷夜は無理にでも明るく言った。


「アイツ、そう簡単にくたばる男じゃねえ」


「……そうね」


 流水は拳を握りしめる。


「燈也……大丈夫かしら……」


 癒水の呟きが、静かに落ちた。


 ――――――――――


 その頃。


「さて……皆も、そろそろ着いた頃か……」


 洞窟の奥。

 燈也は一人、荒く息を吐きながら周囲を見渡していた。


「……あとは、俺だけだな」


 洞窟はなおも唸りを上げ、岩壁が不規則に(とどろ)いている。

 だが、出口の方向は――確かに見えていた。


「くっ……あと、もう少しだ!」


 前へ進もうとした、その瞬間。


 ゴゴゴゴゴ……ッ!!


「――しまった!」


 目の前で大岩がなだれ込み、通路を完全に塞ぐ。


「道が……!!」


 左右を見渡すが、壁は結晶化し、鋭く閉ざされている。

 攻撃はさらに激しさを増し、背後からも圧が迫る。


「……迂回は無理か」


 燈也は短く息を整え、覚悟を決めた。


「こうなったら……」


 魔力を一気に高め、刃のように収束させる。


魔断(マギ・ブレイク)!!!≫


 放たれた魔力の斬撃が、大岩の中心を正確に貫いた。


 ――ドンッ!!


 岩は爆ぜ、砕け散り、わずかな隙間が生まれる。


「今だ!」


 燈也はその隙間を()うようにホウキを突っ込ませる。


「よし……今のうちに!!」


≪補助魔法・加速強化アクセル・ブースト


 身体が軽くなり、視界が流れる。

 洞窟の攻撃を振り切るように、一気に距離を詰める。


「うおおおおおお!!」


 最後の力を振り絞り――


 ――光が、開けた。


「……っ、着いた……!」


 入口へ飛び出した瞬間、燈也はホウキを降りる。


「燈也くん!!」


 真っ先に癒水が駆け寄る。


「ったく……ヒヤヒヤさせやがって……」


 流水は腕を組みながらも、明らかに安堵した表情だ。


「もう! どれだけ心配したと思ってるのよ!」


「悪い、流水姉」


 燈也は少し照れたように笑い、懐から鍵を取り出す。


「鍵は……これで良いんだよな?」


 燈也が黄金の鍵を掲げると――


『不知火チーム、無事に鍵を手に入れました!!

 今回も実に見事です!』


 十文字吉良の実況が高らかに響く。


『前年度の優勝者に迫る、非常に良いタイムです!

 これは期待できますね!』


 如月愛紗の声も続く。


「良い腕前でした」


 キララがにっこりと微笑む。


「文句なしの合格です。

 その鍵を使って、次の試練へ進んでください」


「……やったな」


 燈也達は顔を見合わせ、軽く頷き合う。


 黄金の鍵を扉に差し込み、回すと――

 新たなフロアへの道が、ゆっくりと開いていった。


 こうして不知火チームは、

 第二の試練を突破し、第3の試練へと進むのだった。




次回予告 『第66想 第三の関門――魔法教師ドライツェン』


第二の試練を突破した彼らの前に

次に立ちはだかるのは魔法教師――ドライツェン・エクレール。


冷徹な眼差し、無駄のない指示。

その試練は、これまでの“教師の課題”とは一線を画す。


「これは試験だ。――容赦はしないのである」


知略と判断、そしてチームの結束力が試される第三の関門。

果たして燈也たちは、この実戦さながらの試練を乗り越えられるのか。





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