第58想 チーム結成――それぞれの思惑(後編)
一方――
魔法執行部の部室では、いつもより少し張り詰めた空気が漂っていた。
机を囲むようにして集まったメンバーたちの前で、部長――高天原帝亜が淡々と告げる。
「魔法試験のチームに関してだけど……私、工藤、雄介、そして――復帰した、ななみね」
その名前が出た瞬間、部室の空気が一段明るくなる。
「またよろしくね!」
ななみが柔らかな笑顔で手を振ると――
「うおおおお!!」
突如として雄介が立ち上がった。
「ななみさんの為に俺、頑張ります!!!
ななみさんの為なら、たとえ火の中、水の中!この身が滅びようとも、あなたをお守りします!!」
全身全霊、魂の叫びだった。
「いや……」
ななみは少し困ったように首を傾げる。
「滅んだら……守れないんじゃ……?」
「――っ!」
雄介は一瞬言葉に詰まり、だがすぐに立て直す。
「あっ……ははは。えっと……あんまり無理しなくてもいいからね?」
「ななみさん……なんとお優しいお言葉……」
雄介の目に、みるみる涙が溜まっていく。
「俺、感動しました……うおおおおおおお!!」
「泣くほどのことではないだろ……」
英明が冷静に突っ込みを入れるが、雄介の耳には届いていない。
「ところで」
帝亜が話を戻すように言った。
「もう一人はどうする?」
「心配ないわ」
帝亜は静かに視線をドアへ向ける。
「確か……もうそろそろ来る頃だと思うけど……」
その直後、部室の扉が勢いよく開いた。
「――“鏡 膤斗”、ただいま戻りました!」
快活な声とともに現れた青年を見て、工藤が目を細める。
膤斗は青龍魔術学園二年、魔法執行部部長補佐にして、工藤に次ぐ実力者だ。
180センチの長身の爽やかなイケメンで、クリーム色のくせ毛をしている。
魔法ランクはA、氷魔法が得意。戦隊モノや漫画好き。
「そうか……お前か」
「久しぶりだな、工藤」
膤斗はにやりと笑い、工藤の肩を軽く叩く。
「少し見ないうちに、また強くなったんじゃねえか?」
「フフっ……お前もな」
短い言葉の中に、互いを認め合う空気が漂う。
「……誰、この人?」
ななみが小さく首を傾げる。
「ななみとは面識がなかったわね」
帝亜が説明を引き取る。
「彼は朱雀魔導学院との交流学習の一環として、しばらく向こうに行ってたのよ。」
「まぁ……そういうことです」
膤斗はななみに向き直り、軽く頭を下げる。
「可愛いお嬢さん。改めてよろしくな」
「はい。こちらこそ」
丁寧に返すななみの横で――
「……むむっ!相変わらずだな」
雄介が露骨に警戒の視線を送る。
「そういや……」
膤斗がふと思い出したように言った。
「部長のこと、気にしてましたよ?……良かったんですか?」
部室の空気が、一瞬だけ静まる。
「……ええ」
帝亜は迷いなく答えた。
「今の私は、もう青龍学園の生徒だからね」
「……部長がそう言うなら、俺は構わないんですが……」
膤斗は少し間を置き、部長を見る。
「……ねえ、鏡クン?」
「なんですか?」
「おかえりなさい。――また、頼りにしてるわよ」
帝亜が柔らかく微笑む。
その言葉に、膤斗は一瞬驚いたように目を瞬かせ――すぐに真剣な表情になる。
「はい」
力強く、はっきりと。
「全力で頑張ります」
こうして魔法執行部の試験チームもまた、
それぞれの想いと過去を胸に――静かに、だが確かに動き出していた。
次回予告 『第59話 謎の組織――十月花』
魔法試験に向け、生徒たちはそれぞれの想いを胸にチームを結成していく。
実力、信頼、そして覚悟――すべてが試される舞台の裏で、学園の影に蠢く気配があった。
誰にも知られぬまま暗躍する、謎の組織。
彼らの目的は魔法試験か、それとも――。
迫り来る不穏な影に、燈也たちはまだ気づいていない。
試験は、ただの実力測定では終わらない。




