第54想 永遠の終楽章 〜響け、虹のグランツ
「なな!?」
メンバーの声が一斉に上がった。驚きと喜びが入り混じった、まるで時間が一瞬止まったかのような瞬間だった。
――光の中から現れたななの姿は、まるで天使のように輝いていた――
桃色の髪は光を反射し、まばゆいオーラをまとって空間に溶け込むように浮かんでいる。
「ななっ!」
ななの存在に、ななみの驚きと喜びが一気に溢れ出す。
「お姉ちゃん…」
涙で視界が少し滲むななが、震える声で呼びかけた。
「ごめんなのだ。」
ななの言葉に、胸が締め付けられるような切なさと安堵が混ざる。
「ううん。私の方こそずっと謝りたかった。ごめん。」
ななみもまた、涙をこぼしながらななに抱き着く。二人の間にあった時間の空白が、抱擁と涙で一気に埋まっていくかのようだった。
「…良かったな、なな」
燈也はステージの上から、静かにしかし力強く呟く。
――その瞬間、ステージに光が差し込み、会場全体が暖かい感情に包まれた――
「見えてるかい?あんた」
観客席で感極まって涙を浮かべる漣清水が、隣の水月に声をかける。
「ああ、良く頑張ったな、燈也、なな。」
水月の瞳は、ステージの上の二人を見つめながら、父親としての優しさと誇りで満たされていた。
「ふふふっ…なるほど。蘇生魔法の代わりに、一時的に実体化させる魔法とはね。それも、ひとりでは到底足りない魔力を、ペンライトを通して観客から少しずつ集めるとは…」
会場入り口の陰に立ち舞台を見ているセレナは、楽しげに微笑みながら語る。
「――あのペンライトが、あの子があなたに頼んで作らせたものですか?」
セレナの声には、好奇心だけでなく、どこか懐かしさにも似た温かみが含まれていた。
神奈は少し笑みを浮かべ、静かに答える。
「なに、わっちはほんの少し手助けをしただけじゃ。これは皆の絆が紡いだ魔法じゃよ」
彼女の声には柔らかく、誰かの物語を見守る母のような落ち着きがあった。
「……そうかもしれませんね」
セレナも微笑む。目の奥に、満足と感動の色が灯る。
「あなた達の夢、観させてもらったよ」
セレナの言葉は、柔らかくも確かに響く祝福の声だった。
空気に漂う歓声や光の渦、ペンライトのきらめき、そして仲間たちの笑顔――そのすべてが、奇跡の瞬間として刻まれていることを、セレナは静かに認めていた。
会場の熱気と光の中で、燈也たちの夢は、確かに“ここにある”と証明されていた。
***
「皆、待たせたのだ。」
眩しい光の中、なながステージにふわりと姿を現す。髪は光を受けて煌めき、笑顔は太陽のように温かい。
「おかえり…ななちゃん」
怜花が目を細め、自然と笑みが零れる。
「全く、待たせすぎだぜ!」
郷夜が明るく声を張る。緊張も不安も吹き飛んだかのように、彼の声が会場に響く。
「ふふっボーカルが居なきゃバンドは盛り上がらないですからね。」
癒水が穏やかな笑みを浮かべる。
「これでメンバーが揃ったわね。」
流水も満面の笑みを浮かべ、肩の力を抜いたように言った。
リエラもまた音響室で皆の様子を柔らかな笑みで観ている。
「それじゃあ改めていくぞ!『虹のグランツ』」
燈也の掛け声と同時に、観客席から一斉にペンライトが光を放ち、会場は虹色に染まる。
――音楽が鳴り出すと同時に、会場の空気が一変した。
マジ マジカル(マジマジカル)
夢を叶える素敵な魔法
マジ マジカル(マジマジカル)
想いを込めて唱えよう
ドリームロード 夢を見るのに、理由なんていらないよね
放課後の空に浮かぶ 七色の約束
まだ諦めるなんて もったいない
転んだ数だけ強くなる 涙もきっと 未来へのパスポート
不器用でもいい
遠回りでもいい
君が笑えばそれでいい
胸の奥 光る鼓動
それがスタートライン
マジ マジカル(マジマジカル)
夢を叶える素敵な魔法
マジ マジカル(マジマジカル)
一緒に唱えよう
出来ないことなんて
この世には無いから
夢の欠片抱いて
駆け出そう
高鳴るハートで
虹のグランツ
君となら描けるよ
シャイニングロード
時には上手くいかない日もあるけど
夕焼けに伸びる影は
明日へ続いてる
君が信じれば
夢は終わらないよ
つまずいた場所も
宝物になる
喧嘩しても
泣きじゃくっても
最後はまた笑い合える
そんな日々が
奇跡なんだ
気づいたんだよ
マジ マジカル(マジマジカル)
挫けそうな時は唱えよう
マジ マジカル(マジマジカル)
夢を叶える素敵な魔法
信じ続ける先に
輝く未来がある
手を伸ばせば
届きそうな
青空の向こうへ
虹のグランツ
君となら越えられる
観客の声援とペンライトの光が一つになり、ステージはまるで星空のように輝く。
「皆聞いてくれてありがとうなのだ」
ななが深く頭を下げると、会場から歓声と拍手が渦のように湧き上がる。
「燈也達もありがとうなのだ。ななだけだったら何も出来なかった。皆がいたからここまで来れたのだ。」
なながメンバーの方に微笑み返す。笑顔は嬉しさと誇りで輝いていた。
「お姉ちゃんとも仲直り出来た、バンドも友達も出来た…」
ななの声は喜びに満ちている。
「もう思い残すことはないのだ…」
「なな…」
燈也が小さく呟く。目の前の彼女は、もう未練も悔いもなく、心から笑っている――だから、別れの時が近いことを誰もが感じていた。
「……そろそろ行かなきゃなのだ」
ななは小さく呟き、胸の奥にわずかな寂しさを抱えながらも、穏やかな笑みを浮かべる。
――この魔法は永遠ではない。別れの時が、確実に近づいていた。
次回 『永遠の最終楽章 〜奇跡は終わってもこの夢は終わらない』
「奇跡は、まだ終わらない――
光と声がひとつになったステージの上で、仲間たちの想いがななの心に届いた。
しかし、この奇跡も、永遠ではない。別れの時は静かに近づいてくる――。
涙と笑顔が交錯するアンコール。虹色に輝くペンライトの光が、最後の旋律を紡ぐ。
届け、想い――届け、夢――。
魔法は解けてもこの夢は終わらない。
夢を叶えた者たちの心と魂が、永遠に響き続ける――。




